葉酸とVB12補給は高齢者の認知機能に効果なしと報告 [栄養の話題]

高ホモシステインレベル(Hcy)の高齢者に対し、2年間、葉酸とVB12を補給して認知機能への影響を調査した研究の結果、効果は認められませんでした。

多施設における、無作為化プラシーボ対照二重盲検試験。対象者は、65歳以上Hcyレベルが12~50 μmol/Lであった2919名。参加者は、毎日400μgの葉酸および500μgのVB12(VB群)またはプラシーボ錠(両群に15μgのVD3)を内服。

評価項目は、ミニメンタルステート検査(n = 2,556)、ワーキングメモリ (n = 759)、情報処理速度 (n = 731)、実行能力(n =721)、エピソード記憶 (n = 2,467)。

平均年齢は74.1歳(SD6.5)。ホモシステイン濃度の減少は、B群で5.0 μmol/L(95% confidence interval -5.3 to -4.7)、プラシーボ群では1.3μmol/L (-1.6 to -0.9) 。

ミニメンタルステートスコアの減少は、VB群0.1 (-0.2 to 0.0) 、プラシーボ群では 0.3 (-0.4 to -0.2), (p = 0.05)で差はありません。認知領域のスコアは、2群間で経時的に同様でした。

ホモシステインは必須アミノ酸の1つである、メチオニンの代謝過程が不完全な状態で産生されます。通常、有害なホモステインが生じても、メチオニンや有害ではないシステインに変わるのですが、代謝の乱れからホモシステインが蓄積します。血漿ホモシステイン濃度の正常値は6μmol/L未満とされています。血漿中の総ホモシステイン量が増加すると遊離ホモシステイン値が増加し、遊離ホモシステインによって血管内皮細胞が障害されます。その結果、血栓症や、脳機能障害を起こし易くなると言われています。

このホモシステインを無毒化する代謝には、葉酸、VB6、VB12が関与しているため、この研究ではこれらのVBを補給してその効果を調査しました。しかし、全く差は認められませんでした。

出典文献
Zwaluw NL, et al.
Results of 2-year vitamin B treatment on cognitive performance
Published online before print November 12, 2014, doi: 10.1212/WNL.0000000000001050
Neurology 10.1212/WNL.0000000000001050

ホモシステインは含硫アミノ酸であり、血管内皮細胞などの内皮細胞に対して毒性を示し、血栓症や脳機能障害を来たす可能性があると指摘されています。血漿中や細胞内のホモシステインは加齢と共に生成されやすくなります。葉酸が欠乏するとホモシステインが増加し、血管内で活性酸素が産生されて動脈硬化が促進すると言われています。また、ホモシステインはNO産生の抑制や、血小板凝集を促進して血栓形成を促進させます。葉酸や、VB6、VB12は、血中ホモシステインを減少させると言われています。また、運動もホモシステインを減少させるようです。

葉酸、VB12などのホモシステイン値を低下させるサプリメントは、糖尿病性神経障害の発症リスクを低減させるとする報告もあります。

しかし、葉酸、VB6、VB12のサプリメントは、ホモシステイン値を低下させるが、心血管疾患の発症リスクを低減させることはなく、高ホモシステイン血症は心血管疾患の原因でなく、結果であるとする考えもあります。認知障害を発症している高齢者の血清ホモシステイン濃度は、健康な高齢者の血清ホモシステイン濃度と差がないとの報告もあります。

さらに、葉酸やVBを女性に内服させても、心血管疾患の再発(心筋梗塞、脳卒中、血行再建術、心血管疾患死)が予防されないことが、WAFACS(Women's Antioxidant and Folic Acid Cardiovascular Study)により、2006年の米国心臓協会学術集会(AHA 2006:第79回)で、報告されています。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0