糖尿病専門医は血糖値を下げることのみに執着する [医学・医療への疑問]

音声ベースの会話型人工知能 (AI) アプリケーションが、2 型糖尿病患者が自宅で基礎インスリンを漸増して迅速な血糖コントロールを達成するのに役立つかどうかを検討したランダム化臨床試験の結果、AIグループの参加者は最適なインスリン投与量、インスリンアドヒアランス、血糖コントロール、およびインスリン投与までの時間が大幅に改善されたと報告されている。

会話型 AI グループの参加者は、標準治療グループと比較して、最適なインスリン投与量をより迅速に達成(median, 15 days [IQR, 6-27 days] vs >56 days [IQR, >29.5 to >56 days])。

また、音声ベースの会話型 AI グループの参加者は、標準治療グループの参加者よりも血糖コントロールを達成する可能性が高かった(13 of 16 [81.3%; 95% CI, 53.7%-95.0%] vs 4 of 16 [25.0%; 95% CI, 8.3%-52.6%]; difference, 56.3% [95% CI, 21.4%-91.1%]; P = .005)。

この研究では、2 型糖尿病患者が自宅で基礎インスリン滴定を管理できるようにするために、音声ベースの会話型人工知能 (VBAI) アプリケーションを開発して調査している。
研究者らは、彼らが知る限り、この研究は薬剤滴定に VBAI が使用された初めてのケースであると記している。

2 型糖尿病のアメリカ成人3,300 万人のうちのほぼ4 分の 1 が血糖コントロールが悪く、ヘモグロビンA1c (HbA1c) レベルが 8% を超えているとのこと。糖尿病患者に対してインスリン療法が不可欠だが、効果的に使用するには頻繁な投与が必要となるため、実際に達成するのは困難で、ほとんどの患者は最適量以下の用量を投与している。

患者によるインスリンの自己滴定は、これらの障壁を克服するための潜在的な解決策であり、いくつかの研究では、自己漸増が安全で効果的であることが示されている。



血糖値が速やかに下がって良かった良かったと言いたいところだが、この研究には大いに疑問を感じる。


そもそも、抗高血糖療法が2型糖尿病患者にとって有益であるという証拠には矛盾がある。
さらに、血糖値を下げた結果の長期的な転帰や予後が厳格に調査されたこともない。


何らかの原因による死亡、糖尿病関連合併症、健康関連の生活の質、社会経済的影響などの患者関連の転帰に関する情報について、対象となった試験のほとんど全てにおいて不十分または欠如している。


イギリスにおける前向き糖尿病研究(UKPDS)では、より厳格な血糖コントロールが好ましいとされていたが、糖尿病における心血管リスクを制御するためのアクション(ACCORD)試験などの他の研究では、血糖値を正常レベル近くまで下げるための集中治療の効果は有益であるよりも有害であることが判明している。

研究結果では、達成された血糖値に関係なく、異なる血糖降下薬の異なる効果も示されており、結果として、患者関連のアウトカムに対する介入の効果について、血糖濃度に対する介入の効果のみからは確かな結論を導き出すことはできてない。

つまり、血糖値を何が何でも下げるという行為には有益性についての根拠が示されていないのである。

昔の話で、当院の患者がしばらくぶりに来られたのだが、娘2人に両腕を支えられないと歩けない状態であった。訳を聞くと、血糖コントロールのため入院させられていたとのこと。強行な食餌制限の結果やせ衰えて体力も無くなり自力では歩けない状態であった。しかしそれでも、医師達は未だ食餌制限を続けるつもりだったので、家族が見かねて退院させたとのこと。


これは大げさな話では無く、糖尿病専門医を名乗る医師達の頭の中には「血糖値」のことしかなく、極論を言えば、「血糖値さえ下がれば死んでも良い」のである。


もう何年か前のことだが、私の息子が会社の健康診断の結果血糖値が異常に高かったので病院を受診した。記憶は定かでは無いが、確か血糖値は600mg程で、HbA1cは12~13位だったと思う。医師からすぐに入院するように言われたので、息子は私に電話をかけてきた。確かに血糖値は恐ろしく高い。しかし、血液検査の結果では、全ての電解質は正常で、脱水の徴候も認められなかった。つまり、血糖値以外は全て正常であり、糖尿病性ケトアシド-スも高血糖高浸透圧症候群もあり得なかったのである。私は、緊急に入院する必要性はなく、自宅におけるカロリー制限で十分対応できると考えた。医師は激怒し、もう当院では診ないからと、近くの糖尿病専門のクリニックを紹介した。

そのクリニックでも考えは同様であったが、本人の希望もあって、血糖降下薬を処方して外来治療することになった。しかし、薬を何種類か変えてはみたがどれを飲んでも気分が悪くなるので、医師を説得して薬を中止し、食餌を減らし、息子が毎日大量に飲んでいたジュース類を全て禁止した。その結果、予想どおり血糖値は下がり、2~3ヶ月でHbA1cも正常化して現在も全く正常である。


これらの、専門医を名乗る医師達の頭の中は血糖値のことしか無く、患者の生活習慣の問題点や身体の全体像を推測する洞察能力が欠落しているのである。他科の医師においても、専門医を自称する医師は専門外の患者は一切診ないし、そもそも診られないのだ。これが現在の医療の実体なのである。

出典文献
Use of Voice-Based Conversational Artificial Intelligence for Basal Insulin Prescription Management Among Patients With Type 2 Diabetes
A Randomized Clinical Trial
Ashwin Nayak, Sharif Vakili, Kristen Nayak, et al.
JAMA Netw Open. 2023;6(12):e2340232. doi:10.1001/jamanetworkopen.2023.40232

引用文献
The Effects of Type 2 Diabetes Mellitus on Organ Metabolism and the Immune System
Gholamreza Daryabor, Mohamad Reza Atashzar, et al.
Front Immunol. 2020; 11: 1582.Published online 2020 Jul 22. doi: 10.3389/fimmu.2020.01582