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アルコール乱用と離脱症は脊椎固定術後の有害な転帰と関連する [酒は百毒の長]

アルコール乱用(AA)とアルコール離脱(AW)の患者は、脊椎固定術後の有害な転帰と関連しており、特にAWでは、院内死亡率は6倍であった。

アルコール使用障害に属するAAとAWは、アメリカにおいて多大な健康への影響、社会問題、および経済的負担をもたらしている。この研究は、2006年から2014年までのNationalInpatient Sample(NIS)を使用し、脊椎固定術の主要な手順で記録を抽出。多変量回帰分析によって、AAおよびAWと院内死亡率、周術期合併症、費用および滞在期間(LOS)との関連を評価。

待機的脊椎固定術を受けた3,132,192人の患者のうち、AAとAWの有病率はそれぞれ1.14%(35,833)と0.15%(4623)。 入院中にAAのうちの12.90%の患者がAWを発症。全体的な合併症の発生率は、AAのない患者6.14%、AAのある患者10.15%、AWのある患者では33.73%。

多変量調整後、AWは全体的な合併症のリスク上昇と関連(odds ratio [OR]: 4.51; 95% confidence interval [CI]: 3.86–5.27)し、神経学的(OR: 2.58; 95% CI: 1.62–4.12)、呼吸器(OR: 8.04; 95% CI: 6.62–9.77)、心臓(OR: 3.58; 95% CI: 2.60–4.93)、胃腸(OR: 2.31; 95%CI: 1.68–3.17)、泌尿および腎臓(OR: 2.68; 95% CI: 2.11–3.39)、静脈血栓塞栓症 (OR: 3.06; 95% CI: 1.94–4.82)、創傷関連合併症(OR: 3.84; 95% CI: 2.96–4.98)、および院内死亡率(OR: 5.95; 95% CI: 3.25–10.90)。また、AWは、コストが40%高く、入院が85%長くなることにも関連していた。

AAとAWはどちらも、脊椎固定術を受けている患者の有害な転帰と関連しており、AWのリスクがより顕著。

「酒は百毒の長」だから当然として、細かい事と言われそうだが、敢えて言うと。医師や理系の人間、さらに大学教授も、日本人のほぼ全てが、「アルコール」と言う。そんな言葉は存在しない。カタカナで書けば「アルコホール」だが、今まで一度も見た記憶が無い。私も、通じないと思うので敢えて書いているが、何時も迷いはある。英語に関連する、日本人のデタラメ言葉はあまりに多く、奇妙なイントネーションとともに、永久に修正されないのだろうか。

出典文献
Alcohol Abuse and Alcohol Withdrawal Are Associated with Adverse Perioperative Outcomes Following Elective Spine Fusion Surgery
Han, Lin , Han, Hedong, Liu, Hu, Wang, Chenfeng, et al,
SPINE: May 1, 2021 - Volume 46 - Issue 9 - p 588-595
doi: 10.1097/BRS.0000000000003868

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出生前アルコール暴露は成人発症性神経因性疼痛のリスク要因となる [酒は百毒の長]

出生前アルコール暴露(PAE)による影響が成人期まで持続することは、これまでにも多くの臨床研究で報告されている。本研究では、PAEが脊髄星状細胞および末梢白血球を初回刺激して成人発症性神経因性疼痛に対する感受性を持続させることが示されている。

軽度の坐骨神経慢性狭窄傷害(CCI)がPAEラットにおいてのみ頑強なアロディニアを引き起こす。同時に、CCI適用後のPAEの病理学的効果は、アロディニアの増強および脊髄グリア活性の上昇によることを示している。

さらに、軽度のCCIでは脊髄星状細胞活性化は増加するが、ミクログリアは増加しないため、星状細胞がPAE誘発感覚プロセッシングに対する感受性に大きな役割を果たすことを示唆している。

PAE由来の白血球集団は、リンパ系器官および他の領域における白血球集団の分布と異なっている。また、 in vitroにおける白血球刺激後、PAEのみがTNF-αおよびIL-1βの産生を増加させるなど、抗原刺激に対する免疫応答が増大する。

CCI操作は4つのクロマチン縫合による。軽度のバージョンは1つの坐骨神経周囲を単一の縫合によってゆるく結紮している。脊髄神経膠免疫反応性を免疫組織化学を用いて調べ、白血球集団の特徴づけおよび機能的応答を、フローサイトメトリーおよび細胞刺激アッセイを用いて試験。さらに、炎症誘発性サイトカインであるインターロイキン-1β(IL-1β)および腫瘍壊死因子-α(TNF-α)を定量している。

最近の報告でも、妊娠中の母体におけるピーク血清エタノール平均レベルが60-80mg/dLの適度な飲酒が、免疫活性化または神経組織へダメージを与えて後期中枢神経系(CNS)機能不全を悪化させるという考えを支持している。

出典文献
Prenatal alcohol exposure is a risk factor for adult neuropathic pain via aberrant neuroimmune function
Joshua J. Sanchez, Shahani Noor, Suzy Davies, Daniel Savage, Erin D. MilliganE,
Journal of Neuroinflammation201714:254
https://doi.org/10.1186/s12974-017-1030-3

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飲酒は少量でも認知症リスクを増加させる [酒は百毒の長]

WhitehallII研究の参加者を対象とした30年関の前向き観察研究の結果、アルコール摂取量が多いほど海馬萎縮のリスクが上昇し、脳梁微細構造の違いや言語流暢性の急激な低下とも関連していた(オックスフォード大学;Anya Topiwala氏ら報告)。

アルコール摂取を1単位8gとして摂取なし群(週1未満)と比較すると、週30単位以上のアルコール摂取群が最もリスクが高く、オッズ比[OR]:5.8(95%信頼区間[CI]:1.8~18.6、p≦0.001)で、6倍近い。適度なアルコール摂取群(週14~21単位)でも、右側海馬萎縮のリスクは(OR)3.4(95%CI:1.4~8.1、p=0.007)と、3倍以上上昇した。

また、少量摂取群(週1~7未満単位)の認知機能低下への予防的効果は認められなかった。

大量飲酒は、コルサコフ症候群、認知症、広範囲の脳萎縮と関連する。一方、少量のアルコール摂取は認知機能障害の予防と関連があるとする研究報告もあるが、証拠は不十分で、この研究結果によって否定された。

対象者は、英国の一般公務員を対象としたWhitehall II研究(1985~2015年)に登録され、第11期(2011~12年)の調査に参加した6,306例の中から1,380例を無作為に抽出。この中で、imaging substudyへの参加に同意し、脳MRI検査を実施できる550名(CAGEスクリーニング質問票2点未満の非アルコール依存者、Whitehall II研究開始時の平均年齢43.0±5.4歳)。

試験終了時(2012~15年)に脳MRI検査を実施し、30年にわたって前向きに収集されたアルコール消費に関するデータを用いて1週間のアルコール摂取量と認知機能について解析。

今回の結果は、イギリスにおける最近のアルコール摂取制限を支持しており、アメリカの推奨量に対して異議を唱えるものである。しかし一方、MRI検査時点の認知能力や、意味流暢性または語想起の経年的な変化との関連は確認されていないことや、観察研究であること、アルコール摂取量が自己申告であるなどに研究の限界がある。しかし、アルコールが基本的に毒物である事実に変わりは無く、過剰摂取による社会的損失は世界的な問題であり、WHOはアルコール摂取の削減を喫緊の課題としている。

厚生労働省研究班の推計によれば、日本における、アルコールの過剰摂取による経済的損失は年間4兆1483億円(2008年)に達するとのこと。その内訳は、肝臓病、脳卒中、癌、および外傷の治療費に1兆226億円。 病気や死亡による労働損失と、生産性の低下などの雇用損失の合計は3兆947億円。 自動車事故や犯罪などの社会保障に約283億円。しかし実際は、未推計の間接的影響を考慮すればこの金額よりもさらに高くなる。

出典文献
Moderate alcohol consumption as risk factor for adverse brain outcomes and cognitive decline: longitudinal cohort study.
Anya Topiwala, Charlotte L Allan, Vyara Valkanova, Enikő Zsoldos, et. al.,
BMJ (Clinical research ed.). 2017 Jun 06;357;j2353. doi: 10.1136/bmj.j2353.

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胎児性アルコールスペクトラム障害の有病率の推定 [酒は百毒の長]

妊娠中の母親の飲酒による胎児のアルコール暴露は、胎児性アルコール症候群(fetal alcohol syndrome : FAS)を引き起こす可能性があります。出生時の特異的顔貌や低体重などは成長とともに次第に目立たたなくなりますが、成人後に依存症やうつ病などが現れることから、「胎児性アルコールスペクトラム障害(Fetal Alcohol Spectrum Disorders : FASD)」とも呼ばれます。

この、Lancetの報告では、2012年7月までに発表された研究を検索し、FASを有する個体における併存疾患の有病率をランダム効果モデルを想定したメタ分析によって推定しています。

ヒットした5068件中127件が適格基準を満たし、FASDを有する個体において428の併存疾患を同定。最も一般的な疾患は、先天性奇形、変形、染色体異常、精神および行動の障害でした。 33の研究では、FASが1728名に発症し、5併存疾患の最も高い有病率は50%から91%で、末梢神経障害、行為障害、受容言語障害、慢性漿液性中耳炎、および表現言語障害などでした。

診断基準では、妊娠中の母親の飲酒、特徴的な顔貌(低い鼻梁、内眼各贅皮、平らな顔など)、出生時低体重、小頭症、小脳低形成、難聴、直線歩行困難などの障害となっています。非遺伝性の精神発達遅滞の最多の原因となっています。頻度は出生数1000人あたり0.1-2名とされていますが、民族や集団によって大きく異なります。

別の文献(*)では、南アフリカでは、FASは55.42/1,000、アルコール関連神経発達障害は20.25/1,000、FASD 113.22/1,000。クロアチアではFASが特に高く、43.01/1,000、イタリア36.89/1,000、西アフリカ28.29/1,000、アルコール関連の先天性欠損症ではオーストラリアで10.82 /1,000、などと報告されています。

このように、有病率は国によっても大きく異なるため明確ではありませんが、著者らは、臨床危険因子として出生前のアルコール暴露を評価することの重要性を強調しています。胎児に対するアルコールの有害性は明らかであり、妊娠中のアルコール飲用は世界的な公衆衛生問題として認識されるべきです。

因みに、「酒は百薬の長」と一般的に言われていますが、この言葉の起源を知らない者による誤解に過ぎません。酒好きの方便として利用されていますが、実際には「酒は百毒の長」が相応しい言葉です。

そもそも、「酒は百薬の長」に医学的根拠があるわけではなく、前漢の末に「平帝」を毒殺して「新」を建国した「王莽」が言ったことです。彼は、「塩、酒、鉄」を政府の専売としました。つまり、税収を増やす為の方便に過ぎません。

内政的には、性急な変革のために失敗し、対外政策にも匈奴を始めとする諸民族の乱が相次ぐなどで全て失敗しました。「新」はわずか15年(AD8-23年)で滅び、その後は後漢の時代となりました、

厚生労働省研究班の推計によれば、日本における、アルコールの過剰摂取による社会的損失は年間4兆1483億円(2008年)に達するとのことです。その内訳は、肝臓病、脳卒中、癌、および外傷の治療費に1兆226億円。 病気や死亡による労働損失と、生産性の低下などの雇用損失の合計は3兆947億円。 自動車事故や犯罪などの社会保障に約283億円です。

しかし、日本では基礎データが集計されていないことや、酒を原因とした家庭崩壊による経済的損失など、金額に換算しにくい問題も多いため、前述した金額は日本におけるアルコール関連損失の合計額を示したものではありません。

また、男性の全死亡原因に占めるアルコールの割合は、日本では4.5%、アメリカ4.8%、ベラルーシ28.1%、ロシア24.1%などです。WHOにおいても、飲酒の抑制は喫緊の課題となっています。

出典文献
Svetlana Popova,Shannon Lange, Kevin Shield, et al.,
Comorbidity of fetal alcohol spectrum disorder: a systematic review and meta-analysis
THE LANCET, Published Online: 05 January 2016
DOI: http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(15)01345-8

*secondary source

Roozen S, Peters GY, Kok G, Townend D, Nijhuis J, Curfs L.
Worldwide Prevalence of Fetal Alcohol Spectrum Disorders: A Systematic Literature Review Including Meta-Analysis.
Alcohol Clin Exp Res. 2016 Jan;40(1):18-32. doi: 10.1111/acer.12939.

飲酒は心筋梗塞死亡率の減少と癌死亡率増加に関連すると報告 [酒は百毒の長]

アルコール消費は、死亡および機能障害における第三の最も重要な危険因子であると言われていますが、有益性と有害性を示す相反する報告が見られます。以前の研究では、主に高所得国で行われましたが、この調査は、5大陸の異なる経済レベルの国における前向きコホート研究です。

本研究は、アルコール消費量と心筋梗塞(n = 979)、脳卒中(n = 817)、およびアルコール関連癌(n = 764)による死亡率との関連を調査しています。

対象は、12カ国の都市農村疫学(PURE)研究における114,970名の成人(35~70歳)。
その内訳は、高所得国(HICs)12,904名 (11%)、上位中所得国(UMICs)24,408 (21%)、低中所得国(LMICs)48,845名 (43%)、低所得国 (LICs)28,813名 (25%)。

死亡 (n=2723)、心血管疾患(n=2742)、心筋梗塞(n=979)、脳卒中(n=817)、アルコール関連癌(n=764)、外傷(n=824)、入院(n=8786)、およびこれらの複合アウトカム (n=11,963)を、コックス比例ハザード回帰分析にて評価しています。

現在の飲酒は36,030名(31%)。非飲酒者と比較した、心筋梗塞のハザード比[HR]は0.76(95% CI 0.63-0.93)で24%減少し、アルコール関連癌はHR1.51 [1.22-1.89)で51%増加、外傷はHR 1.29(1.04-1.61)。

アルコールの高摂取は非飲酒者に比べて死亡率のHR1.31(1.04-1.66)で、31%増加に関連しました。

HICs およびUMICsの複合アウトカムでは、HR 0.84(0.77-0.92)16%減少しましたが、 LMICs およびLICsではHR 1.07 (0.95-1.21; pinteraction<0.0001)で差はありません。

この文献の要約では、残念ながら、所得水準別の各疾患のハザード比は不明です。

この研究の結果では、飲酒によって、全死亡率は31%増加し、心筋梗塞の死亡率は若干減少してアルコール関連癌の死亡率は51%増加しました。また、所得水準によって違いが見られました。

出典文献
Andrew Smyth, Koon K Teo, Sumathy Rangarajan, et al.,
Alcohol consumption and cardiovascular disease, cancer, injury, admission to hospital, and mortality: a prospective cohort study.
The Lancet, Published Online: 16 September 2015
DOI: http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(15)00235-4

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