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腰部脊柱管狭窄症に対する減圧手術に有効性の証拠認められず [腰痛関連]

腰部脊柱管狭窄症に対する、減圧手術後の術後硬膜嚢断面積(DSCA)と臨床転帰との関連性と、良好な臨床結果を達成するために必要な後方減圧の範囲について、最小閾値の有無を調査した結果DSCAの増加と臨床改善は関連しませんでした。

症候性腰部脊柱管狭窄症の患者において、良好な臨床転帰を得るためにどの程度広範囲の腰椎減圧が必要であるかについての科学的証拠は得られていません。

対象となった全ての患者は、ノルウェー変性脊椎すべり症および脊椎狭窄症(NORDSTEN)研究の脊椎狭窄症試験に参加しました。 患者は 3 つの異なる方法に従って減圧を受けました。 合計 393 人の患者について、ベースラインおよび 3 か月の追跡調査時に腰椎磁気共鳴画像法で測定されました。また、DSCA、およびベースラインおよび 2 年の追跡調査時に患者が報告した転帰が登録されました。

平均年齢は68歳(SD:8.3)、男性の割合は204/393人(52%)、喫煙者の割合は80/393人(20%)、平均BMIは27.8(SD:4.2)でした。

コホートは、術後に達成されたDSCA、DSCAの数値的および相対的な増加に基づいて五分位に分割され、DSCAの増加と臨床転帰との関連が評価されました。

ベースラインにおける、コホート全体の平均 DSCA は51.1 mm2 (SD: 21.1)でした。 術後、面積は平均 120.6 mm2 (SD: 46.9) に増加しました。 最大の DSCA を持つ五分位におけるオスウェストリー障害指数の変化は -22.0 (95% CI: −25.6 to −18)であり、最も低い DSCA を持つ五分位におけるオスウェストリー障害指数の変化は -18.9(95% CI: −22.4 to −15.3)でした。 22.4から-15.3)。 異なる DSCA 五分位の患者の臨床改善はわずかでした。

腰部脊柱管狭窄症(LSS)は、アメリカでは200,000人を超える成人が罹患しており、65歳以上で脊椎手術を受ける最も一般的な理由になっています。LSSは、腰痛の有無に関わらず、臀部または下肢に痛みを生じる臨床症候群です。原因は、腰椎における神経および血管要素のスペースの減少に関連しており、症状は、歩行や腰部の伸展で悪化し、前屈すると軽減します。LSSは、状態の不均一性、標準的な基準の欠如、および無症状の高齢者の画像検査における解剖学的狭窄の割合が高いことなどによって複雑になっています。

保存的治療におけるランダム化試験はほとんどなく、特定の種類の非外科的治療を推奨するには証拠が不十分です。一方、手術治療による転帰は非手術治療よりも優れているようにも見えますが、証拠は不均一であり、多くの場合質の高い研究は限られています。急速な悪化はまれであり、症状が増減するか徐々に改善することが多いことを考慮すると、手術はほとんどの場合選択的であり、低侵襲介入の試みにもかかわらず厄介な症状が持続する場合にのみ検討されるべきです。

この様に、臨床転帰が不明確な故に、巷では、「腰部脊柱管狭窄症専門の鍼灸院」など、怪しげな治療を吹聴するチラシを見かけます(治療費は高額)。

出典文献
Postoperative Dural Sac Cross-Sectional Area as an Association for Outcome After Surgery for Lumbar Spinal Stenosis
Clinical and Radiological Results From the NORDSTEN-Spinal Stenosis Trial
Hermansen, Erland , Myklebust, Tor, Weber, Clemens, Brisby, Helena, et al.
Spine 48(10):p 688-694, May 15, 2023. | DOI: 10.1097/BRS.0000000000004565

引用文献
Management of lumbar spinal stenosis
BMJ 2016; 352 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.h6234 (Published 04 January 2016)
Cite this as: BMJ 2016;352:h6234
Jon Lurie, Christy Tomkins-Lane,

急性の非特異的腰痛に対する鎮痛薬の有効性と安全性は不明 [腰痛関連]

急性の非特異的腰痛に対する鎮痛薬の効果を確認するために実施されたシステマティックレビューとネットワークメタ分析の結果、有効性と安全性についての信頼度が低く、プラシーボと比較して有害事象のリスク増加と関連することが示された。

データソースは、Medline、PubMed、Embase、CINAHL、CENTRAL、ClinicalTrials.gov、clinicaltrialsregister.eu、およびデータベースの開始から 2022 年 2 月 20 日までの世界保健機関の国際臨床試験登録プラットフォーム。

研究選択の適格基準は、鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬、パラセタモール、オピオイド、抗けいれん薬、骨格筋弛緩薬、コルチコステロイドなど)を別の鎮痛薬、プラシーボ、または無治療と比較したランダム化比較試験。対象は、急性の非特異的腰痛(6週間未満)を報告した成人(18 歳以上)。

98 のランダム化比較試験 (参加者 15,134 人、女性 49%) には、69 の異なる医薬品または組み合わせが含まれていた。 トルペリゾン(平均差-26.1(95%信頼区間-34.0~-18.2))、アセクロフェナク+チザニジン(-26.1(-38.5~-13.6))、 プレガバリン (-24.7 (-34.6 ~ -14.7))、およびプラシーボと比較した他の 14 の医薬品。 これらの薬の効果には違いがなく、信頼度が低いかまたは非常に低いことが指摘されている。

リスク比は、トラマドール risk ratio 2.6 (95% confidence interval 1.5 to 4.5)、パラセタモール + 徐放性トラマドール2.4 (1.5 to 3.8)、バクロフェン2.3 (1.5 to 3.4)、 およびプラシーボと比較したパラセタモール + トラマドール 2.1 (1.3 to 3.4)。 これらの医薬品は、信頼度が中程度から低い他の医薬品と比較して有害事象のリスクを高める可能性がある。

臨床家は、高品質のランダム化比較試験が発表されるまで、急性の非特異的腰痛に対する鎮痛薬の処方には慎重なアプローチが必要と述べられている。

出典文献
Comparative effectiveness and safety of analgesic medicines for adults with acute non-specific low back pain: systematic review and network meta-analysis
BMJ 2023; 380 doi: https://doi.org/10.1136/bmj-2022-072962 (Published 22 March 2023)
Cite this as: BMJ 2023;380:e072962
Michael A Wewege, Matthew K Bagg, Matthew D Jones, et al.


急性腰痛後の慢性腰痛発症を予測する予後因子とは [腰痛関連]

急性腰痛後、約40%の人々が3か月以上続く慢性的腰痛を訴えるが、急性エピソードの時点で慢性腰痛(cLBP)の発症を予測することは困難。この研究は、cLBPの神経生物学的および心理的危険因子を特定することを目的として行われた。対象は急性 LBP 患者 120名で、6 か月のフォローアップを伴う前向きコホート研究。

分析は、痛みの強さまたは障害の程度を連続変数とする多変数線形回帰モデル。二次分析には、二分変数は、6 か月での LBP の存在 (しきい値の痛みの強度と障害の程度) を含む多変数ロジスティック モデル。

感覚皮質と運動皮質の興奮性の低下、ベースライン時の痛みの強さ、うつ病、ストレスの強さ、および痛みの破局化が6 か月における痛みの強さの最も強力な予測因子 (R2 = 0.47) でした。

また、高年齢と破局的な痛みが6か月時点での障害の最も強い予測因子でした (R2 = 0.30)。 感覚皮質と運動皮質の興奮性、脳由来神経栄養因子の遺伝子型、うつ病と不安、LBP の病歴とベースライン時の痛みの強さは、6 か月で LBP を報告した人と報告しなかった人の間で区別された (C 統計値 0.91)。神経生物学的危険因子を多変数線形回帰モデルに追加すると、6 か月間の疼痛強度の分散のさらに 15% が説明された。

これらの調査結果は、LBPの転帰を予測しようとする際に、神経生物学、心理学、症状関連、および人口統計学など、様々な領域にわたって多様な表現型特性を評価することの重要性を裏付けている。たとえば、クラスター分析を使用した縦断的研究では、6 か月のフォローアップで急性 LBP からの回復が最悪だった個人は、腫瘍壊死因子の血清濃度が高く、より高いうつ病様症状を示した。

尚、慢性疼痛における破局化とは痛みに対して注意が囚われることや、無力感、痛みの脅威を過大評価することなどの認知過程で、痛みの難治化を説明するfear-avoidance modelの一部を構成するものであり予後に強く関係する。破局化の評価法には疼痛破局的思考尺度(PCS)があり、反芻,無力感,拡大視の3つの下位尺度がある。痛みに囚われた思考や不安をそのまま無批判に体験するマインドフルネスが破局化を和らげると言われ、治療としての有用性が示唆されている。

まとめると、高年齢と急性時の痛みの強さが6か月後における障害の最も強い予測因子であり、さらに、感覚皮質と運動皮質の興奮性、脳由来神経栄養因子の遺伝子型、うつ病と不安、LBP の病歴とベースライン時の痛みの強さが6 か月間の疼痛強度に関連した。

要するに、急性発症の際の痛みの強さと性格的傾向、および遺伝子型が慢性化に影響するということであり、およそ予測できる範疇である。この知見が、慢性化を食い止めることに結びつくのであろうか。

出典文献
Cortical function and sensorimotor plasticity are prognostic factors associated with future low back pain after an acute episode: the Understanding persistent Pain Where it ResiDes prospective cohort study
Jenkins, Luke, C, Chang, Wei-Jua, Buscemi, Valentinaa, Liston, Matthewa, et al.
PAIN 164(1):p 14-26, January 2023. | DOI: 10.1097/j.pain.0000000000002684

過体重および肥満の膝OA患者に対する食餌と運動の効果とは [腰痛関連]

50 歳以上の変形性膝関節症(膝OA)で過体重または肥満 (BMI ≥27) の患者823名を対象として、食餌療法と運動の介入群と指導のみを比較した結果、痛みの軽減は統計的には有意であったが、その差は20満点中0.5と僅かなもので無意味であった。さらに、食餌と運動介入群には有害事象が多く見られることから、むしろ有害であり推奨できないと言える。

調査は、ノースカロライナ州の都市部および農村部の郡のコミュニティで実施された、評価者盲検無作為化臨床試験。患者は、50歳以上の膝OAおよび過体重または肥満 (BMI ≥27) の男女(N = 823)。気管は、2016 年 5 月から 2019 年 8 月の間で、フォローアップは 2021 年 4 月に終了し、計658 人 (80%) が試験を完了。

主要評価項目は、西オンタリオとマクマスター大学の変形性関節症指数 (WOMAC) 膝痛スコアのグループ間の差 (範囲、0 [なし] から 20 [重度]; 臨床的に重要な最小差、1.6) 。共変量を調整した反復測定混合線形モデルを使用して評価。副次的評価は体重を含む 7 つの項目。

平均 WOMAC 疼痛スコアは、介入群(n = 329)で5.0 、注意対照群(n = 316)では 5.5 (adjusted difference, -0.6; 95% CI, -1.0 to -0.1; P = 0.02)。

7 つの副次的評価項目のうち、5 つは対照群と比較して介入群が有意に優れていた。

169 件の重篤な有害事象があったが、研究に明確に関連するものはなかったと記されている。729件の有害事象があり、その中の32 (4%) は研究に確実に関連しており、10 の体の損傷 (食事と運動介入群で 9件、注意群では1件)、7件の筋緊張 (食事と運動介入群で 6件、注意群で1件)、および介入群で 6件のつまずき/転倒があった。

私は、膝痛に対する運動療法は有害性の方が高いと考えている(「拙著:膝痛の鍼治療」で説明)。膝痛と十把一絡げにせず、患者個々の痛みの起源を適格に捉え、原因に即した治療を行えば効果は確実なものとなる。何も考えず、漫然と有害な電気や温熱療法を処方するだけの輩に言っても、理解されないであろうが。

出典文献
Effect of Diet and Exercise on Knee Pain in Patients With Osteoarthritis and Overweight or Obesity: A Randomized Clinical Trial.
Stephen P Messier, Daniel P Beavers, Kate Queen, Shannon L Mihalko, et al.
Journal JAMA. 2022 Dec 13;328(22);2242-2251. doi: 10.1001/jama.2022.21893.

MRIの解剖学的異常所見は腰痛患者における椎間板障害を予測できない [腰痛関連]

慢性腰痛患者 187人を対象として、腰椎 のMRI所見( 椎間板変性、高強度ゾーン、終板の異常:Modic 変化)を前向きに分析した結果、痛みを伴う椎間板障害の予測には役立たないと結論づけられている(少々古い文献ですが)。

画像診断には、磁気共鳴画像法 (MRI)、コンピューター断層撮影法 (CT)、X 線、脊髄造影法などがあり、MRIは電離放射線を使用しないという利点と、軟部組織の優れた可視化能力を備えているため最適な画像診断法と考えられている。しかし、臨床において腰椎椎間板ヘルニア(LDH)の診断精度の証拠は不明であり、さらに、患者の臨床所見と MRI 所見の間の不一致はむしろ常識となっている。

腰痛および下肢の痛みに対する画像診断は、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、馬尾症候群による神経根の圧迫を評価するために使用される。さらに、画像診断を使用して原因となる椎間板レベルを特定することは術前の情報源としても重要となる。しかし、腰痛症全体から見れば、これらはほんの一部に過ぎず、9割以上においてその原因は特定できない。

貴方が腰痛のために整形外科を受診したとする。画像検査の結果何らかの異常が見つかると、医師は、この画像上の変化を腰痛の原因であると告げる。ほとんどの患者がこの説明で納得するが、少し考えてほしい。画像の変化は突然生じたものではないが、何故、今急に痛み出したのか。さらに、症状の多くは画像の改善がなくても自然に治まってしまう。疑問に感じたことはないだろうか。

医師の診断の多くは「現象論」に過ぎず、画像の変化と症状の間はブラックボックスであり、これらを結びつけるような証拠も理論も存在しないのである。

本件の報告に戻ると、慢性腰痛患者 187 人の腰椎 MRI の椎間板所見と解剖学的異常を前向きに分析し、椎間板の変性、高強度ゾーン(HIZ)、終板の異常(Modic)変化について評価。ディスコグラフィー(527個の椎間板)における疼痛誘発の結果を画像所見とは無関係に評価。感度、特異度、陽性適中率(PPV)、陰性適中率(NPV)を計算して、MRIの異常との臨床的関連性を評価。

患者におけるHIZの有病率は 53.5%。椎間板の形態異常とHIZの間には有意な相関が見られた(p<0.05)。形態学的に異常な椎間板 (グレード 3, 4) では、HIZ と一致する痛みの再現の間に有意な相関が見られた (p<0.001)。

痛みとHIZとの関係は感度41%、特異度78.6%; PPV、26.4%; NPV、87.7%)、異常な椎間板(ディスコグラム)は、感度94%、特異度77.5%、PPV18.5%、NPV95.2%。椎間板変性は、感度85.5%、特異度73.4%、PPV17.9%、NPV90.8%、およびモディック変化は、感度、3.6%; 、特異度4.5%、PPV13.1%、NPV84.7%で、症候性椎間板障害の特定に役立たなかった。

因みに、一般の人から見ますと、ディスコグラムの感度94%、特異度77.5%は検査の信頼性としては高い方ではと思うかも知れません。しかし、感度と特異度の数値のみでは、実際に病気である確率は分かりません。有病率を含めたベイズ統計学を使って計算する必要があります。

アメリカにおけるLDHの有病率は約1%と言われています。この数値を使って、条件付き確率を計算しますと。

0.01×0.94/0.01×0.94+0.775×0.225+0.06×0.225=0.0476

つまり、ディスコグラム陽性でも、腰椎椎間板ヘルニア(LDH)である確率は約4.76%に過ぎない(計算違いがなければ)のです。「ベイズ推定」の結果は信じがたいかも知れませんが、これが現実であり、血液検査の信用性にも同様のことが言えるのです。

出典文献
Clinical Significance of the Anatomical Abnormal Findings on Lumbar MRI in Patients with Chronic Low Back Pain
Jowa Hyuk Ihm, Jong Hun Lee, Jin Sik Noh, Choong Bae Moon,
Korean J Spine 2004;1(1): 127-136.

腰椎脊柱管狭窄症に対する後方減圧後の腰痛緩和と頚髄症の影響 [腰痛関連]

この研究の目的は、腰椎脊柱管狭窄症(LSS)の減圧が下肢痛を緩和するのと同程度に腰痛を緩和することを確認し、さらに、LBP緩和が不十分となる予測因子を特定することでした。

一般的には、LSSの減圧はLBPの方が下肢痛よりも不良と考えられているようですが、この、後ろ向きコホート研究では差はありませんでした。

後部要素保存減圧を受けた175人の患者を遡及的にレビューし、数値評価尺度(NRS)を使用してLBPと下肢痛の軽減を評価。人口統計学的、臨床的、または画像化パラメーターと、1年および4年後のLBP緩和との関連を段階的線形回帰分析によって評価。

ベースラインからのLBPおよび下肢痛NRSスコアの平均改善は、1年でそれぞれ5.22および4.70ポイント(P = 0.064、対応のあるt検定)、4年で5.12および4.62ポイント(P = 0.068)。

4年後のLBPスコアの低下は、長期的なLBP(beta = 0.31, P < 0.0001)と、興味深いのは、頸髄圧迫またはT2強調MRIでの髄内高信号を伴う中等度または重度の腕の症状と有意に関連(beta = 0.22, P = 0.0014)。腰椎の画像パラメータは、4年でLBPスコアが低いこととの明確な関連性は示しませんでしたが、Modic change type 1は1年でLBPスコアが低いこととの有意な関連を示しました(beta = 0.28, P < 0.0001)。

結論として、後部減圧は、LBPと下肢の痛みを和らげます。長期的なLBPと同時発生する症候性頸髄症は、不十分なLBP緩和の重要な予測因子であること。また、不十分なLBPの緩和を予測するような信頼できる画像パラメータは認められませんでした。

私にとって興味深かったことは、症候性頚髄症の同時発症と、そのような場合にはLBPの緩和が不良となることです。

腰痛に対する私の鍼治療では、ほぼ全ての患者に対して頚部へも施鍼します。これは、頚椎上部の筋に異常な硬結を認めることが多いためです。これらの患者においては、必ずしも頚髄症は伴っておらず、首の張りや懲りを感じている程度ですが、腰痛や下肢痛の緩和と頚部硬結の緩和は関連している印象です。

これは、以前に“「偽性局在徴候」は責任病変の同定を困難にする2019.3.1.”で紹介したことにも関連しているように感じられるのです。

一部抜粋して記しますと。

“the false localizing sign ; 偽性局在兆候”は1904年にCollierによって提案された概念。従来より、神経学的兆候から予想される疾患局在と実際の病変部位が遠く離れている症例は知られていたが、その正確な機序は現在でも未解明。

実際は頚椎病変でありながら、初発症状として、腰痛、大腿および下腿の疼痛・シビレ、間欠性跛行などが認められた者は約5%に認められ、当初は腰椎疾患として誤診されていたと報告されている(1.)。また、C1-2レベルの頚部脊柱管の神経鞘腫によって右坐骨神経痛様の下肢痛を呈した症例の報告や、C4/5レベルの脊柱管狭窄症、広範の頸椎性脊椎症など(2.3.4.)、いずれの症例も最終的に、頚椎の手術や硬膜外ブロックなどによって症状が軽減している。

胸椎レベルでも、胸椎黄色靱帯骨化症における主訴の26%で背部痛や下肢痛を認めたと報告されている(5.)。

現時点で報告例は少ないものの、見過ごされている症例は少なからず存在するものと予想される。

私は、症状が腰痛や下肢痛であったとしても、脊椎全般(特に、頚椎上部)を診る必要性があるものと考えていますが、その根拠やメカニズムについての理論は現時点では持ち合わせてはおりません。

出典文献
Relief of Low Back Pain After Posterior Decompression for Lumbar Spinal Stenosis
Kakiuchi, Masaaki MD, PhDa; Wada, Eiji MD, PhDb; Harada, Takeo MDc; Yamasaki, Ryoji MD, PhDb; Fukushima, Wakaba MD, PhDd
Author Information
SPINE: September 15, 2021 - Volume 46 - Issue 18 - p E966-E975
doi: 10.1097/BRS.0000000000004006

引用文献
1.
頚椎病変でありながら、腰椎病変と誤診された症例
本多文昭, 花北順哉, 髙橋敏行
脊椎脊髄, 28(3):179-184,2015

2
Sciatica caused by cervical and thoracic spinal cord compression.
Ito T1, Homma T, Uchiyama S.
Spine (Phila Pa 1976). 1999 Jun 15;24(12):1265-7.

3.
Cervical disc herniation causing localized ipsilateral popliteal pain.
Neo M1, Ido K, Sakamoto T, Matsushita M, Nakamura T.
J Orthop Sci. 2002;7(1):147-50.

4.
Cervical cord compression presenting with sciatica-like leg pain.
Chan CK1, Lee HY, Choi WC, Cho JY, Lee SH.
Eur Spine J. 2011 Jul;20 Suppl 2:S217-21. doi: 10.1007/s00586-010-1585-5. Epub 2010 Oct 13.

5.
Clinical analysis and prognositic study of ossified ligamentum flavum of the thoracic spine, J Neurosurg , 91(2uppl) : 231-226, 2001

脊椎への機械的ストレスが黄色靭帯肥大の誘因となる [腰痛関連]

腰部脊柱管狭窄症(LSS)の主要な病理である、黄色靭帯(LF)肥大のメカニズムは不明。この研究は、長期融合ウサギモデルを使用して、黄色靭帯(LF)に対する機械的ストレスの経時的影響を明らかにすることを目的として実施された。

18週齢のオスのニュージーランド白ウサギをランダムに2グループに分けた。機械的ストレスグループは、L2–3およびL4–5の後外側癒合とL3–4上脊柱筋の切除、対照グループは外科的曝露のみとした。処置後16週と52週に、L3–4LFの軸方向標本を組織学的に評価した。血管および筋線維芽細胞の数について、α-平滑筋アクチン(α-SMA)を免疫組織化学的に評価した。

機械的ストレスグループでは、L3–4レベルのLFが、16週目と52週目に弾性線維の破壊と軟骨基質の生成を伴う肥大を示した。機械的ストレスは、時間依存的にLFを肥厚させ、弾性線維破壊および軟骨基質産生を誘発し、52週で最高レベルを示した。 α-SMAの免疫染色は、両方のグループで同様の血管数を示したが、筋線維芽細胞の割合は、対照グループよりも機械的ストレスグループで16週と52週で有意に高くなった。

本研究において、長期の機械的ストレスが筋線維芽細胞の増強を伴う進行性の弾性線維破壊、および軟骨基質産生を伴うLF肥大を引き起こすことが実証された。

出典文献
Long-term, Time-course Evaluation of Ligamentum Flavum Hypertrophy Induced by Mechanical Stress. An Experimental Animal Study
Hori, Yusuke, Suzuki, Akinobu, Hayashi, Kazunori, et al, (大阪市立大学)
SPINE: May 1, 2021 - Volume 46 - Issue 9 - p E520-E527
doi: 10.1097/BRS.0000000000003832

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若い腰痛患者の30年後の椎間板変性と症状との関連性 [腰痛関連]

若い腰痛(LBP)患者の初期腰椎椎間板変性(DD)が30年後の変性変化、痛み、および障害の進行を予測するかを調べた研究の結果、それぞれのディスクの進行性変性変化は予測するが、痛み、障害、および臨床症状は予測しなかったと報告されている。

LBPを有する20歳の75人の兵士の腰椎をMRIによって検査。30年後被験者に連絡が取れた69人中35人が痛みと障害のアンケートを満たし、35人中26人について臨床的およびMRIによる再検討を行い、信号強度(SI)の減少およびその他の変性変化について評価した。SIの低下と疼痛/障害スコアの関連は、Kruskal-Wallis H testで分析。
(信号強度(SI)の減少は、椎間板の水分量の減少を示す)

腰椎椎間板の総数130中、SIの減少は23(18%)から92(71%)に増加(0.9 to 3.5 per subject during the follow-up)。DDの分布は、ベースライン時には、ほとんどがL4–L5およびL5–S1ディスクであったものが、下部4ディスク間でほぼ均等に変化。 ベースラインでSIがわずかに低下していたディスクは、健康なディスクと比較して、フォローアップ後大幅に低下(57%対11%、P <0.001)。 その他の退行性変化もこれらのディスクでより一般的。

但し、ベースラインでのDDの重症度は、現在の痛みや障害との有意な関連性は認められなかった。

つまり、椎間板の変化と腰痛には関連性は無いということ。

出典文献
Sääksjärvi, Simoa, Kerttula, Liisa, Luoma, Katariina, et al.
Disc Degeneration of Young Low Back Pain Patients
A Prospective 30-year Follow-up MRI Study
SPINE: October 1, 2020 - Volume 45 - Issue 19 - p 1341-1347
doi: 10.1097/BRS.0000000000003548

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高齢変性腰椎脊柱側弯症患者の腰痛と骨髄浮腫との関係 [腰痛関連]

MRI上の骨髄浮腫は、高齢者の変性腰部脊柱側弯症における腰痛の存在と密接に関連していたと報告されている。4年前の文献だが、最近、腰痛と骨髄浮腫との関係が気になって検索しているがなかなか見つからない。この報告は広島総合病院の医師らによるもの。

対象となった腰部脊柱側弯症患者120名(65歳以上)で、その中の、腰痛患者64名中 62 名(96.9%)に骨髄浮腫を認めた。一方、非腰痛者では56名中21名(37.5%)であった。

放射線撮影、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、および腰椎の圧痛点検査を行った。MRIでは、冠状断 (coronal)ガドリニウム対照的T1-またはT2強調の脂肪飽和画像によって骨髄浮腫の大きさを評価。

骨髄浮腫は、脊柱側の凸側よりも凹面側に位置する頻度が高い (P 0.001)。腰痛を有する患者の骨髄浮腫スコアは、腰痛の重症度に関連していた (r = 0.724; P < 0.001)。また、腰椎圧痛点の位置は骨髄浮腫の位置に一致していた(κ value = 0.745; P < 0.001)。

退行性腰部脊柱側弯症における腰痛の原因は不明であるが、この調査から、骨髄浮腫が側湾症患者における腰痛だけではなく、もっと広範囲の腰痛のメカニズムに関与しているのではないかと考えている。

また、関節炎や変形性膝関節症(膝OA)では骨髄浮腫が滑膜炎などに先行して生じていることが報告されている。膝OAにおいては、骨髄浮腫の存在が将来の人工関節全置換術に至るリスク因子であると報告されており(当ブログで紹介)、さらに多くの病態に関与している可能性も考えられる。

コラーゲン誘発関節炎マウス(CIA)モデルを用いた、骨髄浮腫(BME)、滑膜炎、骨浸食との関係を縦方向に調査した報告もあるが、長くなるので、この件は別の稿で紹介したい。

出典文献
Bone Marrow Edema and Low Back Pain in Elderly Degenerative Lumbar Scoliosis: A Cross-Sectional Study.
Nakamae T1, Yamada K, Shimbo T, Kanazawa T, Okuda T, et al.,
Spine (Phila Pa 1976). 2016 May;41(10):885-92. doi: 10.1097/BRS.0000000000001315.

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モディック変化を有する腰痛患者はその後の障害や病欠が有意に少ない [腰痛関連]

これまでの研究では、モディックの変化(MC)およびディスク変性と腰痛(LBP)の関連性について相反する結果が示されていた。また、MCを有する患者の長期的予後は不明であった。しかし、13年間のフォローアップを伴う比較コホート研究の結果、むしろ、長期的には障害や病欠が有意に少ないことが判明した。

毎日LBPを有する18~60歳の患者を無作為化対照試験に登録(2004年~2005年)し、腰部磁気共鳴画像(MRI)を実施。患者は、ベースライン時のLBPおよび下肢痛の数値評価尺度(0-10)、ローランド・モリス障害アンケート(RMDQ)、LBP評価尺度(RS、0-30)を評価。LBPの炎症性疼痛パターンおよび病欠日をフォローし13年後に調査は完了した。患者はMRI上のMCの存在(+MC)または不在(−MC)に基づいて階層化された。

ベースラインの204症例のうち、170例(83%)がフォローアップ完了した。+MC67例 (39%)、-MC103例 (61%)。喫煙状況、BMI、抗生物質の使用、LBP、下肢痛、および炎症性疼痛パターンスコアはベースラインおよび13年のフォローアップで2つのグループ間で類似していた。

最終フォローアップで、平均RMQDスコアは+MC群(7.4)が-MC群(9.6、P=0.024)と比較して統計的に有意に優れていた。13 年の LBP スコアは、+MC 群 (4.2) 、-MC 群4.8で、+MC群で低いが統計的には有意差は無し(P = 0.104)。 LP は+MC および -MC グループでそれぞれ 2.6 対 3.4 (P = 0.097)と、+MC群で低いが統計的には有意差無し。RSスコアは、-MC群(10.64、P= 0.013)と比較して+MC群(8.32)で統計的に有意に低かった。

また、+MC グループではLBP による病欠日数が9.0 d 対 22.9 d(P = 0.003)と、著しく少ない結果となった。2つの群間の脊椎手術率に統計的に有意な差はなかった(+MC群10%、-MC群11%、P=0.584)。MCの存在は、13年間のRMDQの変動性のわずか16%しか占めないこと、およびその他の重要な関連性も認められなかった。

LBPは、人の一生の間に人口の60%から70%に影響を与えます。また、多くの医療および福祉費用を伴う疾患であり、イギリスにおいて、すべての長期療養費の15%と障害年金の10%を構成している。

モディック変化(MC)は、脊椎エンドプレートにおけるMRIによる信号変化である。それらは、初期炎症(MC-1)から脂肪変性(MC-2)に続いて、最終的にエンドプレートおよび椎体の石灰化(MC-3)を引き起こすと考えられているが、結果はまだ矛盾している。

本研究では、MCは、長期的な痛み、障害、および病気休暇への関連性は否定され、むしろ、MCを有するLBP患者は、長期のフォローアップで障害や病欠が有意に少ないことが明らかになった。

個人的な想像を述べると、MC変化は自己防衛反応の一端として捉えた方が良いのでは。さらに、ベースラインでMCの有無で症状に差がなかったことから、その存在の臨床的な意味すら疑わしい。腰痛の原因は分からない。

出典文献
Modic Changes Are Not Associated With Long-term Pain and Disability
A Cohort Study With 13-year Follow-up
Udby, Peter Muhareb , Bendix, Tom, Ohrt-Nissen, Søren et al.,
Spine: September 1, 2019 - Volume 44 - Issue 17 - p 1186-1192
doi: 10.1097/BRS.0000000000003051

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ガドリニウム強調画像は椎間板炎症と関連しない [腰痛関連]

椎間板手術中に摘出されたディスク組織へのマクロファージ浸潤によって評価した炎症程度と、ガドリニウム強調MRI画像は関連せず、坐骨神経痛患者における椎間板ヘルニアまたは神経根の炎症の指標として信頼できないと報告されている。

後ろ向き観察研究。椎間板組織は119名の坐骨神経痛患者から採取。ガドリニウムによる増強は、74名の椎間板ヘルニア、26名の神経根で示された。

しかし、マクロファージによる炎症の程度と神経根またはヘルニアディスクのガドリニウム増強と関連しなかった。これらの結果は、Modicタイプ別に評価した場合も変化せず、Modic2型変化の存在とも関連は認められなかった。

T1強調像にガドリニウム造影剤を使用することで活動性の炎症領域が増強されるようです。例えば、MSの活動性病変部分は造影剤が蓄積して明るい領域として写されますが、、、。

出典文献
Gadolinium Enhancement Is Not Associated With Disc Inflammation in Patients With Sciatica
Djuric, Niek, Yang, Xiaoyu, Barzouhi, Abdelilah el, Ostelo, Raymond W.J.G., et al.,
Spine: June 15, 2019 - Volume 44 - Issue 12 - p E742-E748
doi: 10.1097/BRS.0000000000003004
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空軍パイロットの無症候性若年成人における脊髄MRI所見から読み解く事 [腰痛関連]

イタリア空軍アカデミー士官候補生を対象とする、無症候性若年成人(18~22歳)の脊髄MRIの評価では、350名中270名(77%)と、高率に異常所見が認められた。

106名 (30%)が少なくとも1椎間板の脱水を有し、47名(13%)が少なくとも 1椎間板の狭窄、176名(49%)が椎間板の膨隆、62名(18%)が椎間板の突出、28名(8%)が椎間板の脱出、45名(13%)が低レベルの椎間板脊椎症、および、これらの12名が脊椎関節脊椎症を示し、2名(<1%)が無症候性椎体骨折を有していた。

本論文では、高い加速力に曝されたパイロットにおいて、成人集団と同様の高いMRI所見が若い無症候性被験者の集団で検出されたことより、空軍アカデミーは、軍のパイロットを選択する際に候補生の脊椎疾患を排除することが重要であるとしている。

しかし、医学的には、これらの被験者について今後5年10年と長期間フォローする前向き研究が必要だろう。

飛行中の戦闘機による加速度が脊椎への負荷となって椎間板へダメージを与えることが確認された。したがって、作業やスポーツなどによる脊椎への負荷も同様に椎間板へのダメージとなることは予想される。しかし、そのことが直ちに腰痛の原因となるとは言えない。

従来、脊髄MRI所見における異常所見が無症候性の被験者で頻繁に検出されているように、椎間板の変形イコール腰痛症の発症とはならない。上記のような異常所見を示しながらも、全ての被験者が無症状であったことにこそ重要な問題点があると考えられる。

出典文献
High Prevalence of Spinal Magnetic Resonance Imaging Findings in Asymptomatic Young Adults (18–22 Yrs) Candidate to Air Force Flight
Romeo, Valeria, Covello, Mario, Salvatore, Elena, Parente, Chiara Anna, et al.,
Spine: June 15, 2019 - Volume 44 - Issue 12 - p 872-878
doi: 10.1097/BRS.0000000000002961

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腰椎全ディスク交換の効果は非手術と同等 [腰痛関連]

多施設無作為化試験において、8年間のフォローアップの結果、腰椎全ディスク交換 (TDR) と非手術治療後における隣接する椎間板の変性 (add)および臨床転帰に差は認められなかった。

ADD は、Modic の変化、ディスクの高さの減少、ディスクの輪郭、ヘルニアのサイズ、核髄信号、および後部高強度ゾーンの評価に基づいて分類された。臨床転帰は、オスウェストリー障害指数 (ODI) の変化。対象者は、慢性腰痛 (LBP)患者173名中126名。

ADDの増加(for at least one ADD variable) は、非手術群で23/57名 (40%)、TDR群では29/69名(42%)(P = 0.86)で、全く差は無し。 ODI.についても同等(但し、要約には数値の記載無し。)

因みに、この研究の評価は“Level of Evidence: 1”で最上位。

出典文献
Adjacent Disc Degeneration After Lumbar Total Disc Replacement or Nonoperative Treatment
A Randomized Study with 8-year Follow-up
Furunes, Håvard, Hellum, Christian, Espeland, Ansgar, et al.,
Spine: December 15, 2018 - Volume 43 - Issue 24 - p 1695-1703
doi: 10.1097/BRS.0000000000002712

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腰椎椎間板ヘルニアに対するコンドリアーゼの効果について [腰痛関連]

腰椎椎間板ヘルニア (LDH) 患者に対する、コンドリアーゼ(condoliase;ヘルニコア) による chemonucleolysis( ディスク内側の部分溶解)の有効性と安全性を評価した、多施設、無作為化二重盲検プラシーボ対照試験(フェーズ III)の結果、痛みを有意に改善したと報告されている。

Condoliaseはヘルニコアの一般名で、椎間板内に直接注射する薬剤。プロテウスに由来する純粋な蛋白融解酵素( mucopolysaccharidase) であり、椎間板髄核において、コンドロイチン硫酸とヒアルロン酸に対して高い基質特異性を有する。

この基質特異性が、以前に使用されていたキモパパインとの相違点。キモパパインは世界の患者に広く使用され、多くの調査で徴候の 80% の改善を示していたようだ。しかし、その低い基質特異性のために椎間板を取り巻く組織にまで作用し、アナフィラキシー反応や、重篤な神経麻痺、横断性脊髄炎などの神経学的合併症を引き起こす危険性があった。それ故、1999年に、製薬業者は生産と販売を中止している。Condoliaseは、生化学工業が製造し、科研製薬が2018年8月1日より販売を開始している。

Condoliaseは、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン、およびヒアルロン酸を分解する作用を有し、髄核中のグリコサミノグリカンを分解して髄核の保水能を低下させ、椎間板内圧を低下させることで症状を緩和すると考えられている。

しかし、知識不足故か、私にはこの説明が理解できない。髄核が水分豊富なことには、圧を分散させる意味において重要な意味があるはず。さらに、髄核中のグリコサミノグリカンを分解することによって椎間板全体の強度を減少させることが危惧される。また、実験結果では、椎間板の高さが減少したことも評価されているが、むしろ構造的に弱体化して長期的には不利になると考えられるが、、?。

対象となった患者(年齢;20〜70歳)の条件は。(1)片側の足の痛みと、SLR テストの陽性( ≤70°)。 (2)MRI で検証された、L4/l5およびl5/L6または l5/S1のLDH。(3) 神経学的な徴候が圧縮された根の分布と一致する。(4) 6 週間以上の保存的な治療による非改善。(5) 入院前の7日間連続でVAS:50mm以上。

除外要件として、(1) MRI 上、2カ所以上のレベルで LDH を有する。(2) noncontained LDH (transligamentous extrusion or sequestration)。(3)腰椎手術の既往歴。(4)3週間以内に神経根ブロックを受けていた。(5) 重度かつ急速に進行性の神経学的欠損 (例えば、馬尾症候群) があった。(6) 他の腰椎疾患をもっていた。(7) 妊娠中または授乳中。(8)BMI:35.0 kg/m2 以上。(9) 労働者の補償を受けていた。

介入は、各バイアルに、condoliase またはプラシーボのそれぞれ1.25 U/mL を含む注入のための溶液として生理食塩水 1.2 mL で構成。condoliase とプラシーボ(中身が不明)との間には色と粘度に差はなかった。

すべての患者は、投与の日に安全性を監視するために入院。患者は翌日退院し、1、2、4、6、13、26、39、および52週後に受診。

すべての患者は、インフォームドコンセントの時に受けていたのと同じ保存的治療を受け続けた。痛みや神経症状が注射後に悪化した場合には、調査員の裁量で必要に応じて保存的治療の追加が許可された。治療投与後に神経根ブロックや手術を受けた患者は研究から除外。

当初評価した204名中、最終的にcondoliase群76名とプラシーボ群70名が評価を完了。

プライマリエンドポイントは、ベースラインから13週までのVAS。

セカンダリエンドポイントは、レスポンダー率 (VASが50%以上改善した患者の割合)、オスウェストリー障害指数 (ODI)、36-アイテムのショートフォーム健康調査 (SF-36)、神経学的検査 (SLR test, hypesthesia, muscle weakness, deep-tendon hyporeflexia)、MRI 上の椎間板と椎間板ヘルニアの体積、X線による椎間板の高さ。

セイフティーエンドポイントは、有害事象 (AEs)、バイタルサイン、実験室のパラメータ、anticondoliase 抗体価、X 線の変化 (disc height, posterior intervertebral angle, vertebral translation)、および Modic と Pfirrmann を用いた MRI の変化。

すべての AE データは13週まで収集。condoliase の長期安全性を評価するために、下肢痛、腰痛、神経学的所見、および画像パラメータのデータを52週まで採取。撮像パラメータは、以下の基準に基づいて陽性所見の頻度として集計された。(1) ディスクの高さの 30% 以上の減少;(2) 後椎間角5°以上;(3) 3 mm 以上の椎体変異。(4) Modic 分類の変化。(5) Pfirrmann 分類における椎間シグナルの変化。

合計204名の患者のうち、166名が適格であり、無作為化によって、82名および81名がそれぞれ condoliase およびプラシーボの注入を受けた。最終的に、condoliase グループの76患者とプラセボ群の70患者の合計は13週で評価を完了した。患者のベースライン特性に関しては、喫煙歴、後椎角、椎間変異、およびModic型が両者の間でアンバランスであった。

プライマリエンドポイントに関しては、平均 VASスコアは、condoliase群はベースラインで72.4、13週で22.9 mm。プラシーボ群では74.6 と 39.2 mm。ベースラインから13週目までのVASの変化は、condoliase 群は− 49.5 mm、プラシーボ群では− 34.3 mm で、その差は− 15.2 mm(95% 信頼区間;−24.2 から− 6.2;P = 0.001) と、統計的に有意であった 。下肢痛のVASの改善度の差は, すでに1週で2群間で検出可能であり, 2週で有意となり、その後有意に推移した。

セカンダリエンドポイントに関しては、レスポンダ率は condoliase グループで有意に高かく (13週;72.0% vs 50.6% ;P = 0.008)。Condoliase はまた、SLR テスト、ODI、PCS、SF-36においてプラシーボよりも改善し、これらの改善は52週まで維持された。また、condoliase 群において、椎間板および椎間板ヘルニアの容積が有意に減少した。

手術を受けた患者の割合は、condoliase 群で 9.8%、プラシーボ群で 9.9% だった。いずれの場合も、手術の理由は効能不足。

condoliase 群に死亡、アナフィラキシーショックおよび神経学上の後遺症は無かった。プラシーボ群の5名が有害事象によってる研究から脱落した。condoliase グループ4名、プラシーボ群6名、合計10名に深刻な有害事象が発生。condoliase 群では、投与後1週間以内に36.6% の患者で腰痛が観察され、重症度は中等度から軽度であり、治療せずにほとんどの患者で臨床症状が解決または軽減した。下肢の痛みを引き起こす LDH の再発は、condoliase群の1名の患者で報告されたが、外科的治療は必要なかった。

アレルギーのような症状, すなわち、発疹、蕁麻疹、掻痒、および毒性皮疹などの症状が投与後1日以内に発症したが、標準的な皮膚治療で軽快した。

血清 anticondoliase 免疫グロブリン E (IgE) 抗体価が上昇した患者はいないが、condoliase 群の1名が血清 anticondoliase IgG 抗体価が上昇した。しかし、この患者にはアレルギー症状は見られなかった。

画像所見については, condoliase 群は 、Modic 1 型の発生率、およびディスク高の平均変化率が30% 以上減少 (26.8% and 8.5%)し、プラシーボ(17.3% and 0%)と比較して大きかった。

.ベースラインから52週までの平均ディスク高の変化はcondoliase 群で有意に大きかった (−17.0% vs. −8.0%)。

Pfirrmann 分類等級は、condoliase 群でより頻繁に変化した(53.7% vs. 2.5%)。両群とも、 ベースラインから52週までの後椎間角または椎体変異に有意な変化は認められず、画像所見は臨床症状に関連付けられていない。

結論として、Condoliase は LDH 患者の症状を有意に改善し、忍容性が良好であった。したがって、Condoliase は、LDH の治療のための新規かつ強力な chemonucleolytic 薬であると述べられている。

疑問点

対象患者は、6 週間以上の保存的治療で改善しなかった者とあるが、短すぎないか。

プラシーボでもそれなりの効果があったが、不可解なことに、薬剤名が記されていない。少なくとも、「chemonucleolysis」は考えにくいが、何を使用し、それは通常使用されている薬品なのか、その目的は何か、どのようなメカニズムで改善したのかが気になる。

プラシーボとの差は、− 15.2 / 100mm(95% confidence interval, −24.2 to −6.2; P = 0.001)。統計的に有意とは言え、患者の感覚による採点の15%の違いに意味があるのか疑問。私も患者に同様の質問をするが、耐えうる限界の痛みを100として、今の痛みを数値で答えろと言われても、正直なところ、私には正確に数値で表現する自信は無い。

全ての患者が、処置以前の保存的治療を継続していることも疑問。むしろ、処置群の全てにおいて保存的治療は中止し、保存的治療のみを継続する群を別に比較目的で設定すべきではないか。

さらに、前述したように、髄核中のグリコサミノグリカンを分解することで構造的に弱体化してしまい、負荷に対する耐久性が低下して長期的には再び腰痛を引き起こすことになるのではないかと危惧される。

実際に、下記「注射用コンドリアーゼの使用説明書」では、国内第II/III相試験及び第III相試験において、本剤が投与された229例中122例(53.3%)に副作用が認められ、その主な副作用は腰痛51例(22.3%)である。

そもそも、ヘルニアによる機械的圧迫が症状の直接的な原因でないことは周知の事実。さらに、手術の適応性も積極的には疑わしく、多くの患者においてその必要性は低い。

「DISCUSSION」には、保守的治療の無効な患者に対し、手術が利用可能な唯一の選択肢となっているが侵襲が高く、患者に肉体的、精神的負担を課すことになる。condoliase と Chemonucleolysis は一般的な麻酔を必要としない 低侵襲治療であり、通常の日常や社会活動への早期復帰に貢献すると述べている。

しかし、そのように主張したいのであればなおさらのこと、意味不明なプラシーボと比較するのではなく、ヘルニアの摘出手術とを比較するRCTを行うべきであると言いたい。

尚、この研究は日本人の医師らによるものなので、恐らく、今後、国内の医学雑誌にも報告されると思われる。

出典文献
Condoliase for the Treatment of Lumbar Disc Herniation: A Randomized Controlled Trial
Chiba, Kazuhiro, Matsuyama, Yukihiro, Seo, Takayuki, Toyama, Yoshiaki,
Spine: August 1, 2018 - Volume 43 - Issue 15 - p E869-E876
doi: 10.1097/BRS.0000000000002528
Randomized Trial

追伸
参考までに、注射用コンドリアーゼの使用説明書の一部を抜粋。

<効能・効果に関連する使用上の注意>

(1) 画像上ヘルニアによる神経根の圧迫が明確であり、腰椎椎間板ヘルニアの症状が画像所見から説明可能な患者にのみ使用すること。

(2) 本剤は異種タンパクであり、再投与によりアナフィラキシー等の副作用が発現する可能性が高くなるため、本剤の投与前に十分な問診を行い、本剤の投与経験がない患者にのみ投与を行うこと。

(3) 変形性脊椎症、脊椎すべり症、脊柱管狭窄症等の腰椎椎間板ヘルニア以外の腰椎疾患を合併する患 者、骨粗鬆症、関節リウマチ等の合併により椎体に症状が認められる患者の場合は、本剤投与により腰  椎不安定性が強く認められるおそれがある。これらの患者において、合併症が原因で症状が認められる  場合は、本剤の有効性が得られない可能性があるため、本剤のリスクを考慮し、症状の原因を精査した  上で、本剤による治療を優先すべきか慎重に判断すること。投与を行った場合には、患者の状態を慎重  に観察すること。

3.副作用
国内第II/III相試験及び第III相試験において、本剤が投与された229例中122例(53.3%)に副作用      (臨床検査値異常を含む)が認められた。主な副作用は、腰痛51例(22.3%)、下肢痛11例(4.8%)、発  疹等6例(2.6%)、発熱4例(1.7%)、頭痛3例(1.3%)であった。主な臨床検査値異常は、Modic分類の   椎体輝度変化a)54例(23.6%)、椎間板高の30%以上の低下b)33例(14.4%)、好中球数減少6例(2.6 %)、5°以上の椎間後方開大b)5例(2.2%)であった1,2)。(承認時)
(1) 重大な副作用
ショック、アナフィラキシー(頻度不明)※本剤は異種タンパクであり、ショック、アナフィラキシーがあらわ   れるおそれがあるので、投与終了後も観察を十分に行い、異常が認められた場合は、直ちに適切な処置  を行うこと。

4.高齢者への投与
(1)高齢者では、一般的に加齢による椎間板の変性により髄核中のプロテオグリカン含量が低下してい   ることが知られている。そのため、本剤の治療効果が得られない可能性があることから、投与の可否を   慎重に判断すること。
(2)高齢者に対する安全性は確立されていない。[70歳以上の患者に対する使用経験がない。一般に高齢 者では軟骨終板が菲薄化しており、椎体の変性が発現する可能性が高まる。

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椎間関節症候群に対する椎間関節内ステロイドvs傍脊柱筋内注射(?) [腰痛関連]

タイトルには、「Effect of Facet Joint Injection Versus Systemic Steroids in Low Back Pain」と記されているが、傍脊柱筋内と椎間関節へのステロイド注射はそれぞれ6ポイントであり、「椎間関節注射対全身ステロイド注射の効果」とするのは適切ではない。

研究デザインは「Randomized clinical trial」で、エビデンスレベルは、上から2番目の「Level of Evidence: 2」。しかし、レベルが高い研究とは思えない。

この文献は「要約」のみで(全文公開の文献もたまにあるが)、評価項目である、痛みの視覚的アナログスケール、脊柱の伸展中の痛みの視覚的アナログスケール、リカートスケール、改善率、Roland-Morris、36項目短形健康調査の数値が全く記されていないので、判断はできないのだが、感じた疑問点を述べてみたい(医師でもないのに、、)。

先ず、被験者は、椎間関節症候群と診断された60人とのことだが、「椎間関節症候群」そのものが曖昧であり、どの様に定義し、検査されたのか不明。それ以前に、明確な診断基準があったのかなど疑わしい。

介入群は椎間関節内注射、コントロールとして傍脊柱筋内注射(それぞれにtriamcinolone hexacetonide)。ベースライン時および1,4,12,および24週に評価している。

各時点の分析では、ローランド・モリスの質問票、リカート尺度による改善率および治療への対応において、介入群の改善が見られた。両群ともに効果的であり、関節内注射は筋肉内注射に対してわずかに優位性が示されたと記されているが、その差は記述が無いので不明。しかし、「わずかに優位」との表現から、実際にはほとんど差が無かったものと推測できる。

そもそも、椎間関節症候群に対して傍脊柱筋内ステロイド注射に効果があるとは考えられない。したがって、椎間関節内注射に対するコントロールとして意義があるのか疑問。また、両群がスコアをどの程度軽減できたのかを知りたい。要約であっても、評価項目の数値ぐらいは記すべきと言いたい。

出典文献
Effect of Facet Joint Injection Versus Systemic Steroids in Low Back Pain: A Randomized Controlled Trial
Ribeiro, Luiza Helena, Furtado, Rita Nely Vilar, Konai, Monique Sayuri , et al.,
Spine: November 1st, 2013 - Volume 38 - Issue 23 - p 1995–2002
doi: 10.1097/BRS.0b013e3182a76df1

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IL-33 / ST2シグナル伝達が根性痛に寄与する [腰痛関連]

IL-33とその受容体であるST2シグナル伝達が、非圧迫性椎間板ヘルニアのラットモデルにおける根性痛の発生および進行において重要な役割を果たすことが示唆されている。

脊髄で起こる免疫および炎症反応は、椎間板ヘルニアに起因する根性痛の進行において中心的な役割を果たす。IL-33は、神経系の広範な炎症反応および自己免疫性障害を引き起こす。

本研究は、背側脊髄におけるIL-33とその受容体ST2の発現を調査し、その阻害が、非圧迫性椎間板ヘルニアのラットモデルにおいて、疼痛関連行動を減弱するか否かを検証したもの。

先ず、遺伝子サイレンシングのために、IL-33(LV-shIL-33)を標的とする短いヘアピンRNAをコードするレンチウイルスベクターを構築。次に、非圧迫性椎間板ヘルニアラットモデルを作成した。手術後1日目に、ラットの背骨にLV-shIL-33(5または10μl)を注射して機械的閾値を21日間観察して評価。

さらに、脊髄腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、IL-1β、IL-6、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)の発現レベル、マイトジェンの活性化(MAPK)、およびNF-κB経路を評価し、IL-33 / ST2シグナルの根性痛への寄与に関連するメカニズムについて推測。

非圧迫性椎間板ヘルニアラットとは。
腰椎上で正中線の背側切開を行い、多趾筋をL4-L6棘突起に沿って除去し、右脊髄神経根およびDRGは椎弓切除術を通して露出。 2つの尾骨間椎間板から自己髄核を採取し、機械的圧縮なしでL5 背髄神経節(DRG)に適用したもの。 偽手術群では、髄核を収穫したが、背中の手術領域から同様の量の筋肉を採取して代わりにDRGに適用。

背髄神経節(DRG)への髄核(NP)の適用は、主に後角ニューロン、アストロサイト、およびオリゴデンドロサイトにおいて、脊髄におけるIL-33とST2発現の増加を誘導した。脊髄に送達されたLV-shIL-33はIL-33の発現をノックダウンし、顕著に機械的アロディニアを軽減した。さらに、LV-shIL-33の脊髄投与は、脊髄IL-1β、TNF-α、COX-2のC-Jun N末端キナーゼ(JNK)、細胞外シグナル調節キナーゼERK)、およびNF-κB/ p65の過剰発現を減少させた。尚、p38は減少しなっかった。

著者らは、脊髄IL-33発現の阻害は、椎間板ヘルニアによって引き起こされる根性痛を治療するための潜在的治療法になり得ると述べている。

ヘルニア化した椎間板によって誘発される根性痛は、一般的な成人人口の2.2%におよぶと推定されている。根性痛のメカニズムは、ヘルニア髄核(NP)による神経根への機械的圧迫が原因であると考えられてきた。しかし、末梢および中枢神経系で起こる免疫および炎症反応が、根性痛の進行においても重要な役割を果たすという考えを裏付ける証拠が増えている(1.2.)。

神経根の炎症が、単独ないしは機械的な圧迫との組み合わせによって神経根の痛みに寄与する。同時に、神経根症の症状はその非存在下でも起こりうる。

IL-33は、サイトカインのIL-1ファミリーの新規メンバーであり、ST2およびIL-1レセプターからなるその受容体複合体による免疫応答および炎症応答の調節に関与することが示されている(3.)。 IL-33の発現は、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)、細胞外調節キナーゼ(ERK)、p38MAPK、c-Jun N末端キナーゼ(JNK))および核因子-κB(NF -κB)などによって媒介される。

IL-33 / ST2シグナル伝達は、実験的自己免疫性脳脊髄炎、アルツハイマー病およびクモ膜下出血を含む、多くの炎症性および自己免疫疾患の発症および伸展において重要な役割を果たす。

また、IL-33 / ST2シグナル伝達が末梢および中枢神経系における炎症性疼痛の調節に関与していることが報告されている(4.5.)。さらに、脊髄神経結紮または坐骨神経の慢性狭窄傷害後の神経因性疼痛の調節において、脊髄IL-33 / ST2シグナル伝達が重要な役割を果たすことも示されている(6.7.)。

出典文献
IL-33/ST2 signaling contributes to radicular pain by modulating MAPK and NF-κB activation and inflammatory mediator expression in the spinal cord in rat models of noncompressive lumber disk herniation
Si-Jian Huang, Jian-Qin Yan, Hui Luo, Lu-Yao Zhou, Jian-Gang Luo
Journal of Neuroinflammation201815:12
https://doi.org/10.1186/s12974-017-1021-4

1.
Miao GS, Liu ZH, Wei SX, Luo JG, Fu ZJ, Sun T. Lipoxin A4 attenuates radicular pain possibly by inhibiting spinal ERK, JNK and NF-kappaB/p65 and cytokine signals, but not p38, in a rat model of non-compressive lumbar disc herniation. Neuroscience. 2015;300:10–8.View ArticlePubMedGoogle Scholar

2.
Liu ZH, Miao GS, Wang JN, Yang CX, Fu ZJ, Sun T. Resolvin D1 inhibits mechanical hypersensitivity in sciatica by modulating the expression of nuclear factor-kappaB, phospho-extracellular signal-regulated kinase, and pro- and antiinflammatory cytokines in the spinal cord and dorsal root ganglion. Anesthesiology. 2016;124:934–44.

3.
Verri WA Jr, Souto FO, Vieira SM, Almeida SC, Fukada SY, Xu D, Alves-Filho JC, Cunha TM, Guerrero AT, Mattos-Guimaraes RB, et al. IL-33 induces neutrophil migration in rheumatoid arthritis and is a target of anti-TNF therapy. Ann Rheum Dis. 2010;69:1697–703.

4.
Zarpelon AC, Cunha TM, Alves-Filho JC, Pinto LG, Ferreira SH, McInnes IB, Xu D, Liew FY, Cunha FQ, Verri WA Jr. IL-33/ST2 signalling contributes to carrageenin-induced innate inflammation and inflammatory pain: role of cytokines, endothelin-1 and prostaglandin E2. Br J Pharmacol. 2013;169:90–101.

5.
Verri WA Jr, Guerrero AT, Fukada SY, Valerio DA, Cunha TM, Xu D, Ferreira SH, Liew FY, Cunha FQ. IL-33 mediates antigen-induced cutaneous and articular hypernociception in mice. Proc Natl Acad Sci U S A. 2008;105:2723–8.

6.
Liu S, Mi WL, Li Q, Zhang MT, Han P, Hu S, Mao-Ying QL, Wang YQ. Spinal IL-33/ST2 signaling contributes to neuropathic pain via neuronal CaMKII-CREB and astroglial JAK2-STAT3 cascades in mice. Anesthesiology. 2015;123:1154–69.View ArticlePubMedGoogle Scholar

7.
Zarpelon AC, Rodrigues FC, Lopes AH, Souza GR, Carvalho TT, Pinto LG, Xu D, Ferreira SH, Alves-Filho JC, McInnes IB, et al. Spinal cord oligodendrocyte-derived alarmin IL-33 mediates neuropathic pain. FASEB J. 2016;30:54–65.

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椎体終板変性分類のModic typeと腰痛との関連について [腰痛関連]

椎体終板変性の分類であるModic typeⅠ~Ⅲの中で、typeⅠは臨床的にactiveな変化と言われており、腰痛との関連が指摘されているが信頼性は不明。

変形性脊椎症の病態として、椎間板変性(髄核変性), 終板変性(椎間骨軟骨症), 骨棘形成が見られ、終板変性はModic typeⅠ~Ⅲに分類されている。typeⅠは骨髄浮腫(線維血管増生)の状態であり、MRIでは、T1強調画像で低信号、T2強調画像では高信号となる。最近の椎間板変性や炎症を示唆しているとされ、症候性との意見が多い。

TypeⅡは脂肪変性(T1強調像高信号, T2等-高信号)、TypeⅢは骨硬化(終末像, T1強調像低信号, T2強調像低信号)で、何れも安定しており症状発現には関与しないと言われている。

固定術によって、脊椎の不安定性が改善されると信号強度が正常化したり、typeⅠからTypeⅡへ変化する。しかし、自然な経過でも、TypeⅠおよびⅢからTypeⅡへ変化したり、逆にⅡからⅠに変化する場合もあるなど、変化が可逆的であることから、症状の原因や手術結果の指標として使用することへの疑問が提起されている(1)。

ModicⅠの変化を有する25名と、正常23名を含む腰椎椎間板ヘルニア患者45名を対象とした、ヘルニア摘出後の腰痛を比較した研究がある。術後12、24ヶ月において、視覚アナログ尺度 (VAS) スコア、日本整形外科学会スコア (JOAS)、ウェスト障害指数 (ODI)によって評価したところ、何れも両群に差は認められなかった(2)。

したがって、腰椎椎間板ヘルニアの症状に終板の変化は直接的には関与しないようだ。

さらに言えば、腰椎椎間板ヘルニア患者において、対象者の半数をmodic変化無しのグループに設定できたことから、ヘルニア患者の中には終板に異常が無い者が少なからず存在することを意味する。したがって、終板骨折が生ずることで髄核が免疫細胞に曝されて自己免疫反応が生じ、この炎症によって髄核が劣化して椎間板ヘルニアが生じるとする発症機序は疑わしくなる。

終板の異常の成因としては、Modic TypeⅠまたはⅡの変化を持つ患者の終板の調査では、正常者と比較して、PGP 9.5-immunoreactive nerve fibers、およびTNF-immunoreactive cellsが有意に多く(P < 0.01)、細胞数はType ⅠがTypeⅡよりも多かった (p < 0.05)ことから、TNFによって誘発された炎症と軸索の成長に関連していることが示唆されている(3)。

私の結論としては、終板に見られるMRI画像の変化と症状を結びつけるための確かな証拠がないため、何とも言えない。

引用文献
(1)
Modic Vertebral Body Changes: The Natural History as Assessed by Consecutive Magnetic Resonance Imaging
Hutton, Michael J., Bayer, Jens H, D, Powell, John M.,
Spine: 15 December 2011 - Volume 36 - Issue 26 - p 2304–2307
doi: 10.1097/BRS.0b013e31821604b6

(2)
Low Back Pain After Lumbar Discectomy in Patients Showing Endplate Modic Type 1 Change
Ohtori. Seiji, Yamashita. Masaomi, Yamauchi. Kazuyo, Inoue. Gen, et. al.,
Spine: 1 June 2010 - Volume 35 - Issue 13 - pp E596-E600
doi: 10.1097/BRS.0b013e3181cd2cb8

(3)
Tumor Necrosis Factor-Immunoreactive Cells and PGP 9.5-Immunoreactive Nerve Fibers in Vertebral Endplates of Patients With Discogenic Low Back Pain and Modic Type 1 or Type 2 Changes on MRI
Ohtori. Seiji, Inoue. Gen, Ito. Toshinori; Koshi. Takana; Ozawa. Tomoyuki, et. al.,
Spine: 20 April 2006 - Volume 31 - Issue 9 - pp 1026-1031
doi: 10.1097/01.brs.0000215027.87102.7c

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変形性腰椎脊柱管狭窄症とSchmorl結節の関連性 [腰痛関連]

変形性腰椎脊柱管狭窄症(Degenerative lumbar spinal stenosis;DLSS)は、3関節複合体変性症(椎間板および上下のファセット関節)に関連付けられる高齢者の一般的な健康問題。シュモール結節(Schmorl’s nodes;SNs)は垂直ヘルニアであり、エンドプレートの弱体化部分を介して椎間板変性に関連すると考えられている。

この調査では、合計345個体サンプル(control および DLSS)中、202 個体 (58.5%)の腰椎骨 (L1 to S1)に少なくとも1つ以上のSNs が認められた。DLSS 群 (n = 165)では、122個体(73.9%)がSNsを呈し、対照群(n=180)では80個体(44.4%)であった(p < 0.001)。

この研究の結論では、「SNs は DLSS に強く関連している。」と、述べている。しかし、この関連性は椎骨への高負荷に起因する共通性によるものであるとも考えられる。

SNsの存在と腰痛との間の直接的な関係が示唆されており、腰椎椎間板疾患との相関関係が報告されている(1.2.3.)。また、SNsと椎間板変性の重症度の相関性も示唆されている(3)。しかし、SNsは一般的に観察されており、通常は無症状(4.5.)。

SNsの病因は依然として不明であり、その病態によって、腰椎セグメントの不安定性を引き起こす可能性は指摘されているが、明確ではない。

追伸
現在では、腰椎脊柱管狭窄症の病態は黄色靱帯の肥厚と考えられている(2021.9.2.記)。

出典文献
In the quest for degenerative lumbar spinal stenosis etiology: the Schmorl’s nodes model
Janan Abbas, Viviane Slon, Dan Stein, Natan Peled, Israel Hershkovitz, Kamal Hamoud.
BMC Musculoskeletal Disorders BMC series – open, inclusive and trusted 201718:164
DOI: 10.1186/s12891-017-1512-6

参考文献
(1)Wang Y, Videman T, Battié MC. ISSLS prize winner: Lumbar vertebral endplate lesions: associations with disc degeneration and back pain history. Spine. 2012;37:1490–6.

(2)Takahashi K, Miyazaki T, Ohnari H, et al. Schmorl’s nodes and low-back pain. Analysis of magnetic resonance imaging findings in symptomatic and asymptomatic individuals. Eur Spine J. 1995;4:56–9.

(3)Mok FP, Samartzis D, Karppinen J, Luk KD, et al. ISSLS prize winner: prevalence, determinants, and association of Schmorl nodes of the lumbar spine with disc degeneration: a population-based study of 2449 individuals. Spine. 2010;35:1944–52.

(4)Hamanishi C, Kawabata T, Yosii T, Tanaka S. Schmorl’s nodes on magnetic resonance imaging. Their incidence and clinical relevance. Spine. 1994;19:450–3.

(5)Pfirrmann CW, Resnick D. Schmorl nodes of the thoracic and lumbar spine: radiographic-pathologic study of prevalence, characterization, and correlation with degenerative changes of 1,650 spinal levels in 100 cadavers. Radiology. 2001;219:368–74.

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アメリカ大学医師学会による腰痛治療の新ガイドラインに一言 [腰痛関連]

この提言は、委員会による成績評価システム(ACP)を使用し、腰痛に対する非侵襲的治療の無作為化比較試験やシステマティックレビュー(2015 年 4 月まで)に基づいている。

推奨 1:
急性または亜急性の腰痛患者のほとんどは、治療に関係なく時間をかけることで改善する。経皮的温熱療法(evidenceは中等度)。マッサージ、鍼治療、または脊椎マニピュレーション(evidenceは低度)。薬物治療を行う場合は、非ステロイド性抗炎症薬や筋弛緩剤を使用する(evidenceは中等度)。(Grade:強い推薦)

推奨 2:
慢性腰痛症患者では、運動、集学的リハビリテーション、鍼灸、マインドフルネスストレス低減 (evidenceは中等度)、または、太極拳、ヨガ、モータ制御運動、漸進的弛緩法、筋電図バイオフィードバック、低レベルレーザー療法、オペラント療法、認知行動療法、および脊椎マニピュレーション (evidenceは低度) を行い、薬物治療は選択しない。(グレード: 強い推薦)

推奨 3:
非薬物療法で改善しない患者では、第一選択として、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID;イブプロフェン、ナプロキセンなど)ないしは、トラマドールやデュロキセチンを第二選択とする。これらの治療で改善しない場合で、 benefitがリスクを上回る場合にはオピオイドを使用する(依存症や過量投与による死亡リスク)。(グレード: 弱い推奨、適度なevidence)

一言
推奨1の、急性期における温熱治療について。経皮的なごくマイルドな温熱であれば、気持ちが良い程度であり、効果は無くとも有害ではないと言える。しかしながら、急性痛に対して、例えば、入浴や極超短波などによる温熱刺激は悪化させることはあっても軽快することは無く、むしろ有害である。

急性の腰痛症で、重症期に腰部や放散痛の領域などに電気鍼を行えば、翌日に症状は悪化する。早い場合には治療直後に痛みで動けなくなる。病状による効果の違いや、治療法の誤りによる悪化例などが考慮されず、多くのレビューを単純に集計して評価された結論に意味は無い。

動くことが困難なほどの強い痛みを訴える急性の腰痛であれば、如何なる治療法を行っても早期に軽快させることはほぼ不可能。痛みが中等度以下(炎症の程度による)であれば、鍼治療はブロック注射よりも即効性があると考えている。その可否は、病態の判断に加え、刺法、ポイントの選択とその内部組織への正確なヒットによるところが大きい。この経験知によるさじ加減が医師には理解できず、単純に、教科書どおりの経穴に刺して鍼治療を行ったつもりになっている。

鍼治療に関する医師の研究の多くは、病態による治療ポイントや刺法の選択が問われず、「伝統的鍼治療」に基づくとして教科書通りの経穴に単純に施鍼している。

今回の新ガイドラインの根底には、NSAIDsがプラシーボと比較して全く効果が認められないとする多くの研究結果があるものと考えられる。鍼治療の有用性が認識されていることは歓迎する。しかし、腰痛の根本的な病態解明や、病態に即した鍼治療効果のメカニズム究明が必須であるはずだが、全くの手つかずになっている。このように新しい知見も無く、一般常識的なつまらないガイドラインが臨床に役立つとは考えられない。

出典文献
Amir Qaseem, Timothy J. Wilt, Robert M. McLean, et al.,
Noninvasive Treatments for Acute, Subacute, and Chronic Low Back Pain: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians.
Annals of internal medicine. 2017 Feb 14; doi: 10.7326/M16-2367.

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腰部傍脊柱筋筋膜の短さが腰痛に関連する [腰痛関連]

腰痛と腰部筋膜の構造的特徴との関係を調査した研究で、腰部傍脊柱筋の筋膜長が高強度腰痛に関連すると報告。

腰部の筋膜は、脊柱や腹部の筋組織からの張力によって背骨を安定化させており、傍脊柱コンパートメントの圧力増加は筋虚血につながり、腰痛に関連すると考えられている(個人的には、この考えは疑問)。

研究デザインは、“A cross-sectional, community-based study.”。参加者は72名。MRIによって、横突起レベルで傍脊柱筋長と傍脊柱コンパートメントの断面積を測定し、腰痛強度と障害を評価するために慢性疼痛評価スケールを使用。

BMIを調整後、高強度腰痛や障害に関連 [right odds ratio (OR) 1.9, 95% CI 0.99–3.8, P = 0.05; left OR 2.6, 95% CI 1.2 to 5.6, P = 0.01)〕。コンパートメントの断面積の調整後では、さらにオッズ比が増加 (right OR 8.9, 95% CI 1.9–40.9, P = 0.005; left OR 9.6, 95% CI 1.2–42.9, P = 0.003)。

前述した疑問。
私は、「筋の虚血が腰痛の原因になる」とする考えには疑問を感じている。また、いわゆる、「筋・筋膜性腰痛」なるものは、一部の「遅発性筋痛」を除けば疑問。しかし最近では、筋膜リリースが話題になっている。エコーグラムで、圧痛や硬結部位は筋膜が厚くなっており(皮下1~3cm)、この部位へ生理食塩水を注射するだけで痛みが緩和されることが多いと言われている。筋膜の癒着をはがして動きが良くなるとのこと。

出典文献
Ranger, Tom A. Teichtahl, Andrew J. et al.,
Shorter Lumbar Paraspinal Fascia Is Associated With High Intensity Low Back Pain and Disability
Spine, April 2016 - Volume 41 - Issue 8 - p E489–E493
doi: 10.1097/BRS.0000000000001276

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腰痛と神経根障害の横断的研究 [腰痛関連]

MRI所見と腰痛(LBP)の間には明確な関連性は証明されていません。それは、症状が無い者でも、椎間板変性は54 % (4~76 %)と椎間板ヘルニアでは27 % (7~85 %)に確認されるからです。

下肢痛に比べますと、腰痛の機序については十分に説明されていません。この研究では、神経根障害の有無を含めた141名の腰痛患者をMRIで調べ、変性症状をグループ化して腰痛および下肢痛の強度との関係を線形回帰分析によって評価しています。デザインは、標準盲目化されたMRI画像を使用した横断的臨床研究。

特に、この報告では、エンドプレート浮腫(Modic changes;モディック変化)の分析が含まれています。

本研究では、非特異的腰痛57%、神経根症状43%に分類され、患者の62%が下肢痛よりも腰痛を報告しました。

分析の結果、下肢痛は、骨棘、高強度ゾーン(HIZ)、椎間板ヘルニア、および神経根障害などすべての原因に関連付けられていたのに対し、腰痛はタイプ1モディック変化、神経根の接触、および圧痛点に関連し、HIZ、骨棘、および椎間板ヘルニアとは関連していませんでした。神経根の接触は、神経根変位または圧迫とは対照的に、積極的に腰痛に関連する傾向を示しました。また、広範囲の痛みが、神経根障害のない患者における下肢痛を説明しました。

椎間板ヘルニアは腰痛には関連付けられていませんでしたが、腰痛が無い参照群と比較すると神経根圧迫に関連していました。

モディックの変化(3タイプ)とは、1988年にマイケルモディックによって分類されたものです。モディック1型の変化は骨髄浮腫で、終板の亀裂の結果と考えられており、腰痛患者の46%で認められ、無症候性の一般集団の6%に比べて高頻度になっています。タイプ2は骨髄が脂肪によって置換されており、タイプ3では骨が瘢痕組織になっています。

腰痛と椎間板ヘルニアが関連しないとする結果には、興味深いものがあります。尚、終板の亀裂が修復されることはないでしょうが、骨髄浮腫に対しては鍼治療による何らかの有効性が予測されますが、、。

出典文献
Ole Kudsk Jensen, Claus Vinther Nielsen, Joan Solgaard Sorensen, Kristian Stengaard-Pedersen,
Back pain was less explained than leg pain: a cross-sectional study using magnetic resonance imaging in low back pain patients with and without radiculopathy.
BMC Musculoskeletal Disorders 2015, 16:374 doi:10.1186/s12891-015-0827-4
http://www.biomedcentral.com/1471-2474/16/374 

腰痛への早期理学療法の効果は通常ケアと同等 [腰痛関連]

腰痛(LBP)患者に対する、早期の理学療法が通常のケアよりも効果的であるかを評価した研究で、1年間のフォローアップで統計的には有意差はありましたが、その差に臨床的な意味があるとは言えませんでした。

研究デザインは、無作為化臨床試験。対象者は、過去6ヶ月間にLBPの治療を受けていない患者220名(2011年3月2013年から11月までに募集, 18 ~60歳, 平均37.4歳[SD、10.3])。条件として、オスウェストリー障害指数( ODI score )20点以上、症状の持続期間16日未満、過去72時間に膝の症状が無い。

すべての参加者が教育指導を受け、早期の理学療法として108名が4物理療法セッション、112名が通常ケア(?)のみに割付けられました。

プライマリアウトカムおよび評価は3ヶ月間のODIスコアの変化(range: 0-100; 高スコアほど障害大, 最小の臨床的に重要な違いは6ポイント)。セカンダリアウトカムは、4週および1年間のフォローアップによる、疼痛強度の変化、疼痛Catastrophizingスケール(PCS)スコア、恐怖回避欲求、QOL、成功の患者報告、およびヘルスケアの利用を評価。

最終的に、207名の参加者(94.1%)が1年間フォローアップ。3ヶ月後、早期の理学療法グループは平均ODI scoreは、ベースラインの41.3 [95% CI, 38.7 to 44.0]から6.6 [95% CI, 4.7 to 8.5]に改善。

一方、通常ケアグループでは、同様に、40.9 [95% CI, 38.6 to 43.1]から9.8 [95% CI, 7.9 to 11.7]。群間差は-3.2 ([95% CI, -5.9 to -0.47], P=0.02)。

4週後の群間差は、-3.5 ([95% CI, -6.8 to -0.08], P=0.045])。1年後では、-2.0 [95% CI, -5.0 to 1.0], P=0.19)と差は減少。

疼痛強度も、群間差は、 4週後-0.42 [95% CI, -0.90 to 0.02]、3ヶ月後-0.38 [95% CI, -0.84 to 0.09]、1年後-0.17 [95% CI, -0.62 to 0.27]で、差は無し。

PCSスコアでも、 4週後-2.7 [95% CI, -4.6 to -0.85]、3ヶ月後-2.2 [95% CI, -3.9 to -0.49]、1年後-0.92 [95% CI, -2.7 to 0.61]で差は無く、全ての時点で、ヘルスケアの利用にも差はありませんでした。

要約には,物理療法や通常ケアの具体的な記述はありませんので、詳細は不明です。無作為化臨床試験の結果であり、研究の質は高いと言えます。しかしながら、両グループ間のスコアの差は統計的に有意であっても、その差はわずかで臨床的に意義があるとはとても言えません。

出典文献
Julie M. Fritz, John S. Magel, Molly McFadden, et al.,
Early Physical Therapy vs Usual Care in Patients With Recent-Onset Low Back Pain
A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2015;314(14):1459-1467. doi:10.1001/jama.2015.11648.

早期画像診断は高齢者の神経根障害のない腰痛転帰を改善しないと報告 [腰痛関連]

高齢者を対象にした、神経根障害のない腰痛に対する早期の画像診断の有益性を調査した研究で、12ヶ月間のフォローアップ後の臨床転帰に差はありませんでした。

USAの3ヘルスケアシステムにおける、65歳以上5239名を対象にした前向きコホート研究。初診から6週間以内に腰椎や胸椎の画像診断(プレーンフィルム、コンピュータ断層撮影[CT]、磁気共鳴画像[MRI])。1174名はX線写真、349名は早期にMRI / CTで検査。他は対照群。

それぞれの患者群は、診断、痛みの重症度、痛みの期間、機能状態などを、人口統計学的および臨床的特徴を傾向スコアマッチング(propensity score matching)を用いてマッチング。

プライマリアウトカムは、修正ローランド・モリス障害質問票で測定した腰痛および下肢痛(スコア範囲、0-24、高いスコアほどより大きな障害を示す)で評価。

早期のX線検査群と対照群では8.54 vs 8.74 (差,-0.10 [95% CI, - 0.71 to 0.50]; mixed model, P=0.36)。早期のMRI/CT群では、9.81 vs 10.50 (差,-0.51 [-1.62 to 0.60]; mixed model, P=0.18)。

いずれの群も、評価に全く差は無し。 

引用文献
Jeffrey G. Jarvik,et al.
Association of Early Imaging for Back Pain With Clinical Outcomes in Older Adults.
JAMA. 2015;313(11):1143-1153. doi:10.1001/jama.2015.1871.

下肢痛の起源診断の難しさ [腰痛関連]

腰部脊柱管狭窄症と変形性股関節症を合併した患者において、脊髄神経ブロックと股関節ブロックによって下肢の痛みの起源を決定することは困難であったと報告されています。

変形性股関節症では股関節周辺に疼痛が生じますが、腰椎疾患の患者でも下肢領域に放散痛や根性疼痛を感じます。疼痛の直接の起源を鑑別するには脊髄神経ブロックと股関節への局所麻酔を行います。

足の痛みを訴えていた患者で、脊髄造影またはMRI検査後脊髄造影、およびCT検査によって腰部脊柱管狭窄症と診断された420名について検討。その中の4例が変形性股関節症も合併。この症状はL5脊髄神経ブロック後に軽快しましたが、股関節へのリドカイン浸潤後では残りました。そこで、これらの4人の患者に、減圧と後側方固定術の手術を実施。

しかし、すべての患者が腰椎手術後に疼痛は軽快せず、6~12ヶ月後も改善しませんでした。これらの患者は、最終的に股関節全置換術を行った後に無症状となりました。

常識的には、上記ブロックは痛みの直接的な起源を知る唯一の方法です。しかし、このブロックで確認しながらも結果が有効ではなかったことは、下肢痛の起源を診断することの難しさを示すものと言えます。

Saito, Junya , Ohtori, Seiji , Kishida, Shunji, et al.
Difficulty of Diagnosing the Origin of Lower Leg Pain in Patients With Both Lumbar Spinal Stenosis and Hip Joint Osteoarthritis
Spine: 01 December 2012 - Volume 37 - Issue 25 - p 2089-2093
doi: 10.1097/BRS.0b013e31825d213d

腰椎椎間板変性症の治療では手術によって関節症が進行 [腰痛関連]

慢性腰痛や椎間板変性患者において、ディスク補綴手術と通常のリハビリ治療を比較したところ、隣接レベルの変性症(ALD)は同等で、ファセット関節症(FA)では手術群でより進行したと報告されています。

少なくとも1年間の腰痛の既往歴があり、1または2カ所の下部腰椎レベルの退行性変化と、オスウェストリー障害指数30ポイント以上の患者116名を対象。フォローアップは2年間。ALDはモディック変化、ディスク内の後部高輝度ゾーン、髄核信号、ディスクの高さ、ディスクの輪郭、およびFAを評価。データはフィッシャーの正確確率検定とt検定を用いて分析。

ALDの進行は、手術群は59、非手術では57名と、同様でした。

手術を受けた患者では、インデックスレベルFAの発症が20名の患者(34%)で増加し、1名が減少。リハビリ治療を受けた患者では、2名(4%)が増加して、1名が減少(P <0.001)。

結論として、手術も保存的治療も椎間板の変性では変化無く、ファセット関節症の発症は手術によって顕著に増加する。

Hellum, Christian , Berg, Linda , et al.
Adjacent Level Degeneration and Facet Arthropathy After Disc Prosthesis Surgery or Rehabilitation in Patients With Chronic Low Back Pain and Degenerative Disc: Second Report of a Randomized Study
Spine: 01 December 2012 Volume 37 ; Issue 25 : 2063 - 2073
doi: 10.1097/BRS.0b013e318263cc46

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