出生前プロバイオティクスは菌種によってはアトピー感作リスクを増加させる [栄養の話題]

胎児期における母親のプロバイオティクス摂取によって、出生後の子供のアトピー性感作リスクが軽減し、総IgEレベルも減少しましたが、投与時期と菌種によって違いが見られ、さらに、喘息/喘鳴のリスクは減少しませんでした。

特に問題となるのは、古くから一般的に食べられている乳酸菌の“Lactobacillus acidophilus ; ラクトバシラス属”は、他の種類と比べてアトピー感作リスクの増加に関連しました(P = .002)。

プロバイオティクスは、子どものアトピーや喘息のリスクを減らすと言われていますが、臨床試験の結果は必ずしも一定しません。

このメタアナリシス研究は、子どものアトピー性皮膚感作や喘息/喘鳴予防における、プロバイオティクスサプリメントの効果を評価した、無作為化プラシーボ対照試験を対象に検証しています。尚、ファンネルプロットによって、「出版バイアス」の検証も行っています。

プールリスク推定値をランダム効果モデルを使用して推定。メタ回帰によって、プロバイオティスクの有効性に関する潜在的な要因の影響を検討。

プロバイオティスクの投与は、総免疫グロブリンE(IgE抗体)を減少させる効果がありました(mean reduction: -7.59 U/mL [95% confidence interval (CI): -14.96 to -0.22]; P = 0 .044)。

プロバイオティクスを出生前に大幅に投与した場合の、出生後のアトピー性感作のリスク比は0.88 (relative risk: 0.88 [95% CI: 0.78 to 0.99]; P = .035)と、12%減少しました。

皮膚プリックテストおよび一般的なアレルギーに対する特異的IgE抗体陽性のリスク比は0.86 (relative risk: 0.86 [95% CI: 0.75 to 0.98]; P = .027)と、14%減少しました。

しかし、一般的に使用されている乳酸菌種の“Lactobacillus acidophilus”ではリスクは増加しました(P = .002)。また、喘息/喘鳴ではリスク比0.96で効果は見られませんでした(relative risk: 0.96 [95% CI: 0.85 to 1.07])。

一見、アトピーに対しては効果的に思われますが、注意すべきは「出版バイアス」が高く、このメタアナリシス研究の検証(ファンネルプロット)結果からは、研究文献にはバイアスが多く信頼できないと判断できます。

Nancy Elazab, Angelico Mendy, Janvier Gasana, et al.
Probiotic Administration in Early Life, Atopy, and Asthma: A Meta-analysis of Clinical Trials
Pediatrics peds.2013-0246; published ahead of print August 19, 2013, doi:10.1542/peds.2013-0246

追伸
ヨーグルトなどの発酵食品は、これらの食品に対する感受性をもつアトピー性皮膚炎の患者では症状が悪化します。食物による湿疹の悪化は、投与から6~10時間後に起こり始め、24~48時間後にピークに達します。従来の食物投与試験は、食物投与から2時間以内に生ずる蕁麻疹型の痒みと紅斑によって判定していました。つまり、食物投与試験の観察時間は明らかに短すぎたと言えるのです。

尚、悪化食物が発見された患者に対し、1~3ヶ月間除去させると湿疹は顕著に軽快しました。

小児患者69例(3~15歳)では、52例(75%)において1~5種類の悪化食物が確認され、代表的な悪化食物は成人とほぼ同様に、木の実食品と発酵食品でした。

引用文献
上原正巳, アトピー性皮膚炎における食物の役割:主要アレルギー性食物とその他の食物 の比較
皮膚の科学, 第13巻第2号2014; 4 ; 65-75

(この記事は、2014.8.1のブログから引用しました。)


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0