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グレープフルーツの多食は悪性黒色腫リスク増加に関連する [栄養の話題]

柑橘類(シトラス製品)はソラレンおよびフロクマリンなどを豊富に含み、紫外線(UV)と相互作用することによって黒色腫細胞の増殖を刺激するために、多食は悪性黒色腫のリスク増加に関連すると報告されています。

看護師健康調査による63,810名の女性を対象とした、前向きコホート研究(1984年から2010年)。フォローアップの24-26年間に1,840名に黒色腫が発症。

消費による黒色腫リスクの多変量ハザード比( pooled multivariable hazard ratios)

週2回以下の消費:1.00
週に2-4回:1.10 (95% CI, 0.94 to 1.30)
週に5-6回:1.26 (95% CI, 1.08 to 1.47)
1日に1.5回:1.27 (95% CI, 1.09 to 1.49)
1日に1.6回以上:1.36 (95% CI, 1.14 to 1.63)
グレープフルーツ週3以上: 1.41 (95% CI, 1.10 to 1.82; Ptrend < .001)

特に、グレープフルーツの週3回以上では、リスクは41%増加しました。

あくまでも、リスク増加であり、日光への曝露に関連したものですが。

出典文献
Shaowei Wu, Jiali Han, Diane Feskanich, et al.,
Citrus Consumption and Risk of Cutaneous Malignant Melanoma
American Society of Clinical Oncology
Published online before print June 29, 2015, doi: 10.1200/JCO.2014.57.4111
JCO June 29, 2015 JCO.2014.57.4111

低炭水化物高蛋白食は動脈硬化を促進させると報告 [栄養の話題]

極端な低炭水化物ダイエットは通常食と比べ、動脈硬化を進行させることがマウスを使用(動脈硬化モデルのアポE欠損マウス)した、6週間の低炭水化物高蛋白食 (LCHF)実験で示されています。

この実験の結果は、最近話題になっている、極端な低炭水化物ダイエットが推奨されない根拠の1つになります。
(同様の警鐘は、「糖新生の抑制が細胞寿命を延長する 2014.8.26.」でも、紹介)

LCHF では、循環血液中の 血管内皮前駆細胞 (Sca1+ Flk1+) の数が減少しています。

LCHPダイエットでは、血管再生能力のマーカーである骨髄および末梢血の血管内皮前駆細胞 (Epc) の数が大幅に削減します。

LCHP ダイエットは、Epcの動員、増殖、生存に重要である、セリンスレオニンキナーゼ活性化(リン酸化) Akt の下位レベルも抑制します。

LCHPを 与えられたマウスでは、大動脈動脈硬化がより多く発症し、新しい血管を生成する能力が低下していました。これらの徴候は、酸化ストレス、炎症性メディエーター、血清コレステロール値の変化では説明できません。あくまでも、マウスによる結果ですが。

Foo SY et al.
Vascular effects of a low-carbohydrate high-protein diet.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Sep8;106(36):15418-23.

葉酸とVB12補給は高齢者の認知機能に効果なしと報告 [栄養の話題]

高ホモシステインレベル(Hcy)の高齢者に対し、2年間、葉酸とVB12を補給して認知機能への影響を調査した研究の結果、効果は認められませんでした。

多施設における、無作為化プラシーボ対照二重盲検試験。対象者は、65歳以上Hcyレベルが12~50 μmol/Lであった2919名。参加者は、毎日400μgの葉酸および500μgのVB12(VB群)またはプラシーボ錠(両群に15μgのVD3)を内服。

評価項目は、ミニメンタルステート検査(n = 2,556)、ワーキングメモリ (n = 759)、情報処理速度 (n = 731)、実行能力(n =721)、エピソード記憶 (n = 2,467)。

平均年齢は74.1歳(SD6.5)。ホモシステイン濃度の減少は、B群で5.0 μmol/L(95% confidence interval -5.3 to -4.7)、プラシーボ群では1.3μmol/L (-1.6 to -0.9) 。

ミニメンタルステートスコアの減少は、VB群0.1 (-0.2 to 0.0) 、プラシーボ群では 0.3 (-0.4 to -0.2), (p = 0.05)で差はありません。認知領域のスコアは、2群間で経時的に同様でした。

ホモシステインは必須アミノ酸の1つである、メチオニンの代謝過程が不完全な状態で産生されます。通常、有害なホモステインが生じても、メチオニンや有害ではないシステインに変わるのですが、代謝の乱れからホモシステインが蓄積します。血漿ホモシステイン濃度の正常値は6μmol/L未満とされています。血漿中の総ホモシステイン量が増加すると遊離ホモシステイン値が増加し、遊離ホモシステインによって血管内皮細胞が障害されます。その結果、血栓症や、脳機能障害を起こし易くなると言われています。

このホモシステインを無毒化する代謝には、葉酸、VB6、VB12が関与しているため、この研究ではこれらのVBを補給してその効果を調査しました。しかし、全く差は認められませんでした。

出典文献
Zwaluw NL, et al.
Results of 2-year vitamin B treatment on cognitive performance
Published online before print November 12, 2014, doi: 10.1212/WNL.0000000000001050
Neurology 10.1212/WNL.0000000000001050

ホモシステインは含硫アミノ酸であり、血管内皮細胞などの内皮細胞に対して毒性を示し、血栓症や脳機能障害を来たす可能性があると指摘されています。血漿中や細胞内のホモシステインは加齢と共に生成されやすくなります。葉酸が欠乏するとホモシステインが増加し、血管内で活性酸素が産生されて動脈硬化が促進すると言われています。また、ホモシステインはNO産生の抑制や、血小板凝集を促進して血栓形成を促進させます。葉酸や、VB6、VB12は、血中ホモシステインを減少させると言われています。また、運動もホモシステインを減少させるようです。

葉酸、VB12などのホモシステイン値を低下させるサプリメントは、糖尿病性神経障害の発症リスクを低減させるとする報告もあります。

しかし、葉酸、VB6、VB12のサプリメントは、ホモシステイン値を低下させるが、心血管疾患の発症リスクを低減させることはなく、高ホモシステイン血症は心血管疾患の原因でなく、結果であるとする考えもあります。認知障害を発症している高齢者の血清ホモシステイン濃度は、健康な高齢者の血清ホモシステイン濃度と差がないとの報告もあります。

さらに、葉酸やVBを女性に内服させても、心血管疾患の再発(心筋梗塞、脳卒中、血行再建術、心血管疾患死)が予防されないことが、WAFACS(Women's Antioxidant and Folic Acid Cardiovascular Study)により、2006年の米国心臓協会学術集会(AHA 2006:第79回)で、報告されています。


糖新生の抑制が細胞寿命を延長する [栄養の話題]

昨年8月の文献で、細胞レベルの話ですが、極端な糖質制限食を推奨するダイエット法の、その根拠の1つとしている「糖新生」についての問題点を示す報告を紹介します。

カロリー制限(CR)などのエネルギー代謝抑制は、細胞長寿の主要な決定因子と言われています(ヒトの寿命を延長するかは不明)。一方、体内で糖を生合成する「糖新生」によって酵母細胞において老化を起こすことが知られていますが、その役割は未解明でした。

この研究では、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)をコードするtdh2遺伝子の欠失によって、酵母細胞内の解糖および糖新生に関与するタンパク質を抑制することが示されています。

TDH2の削除は、酵母サーチュイン(☆)をエンコードするHST3とHST4の遺伝子が欠失する細胞において時系列で寿命を復元し、糖新生の活性化を抑制します。さらに、tdh2遺伝子欠失がCR経路依存的に寿命を延長させます。これらの知見は、糖新生の抑制が効果的に細胞寿命を延長することを示しています。(この論文は、インターネットで全文読めますので、詳しくは原文をお読みください。)

糖新生(Gluconeogenesis)とは、乳酸、ピルビン酸、アミノ酸、プロピオン酸などから、ほぼ解糖系を逆行してD-グルコースをつくる反応経路を言います(複数の経路が有り、使用される酵素に違いがあるなど、厳密には同一ではない)。糖新生は、飢餓状態において体内でグルコースを作るための反応と思われがちですが、実際には、食餌後数時間で相当な割合を糖以外から作りだしています。

前述したダイエット法は、この糖新生によって糖質を生合成できるので糖質を食べる必要はなく、むしろ嗜好品と呼べるものであって有害ですらあるとする考えです。

それは、たまたま見つけた本に書いてあったことで、タイトルは「炭水化物が人類を滅ぼす;光文社新書 “傷はぜったいに消毒するな”の提唱者による著書」です。読み物としてはそこそこおもしろかったのですが、基本的な間違いがいくつか見られましたので、浅学の身ではありますが、簡単に説明します(間違いがあればご教授ください)。


「カロリー数への疑問」として、「細胞内の代謝と大気中の燃焼は全く別の現象である。」と記されています(p.166~167)。結論を言えば、エネルギー的には全く等価であり、間違いです。


「動物界を見渡すと、食物に含まれるカロリー以上のエネルギーを得ている動物が多数存在する。」と記されていますが、これも誤りです。

カロリー計算では、人間が消化できないセルロースなどを除いて計算しているためです。これらの動物は、腸内のバクテリアがセルロースを分解し、その結果産生された脂肪酸をエネルギー源としています。しかし、口から入れた固形物から排泄物を差し引いた分のエネルギーの総量は、途中にバクテリアが介在しようとも変わりません。口から入れた食物以上のエネルギーを得ることはありません。この著者は、熱力学の第1法則を理解できていません(無論、熱力学の第2法則に基づくエネルギー変換にともない、エネルギーは周囲に散逸しますが。)。


科学朝日に掲載された論文の、「骨で見分ける古代人の生活ぶり」から、穀物栽培が始まった時人間は栄養不足に見舞われた、とする文章を引用しています(P.320~321)。

この論文では、トウモロコシを主食とする農耕社会となった、ハーディン・ビレッジ遺構(西暦1500 ~1675年)では、それ以前の狩猟採集社会と比較して4歳未満の死亡が多くなったと報告されているようです(私は、原文も科学朝日も読んでいません)。

著者は、乳幼児の死亡が多くなったのは、トウモロコシの粉を使った粥を離乳食として与えたことによるもので、糖質しか含まない食餌によって、乳幼児が下痢を多発して低タンパク血症を起こしたことが原因であると述べています。

しかし、この説明は、自説に誘導するための恣意的なものです。

トウモロコシは必須アミノ酸の1つである、トリプトファンが欠如しています。トリプトファンからはナイアシン(Niacine別名ニコチン酸)が生合成されます。つまり、トリプトファンの欠如によってナイアシンが欠乏し(肉、魚、落花生、酵母などに含まれる)、その結果、ペラグラ(皮膚炎・下痢・痴呆・死亡)を発症します。したがって、糖質中心であることが直接的な原因ではなく、必須アミノ酸が欠如しているトウモロコシを主食とした、偏食が原因です。

「糖新生」の経路では、アセチルCoA4モルからグルコース1モルと二酸化炭素2モルに変換されます。このメカニズムは、飢餓、動物の産卵胚や冬眠中の生存、イヌイット(昔)の糖質を食べない生活などの生化学的説明や、アトキンスダイエットとして糖質削減、ケト原性ダイエットの効率性を説明することに繋がるとも言えます。

しかし、注意すべきは、生肉のみを食べていた時期のイヌイットの平均寿命は低く、1960年代頃で30歳ないしは40歳前後でした。その原因を、乳幼児死亡率が非常に高かつたとする意見もありますが、正確な統計データがある訳ではありませんので信憑性はありません。むしろ、30歳を過ぎると急に老け込んだとする目撃談に、意味があるものと思われます。前述した研究結果から、必要な糖質を「糖新生」による合成に頼ることで、著しく短命になっていた可能性も考えられるのです。

補足
最近のニュートリゲノミクスによる研究では、摂取カロリーを30%減少させると、老化マーカー遺伝子群の発現を抑制できると言われています。

出典文献
Mayumi Hachinohe,1 Midori Yamane, et al.
A Reduction in Age-Enhanced Gluconeogenesis Extends Lifespan
PLoS One. 2013; 8(1): e54011.
Published online Jan 14, 2013. doi: 10.1371/journal.pone.0054011


サーチュイン遺伝子(SIR2)は、寿命を延ばす働きをするとして話題になりましたが、国立遺伝学研究所の小林武彦教授らは、酵母による研究で、SIR2がゲノムを安定化させることで寿命を延長させることを検証しました。

Kimiko Saka, Satoru Ide, Austen R.D. Ganley, and Takehiko Kobayashi
Cellular senescence in yeast is regulated by rDNA noncoding transcription.
Current Biology, 29 August 2013 doi:10.1016/j.cub.2013.07.048

ω-3 多価不飽和脂肪酸の消費は ALS 発症率減少に関連すると報告 [栄養の話題]

食事由来長鎖多価不飽和脂肪酸 (Pufa)のω-6 と ω-3の消費量と、筋萎縮性側索硬化症(ALS)発症リスクとの関係を調査したところ、ω-3消費量が多いとリスクは34%減少しました。

研究デザインは、縦断的前向きコホート(健康-AARP 国会機関と健康研究、がん予防研究 II 栄養コホート、医療専門家のフォロー アップ研究、多民族コホート研究、看護師健康調査。ダイエット食物頻度アンケート)。

食餌変数調整後のエネルギー摂取量を5分位に分類。メインアウトカムは、ALS発症率や死亡転帰。ランダム効果メソッドを使用したプール化と、コックス比例ハザード回帰による推定。

参加者は1, 002, 082名で、フォローアップ中に995名が発症。

ω 3 PUFA 摂取量の最高5分位を最低と比較した、ALS発症の調整後リスク比(RR),は 0.66 (95% CI, 0.53-0.81; P<0.001 for trend)で、34%減少。

尚、両方のα-リノレン酸の消費量では、RR, 0.73(95% CI, 0.59-0.89; P=0.003 for trend)で、27減少と、効果は低下し、Ω-6 多価不飽和脂肪酸単独では ALSのリスクに関連付けられていません。

ALSは、平均罹病期間が3~5年と、予防も治癒もできない重度進行性の難病です。上位、下位運動ニューロンを系統的におかす変性疾患で、大脳皮質運動領野Betz細胞、錐体路、下部脳幹の運動性脳神経核、および脊髄前角細胞の著明な変性脱落を特徴とします。

有病率は世界の各地域ともほぼ同一で、0.8~6.4/10万人、年間発病率0.4~2.6/10万人であり、本研究の100万人当たり995名は通常の10倍以上と多い数値となっています。しかし、グアム島と日本の紀伊半島、西ニューギニアのように、有病率が他地域の10数倍~100倍と極めて高い多発地域も存在しますので、あり得ないとは言えません。

結論として、ω 3 PUFAを多く摂取することで発症リスクは低減できそうですが、あくまでもリスク比の低下であることに留意すべきです。有病率が低い場合、発症のリスク比が多少低減してもさほどの違いはありません。

出典文献
Kathryn C. Fitzgerald, Eilis J. O’Reilly, et al.
Dietary ω-3 Polyunsaturated Fatty Acid Intake and Risk for Amyotrophic Lateral Sclerosis
JAMA Neurol. Published online July 14, 2014. doi:10.1001/jamaneurol.2014.1214

穀物源の食物線維摂取量は心筋梗塞後の死亡率低下に関連すると報告 [栄養の話題]

食物線維摂取量と心筋梗塞(MI)後の心血管死亡との関連性を調査した研究で、特に、穀物源の線維摂取量が多い者程死亡率が低下したと報告されています。

看護師の健康調査(121,700名の女性、30-55歳 in 1976)と、医療従事者追跡調査(51,529名の男性、 40-75歳 in 1986)を基にした、前向きコホート研究。登録時に心血管疾患、脳卒中および癌の既往が無く、その後追跡期間中に最初のMIを生き延びた2,258名の女性と1,840名の男性を対象に評価。

薬物使用、病歴、生活習慣因子を調整し、Cox比例ハザードモデルを使用して、食物線維の摂取量と全原因および心血管死亡との関連性を評価。女性は32年間、男性は22年間フォローアップ。

MI後の追跡期間の中央値は、男性9.0年、女性8.7年。フォローアップ中に、女性は682名が死亡し、心血管死は336名、男性は451名で心血管死は222名。

食習慣は、看護師の健康調査では1976~2006にかけて4年毎の食物摂取頻度調査票、医療従事者追跡調査では1986~2006までを評価。ハーバード食品成分データベースから食品の食物繊維含有量を推定。

MI後、繊維の摂取量が多い群を極端に少ない群と比較した、全原因死亡率のハザード比(HR)は0.75( 95% confidence interval 0.58 to 0.97)と有意に低く、穀物繊維の摂取量ではHR0.73(0.58 to 0.91)と、27%減少し、さらに、 MI後摂取量を増やした者ではHR 0.69(0.55 to 0.87)と、31%減少しました。

BMI、身体活動レベル、血糖負荷、アスピリンまたは脂質低下薬の使用によって有意な影響修飾は観察されませんでした。

尚、MI発症前の食物線維摂取量は(最高5分位対最低5分位比較)、全原因死亡率の pooled HR 1.17(0.92 to 1.48)、心血管死のHR1.10(0.77 to 1.55)と、逆にわずかに上昇していますが有意差はありません。

果実および豆類の線維では効果はなく、穀物源の線維のみ効果がありました。一般集団では、定期的に線維の豊富な全粒粉を消費した者たちの間で、冠状動脈性心臓病のリスクが20~40%低下することが観察されているようです。

出典文献
Shanshan Li, Alan Flint, et al.
Dietary fiber intake and mortality among survivors of myocardial infarction: prospective cohort study
BMJ 2014; 348 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.g2659 (Published 29 April 2014)
Cite this as: BMJ 2014;348:g2659

乳児の疝痛にプロバイオティクスは効果無しと報告 [栄養の話題]

疝痛の乳児を対象にしたプロバイオティクスの効果を調査した研究で、プラシーボと比較して差はなく、効果は認められませんでした。

研究デザインは、二重盲検、プラシーボ無作為化比較試験。

Wessel’s の基準(泣く、騒ぐ)を満たす、3ヶ月未満の乳児167名を、プロバイオティ
クス85名、プラシーボ82名に無作為に分けて調査。

プロバイオティクスは、ラクトバチルス L reuteri DSM 17938 (0.2×108 colony forming units per drop)。

メインアウトカムは、1ヶ月の叫びや大騒ぎの期間で、セカンドアウトカムは叫びや大騒ぎエピソードの数。

泣いたり大騒ぎする時間は両群とも着実に下落しましたが、1ヶ月時点では、プロバイオティクス群は、プラシーボ群よりも49分余計に手間がかかりました (95% confidence interval 8 to 90 minutes, P=0.02)。騒ぐ傾向は、母乳よりもミルクで顕著でした。

この前向きの大規模試験では、従来の仮説は否定されました。さらに、 Lロイテリ処理が乳児糞便微生物多様性大腸菌のコロニー形成、またはカルプロテクチンレベルの変化を示さなかったことにも意義があります。但し、対象となった乳児のほとんどは、救急医療から募集されており、その他の乳児に一般化されない可能性はあります。

出典文献
Valerie Sung, Harriet Hiscock, et al.
Treating infant colic with the probiotic Lactobacillus reuteri: double blind, placebo controlled randomised trial
BMJ 2014; 348 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.g2107 (Published 1 April 2014)
Cite this as: BMJ 2014;348:g2107

出生前プロバイオティクスは菌種によってはアトピー感作リスクを増加させる [栄養の話題]

胎児期における母親のプロバイオティクス摂取によって、出生後の子供のアトピー性感作リスクが軽減し、総IgEレベルも減少しましたが、投与時期と菌種によって違いが見られ、さらに、喘息/喘鳴のリスクは減少しませんでした。

特に問題となるのは、古くから一般的に食べられている乳酸菌の“Lactobacillus acidophilus ; ラクトバシラス属”は、他の種類と比べてアトピー感作リスクの増加に関連しました(P = .002)。

プロバイオティクスは、子どものアトピーや喘息のリスクを減らすと言われていますが、臨床試験の結果は必ずしも一定しません。

このメタアナリシス研究は、子どものアトピー性皮膚感作や喘息/喘鳴予防における、プロバイオティクスサプリメントの効果を評価した、無作為化プラシーボ対照試験を対象に検証しています。尚、ファンネルプロットによって、「出版バイアス」の検証も行っています。

プールリスク推定値をランダム効果モデルを使用して推定。メタ回帰によって、プロバイオティスクの有効性に関する潜在的な要因の影響を検討。

プロバイオティスクの投与は、総免疫グロブリンE(IgE抗体)を減少させる効果がありました(mean reduction: -7.59 U/mL [95% confidence interval (CI): -14.96 to -0.22]; P = 0 .044)。

プロバイオティクスを出生前に大幅に投与した場合の、出生後のアトピー性感作のリスク比は0.88 (relative risk: 0.88 [95% CI: 0.78 to 0.99]; P = .035)と、12%減少しました。

皮膚プリックテストおよび一般的なアレルギーに対する特異的IgE抗体陽性のリスク比は0.86 (relative risk: 0.86 [95% CI: 0.75 to 0.98]; P = .027)と、14%減少しました。

しかし、一般的に使用されている乳酸菌種の“Lactobacillus acidophilus”ではリスクは増加しました(P = .002)。また、喘息/喘鳴ではリスク比0.96で効果は見られませんでした(relative risk: 0.96 [95% CI: 0.85 to 1.07])。

一見、アトピーに対しては効果的に思われますが、注意すべきは「出版バイアス」が高く、このメタアナリシス研究の検証(ファンネルプロット)結果からは、研究文献にはバイアスが多く信頼できないと判断できます。

Nancy Elazab, Angelico Mendy, Janvier Gasana, et al.
Probiotic Administration in Early Life, Atopy, and Asthma: A Meta-analysis of Clinical Trials
Pediatrics peds.2013-0246; published ahead of print August 19, 2013, doi:10.1542/peds.2013-0246

追伸
ヨーグルトなどの発酵食品は、これらの食品に対する感受性をもつアトピー性皮膚炎の患者では症状が悪化します。食物による湿疹の悪化は、投与から6~10時間後に起こり始め、24~48時間後にピークに達します。従来の食物投与試験は、食物投与から2時間以内に生ずる蕁麻疹型の痒みと紅斑によって判定していました。つまり、食物投与試験の観察時間は明らかに短すぎたと言えるのです。

尚、悪化食物が発見された患者に対し、1~3ヶ月間除去させると湿疹は顕著に軽快しました。

小児患者69例(3~15歳)では、52例(75%)において1~5種類の悪化食物が確認され、代表的な悪化食物は成人とほぼ同様に、木の実食品と発酵食品でした。

引用文献
上原正巳, アトピー性皮膚炎における食物の役割:主要アレルギー性食物とその他の食物 の比較
皮膚の科学, 第13巻第2号2014; 4 ; 65-75

(この記事は、2014.8.1のブログから引用しました。)


VD補充は変形性膝関節症を改善しない [栄養の話題]

バイタミンD(VD)の補充が変形性膝関節症(OA)の症状と軟骨減少を低下させるかを調査した、2年間の無作為化プラシーボ対照二重盲検試験の結果、効果は認められずむしろ悪化しました。

ボストンのタフツ医療センターに在籍していた症候性膝OA(平均年齢62.4歳[SD、8.5]患者146名を対象に2006年3月~2009年6月まで調査。

無作為に介入群とプラシーボに割り付け、介入群にはVDの血清中濃度を36ng / mL以上に上昇させるために、経口コレカルシフェロール2000 IU / dを投与。

プライマリアウトカムは、膝の痛みの重症度 (Western Ontario and McMaster Universities [WOMAC] pain scale, 0-20: 0, no pain; 20, extreme pain)と、軟骨の体積損失を磁気共鳴画像法で測定して評価。セカンダリーエンドポイントは、軟骨の厚さ、骨髄病変、X線関節裂隙幅、身体機能、膝の機能(WOMAC function scale, 0-68: 0, no difficulty; 68, extreme difficulty)を評価。

参加者の85%が試験を完了。血清25-hydroxyvitamin Dレベルは、介入群で平均 16.1 ng/mL (95% CI, 13.7 to 18.6)、プラシーボ群では2.1 mg/mL (95% CI, 0.5 to 3.7) (P < .001)。

ベースライン時と比較した膝痛は、介入群がプラシーボに比べわずかに高く (treatment group : mean, 6.9; 95% CI, 6.0 to 7.7 vs placebo group : mean, 5.8; 95% CI, 5.0 to 6.6) (P =0.08)でしたが、統計学的有意差はありません。

膝の機能では、介入群の平均 22.7( 95% CI, 19.8 to 25.6)に対して、プラシーボ群では18.5(95% CI, 15.8 to 21.2) (P =0 .04)と、介入群でより悪化しています。

膝痛の減少は、介入群で-2.31(95% CI, -3.24 to -1.38)、プラシーボで-1.46(95%CI, -2.33 to -0.60)と、両群に差はなく、軟骨の体積減少率は、平均-4.30(95% CI, -5.48 to -3.12) vs -4.25( 95% CI, -6.12 to -2.39) (P =0 .96)と、いずれも差は認められませんでした。

セカンダリエンドポイントや、有害事象の発現率は同等でした (β estimate, -0.12; 95% CI, -0.26 to 0.03; P = 0.10)。

気になる点は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)とオピオイドの使用で、介入群の54%に対してプラシーボでは6%と、治療群の参加者はより多くのNSAIDsを服用していました。また、16ヶ月の診察では、オピオイド使用は40% vs 22%(95% CI of difference, 0.02-0.34; P = 0.02)と、わずかですが統計的有意性が認められます。

結論として、著者は、「36 ng / mLを上回る、25 - ハイドロキシVD血漿中濃度を上昇させるためのVD補充はプラシーボと比較して、症候性膝OA患者における膝関節痛および軟骨の体積損失を減少させない。」としています。

しかし、むしろ悪化させたと判断することが妥当です。

Timothy McAlindon, Michael LaValley, et al.
Effect of Vitamin D Supplementation on Progression of Knee Pain and Cartilage Volume Loss in Patients With Symptomatic Osteoarthritis.
JAMA. 2013;309(2):155-162. doi:10.1001/jama.2012.164487

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