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食事性サイアミン摂取量と認知機能低下はJ 字型に関係する [栄養の話題]

食事によるサイアミン(VB1)摂取量と、全体認知スコアおよび複合認知スコアの5年間低下率との間にはJ字型の関係があり、変曲点は0.68mg/日(95%信頼区間(CI):0.56~0.80)であり、食事によるサイアミン摂取量は0.60~1.00 mg/日で最小リスクとなることが報告されています。

変曲点以前では、サイアミン摂取は認知機能低下と有意な関連はありませんでした。 変曲点を超えると、サイアミン摂取量 (mg/日) の単位増加ごとに、全体スコアが 4.24 (95% CI: 2.22 ~ 6.27) ポイント、基準値が 0.49 (95% CI: 0.23 ~ 0.76) ポイントの大幅な減少と関連していました。

変曲点以降、特に肥満、高血圧、非喫煙者において、認知機能低下との有意かつ正の関連性が明らかになりました。

この研究の参加者は、認知機能テストを繰り返し完了できる合計3,106人。食事の栄養素摂取情報は、3日間の食事のリコールと、食用油と調味料の消費量を評価するために3日間の食品重量測定方法を使用。 認知機能の低下は、認知状態に関する電話面接からの項目のサブセットに基づいて修正され、全体的な認知スコアまたは複合認知スコアの 5年間の低下率として定義。追跡期間の中央値は 5.9 年

サンプルサイズが小さい以前のいくつかの臨床試験では、サイアミン治療(5~600 mg/日)が認知障害または軽度認知症患者(n=70)の認知機能を改善し、認知障害のある血液透析患者(n=50)では認知機能を改善できることが報告されています。 但し、サンプル数が少なく、高リスクの参加者が含まれているため、これらの臨床試験論は、食事によるサイアミン摂取による患者の認知機能に及ぼす影響を推測することはできません。 また、高齢者の食事によるサイアミン摂取と認知力との関係を調査した、これまでの横断研究および症例対照研究はわずか数件しかなく、結果には一貫性がありませんでした。

周知のように、サイアミン (バイタミン B1) は、エネルギー代謝、神経伝達物質の合成および分泌に関与する必須の水溶性バイタミンで、欠乏症は、腱反射消失、心悸亢進、脚気、多発性神経炎などがあります。その昔江戸では、精米技術の進歩によって白米の多食が普及して脚気患者が多発し、「江戸病」と言われました。また、日清戦争の際には、森鴎外の誤策によって脚気で数万人の兵士が命を落としました。その人数は鉄砲による死亡よりも遥に多くその多くが戦地へ着く前の船中で亡くなりました。しかし、現代においても、インスタント食品や酒、加糖飲料の飲み過ぎによって発症しています。

サイアミン欠乏症は、脳のニューロンへのエネルギー供給不足と脳内のアセチルコリンシグナル伝達の減少を引き起こす可能性があり、これにより認知機能が損なわれる可能性があります。従って、高齢者の認知機能には最適なサイアミン摂取量を維持することが必要です。

食事によるサイアミン摂取量が変曲点を超えると、認知機能低下と有意に正の関連性を示しました。この発見は、長期にわたるサイアミンの過剰摂取が一般集団における新規発症糖尿病および新規高血圧発症リスクんの増加と関連しており、この研究と一致しています。さらに、糖尿病と高血圧はどちらも認知機能低下や認知症の危険因子です。サイアミンはコリンエステラーゼの活性を阻害することでアセチルコリンレベルを調節します。脳内のアセチルコリンレベルが高いと、認知に悪影響を与える可能性があります。したがって、著者たちは、食物からのサイアミンの高レベルの摂取は、脳内のアセチルコリンレベルの上昇を誘発して認知機能の低下を引き起こす可能性があると推測しており、根底にあるメカニズムのさらなる研究が必要であると記しています。

尚、この研究の限界の1つとして、観察分析であるために未測定または未知の因子による残留交絡の可能性を完全に排除することはできません。

補足:
この国では、一般的に「チアミン」、「ビタミン」と呼ばれており、この様な「デタラメ言葉」は医師や科学者でも平気で使用しています。しかし、発音に近いカタカナで表記するならば、「サイアミン」「バイタミン」が正しい。このようなデタラメ言葉は数限りなく氾濫しています。私自身、英語は得意ではありませんが、今後は気がつく限りなるべく正しく記したいと考えています。

出典文献
J-shaped association between dietary thiamine intake and the risk of cognitive decline in cognitively healthy, older Chinese individuals
Chengzhang Liu, Qiguo Meng, Yuanxiu Wei,
Gen Psychiatr 2024; DOI: 10.1136/gpsych-2023-101311.
http://orcid.org/0000-0001-7812-7982

ナイアシンの最終代謝産物は血管の炎症を促進して心血管疾患リスクを高める [栄養の話題]

ナイアシン代謝が重大な心血管イベント(MACE)の発生と関連していることが示唆されました。 過剰なナイアシンの末端代謝産物である、N1-メチル-2-ピリドン-5-カルボキサミド(2PY)およびN1-メチル-4-ピリドン-3-カルボキサミド(4PY)は、従来の危険因子とは関係なく、3年後の心血管疾患(CVD)リスクを最大2倍増加させたと報告されています。

2PY および 4PY レベルの両方と有意に関連する遺伝子変異体 rs10496731 のフェノムワイド関連解析により、この変異体と可溶性血管接着分子 1 (sVCAM-1) のレベルとの関連が明らかになりました。 さらなるメタ分析により、rs10496731とsVCAM-1の関連が確認されました(合計n = 106,000人、女性n = 53,075人、P = 3.6 × 10−18)。 さらに、sVCAM-1レベルは、検証コホート(合計n = 974人、女性n = 333人)において2PYおよび4PYの両方と有意な相関がありました(2PY:rho = 0.13、P = 7.7 × 10−5; 4PY:rho = 0.18、 P = 1.1 × 10−8)。

2つの検証コホート(米国合計n = 2,331、女性n = 774、欧州合計n = 832、女性n = 249)(2PYの調整ハザード比(HR)(95%信頼区間)はそれぞれ1.64(1.10-2.42)および2.02 (1.29-3.18)、4PYはそれぞれ 1.89 (1.26-2.84) および 1.99 (1.26-3.14))。

2PY および 4PY レベルの両方と有意に関連する遺伝子変異体 rs10496731 のフェノムワイド関連解析により、この変異体と可溶性血管接着分子 1 (sVCAM-1) のレベルとの関連が明らかになりました。 さらなるメタ分析により、rs10496731とsVCAM-1の関連が確認されました(合計n = 106,000人、女性n = 53,075人、P = 3.6 × 10−18)。 さらに、sVCAM-1レベルは、検証コホート(合計n = 974人、女性n = 333人)において2PYおよび4PYの両方と有意な相関がありました(2PY:rho = 0.13、P = 7.7 × 10−5; 4PY:rho = 0.18、 P = 1.1 × 10−8)。

研究結果は、過剰なナイアシンの最終分解生成物である 2PY と 4PY が両方とも残留 CVD リスクと関連していることを示しており、4PY と MACE の間の臨床的関連性の根底にある炎症依存性のメカニズムがを示唆されます。

ナイアシン(ニコチン酸)は必須微量栄養素で、人体内では肝臓や腸内細菌によってトリプトファンから生成され、欠乏するとペラグラを発症して最悪の場合には死亡します。トウモロコシにはトリプトファンが含まれていないため、かつてはこれを主食とする地方で多発しました。しかし、CVDにおけるその役割は十分には理解されていません。ナイアシンは、NAD([ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)合成に寄与しますが、市販のサプリメントやコレステロール低下薬として提供される場合など、過剰に摂取すると2PY と 4PY の増加を引き起こすことが示されています。

成人ではペラグラなどのナイアシン欠乏症候群を避けるために、ナイアシン(ビタミンB3またはニコチン酸)を1日あたり少なくとも15mg摂取する必要があるとされています。ナイアシンの強化は数十年にわたって義務付けられてきましたが、現在、米国ではペラグラによる死亡はほぼゼロとなっています。

過去半世紀にわたり、加工食品やファスト食品(その多くには精製された強化小麦粉やシリアルが含まれる)の消費量が増加するにつれ、食事によるナイアシンの摂取量は過剰なレベルまで増加し続けており、小麦粉と穀物にナイアシンを強化する義務を継続することに疑問を提起しています。

例え、水溶性ビタミンであっても過剰摂取には害があります。因みに、日本人が言っている「ビタミン」は間違いで、正しくは「バイタミン」です。

出典文献
A terminal metabolite of niacin promotes vascular inflammation and contributes to cardiovascular disease risk
Marc Ferrell, Zeneng Wang, James T. Anderson, Xinmin S. Li, Marco Witkowski, et al.
Nature Medicine 2024; DOI: 10.1038/s41591-023-02793-8.(2024)

引用文献
Could Niacin Actually Induce Heart Disease?
— Americans consume too much vitamin B3, researchers suggest
by Nicole Lou, Senior Staff Writer, MedPage Today February 19, 2024

重症患者への高用量タンパク質投与は死亡リスクを高くする [栄養の話題]

国際的な救命救急栄養ガイドラインでは、タンパク質用量は幅広いレンジを推奨しています。重篤な疾患において、高用量のタンパク質を投与することの効果は不明です。この研究では、重症患者に提供される高用量のタンパク質が臨床転帰を改善するという仮説を検証したところ、逆に、死亡率の相対リスクが高くなりました。

研究デザインは、国際的、多施設、実用的、レジストリベースの単盲検ランダム化試験。

人工呼吸を受けている栄養的にリスクの高い成人 (18 歳以上) を登録し、高用量のタンパク質 (1 日あたり 2.2 g/kg 以上) を処方した群と、通常用量(1 日あたり 1.2 g/kg 以下)のタンパク質を処方した群を比較。

2018 年 1 月 17 日から 2021 年 12 月 3 日までの間に、1329 人の患者中、1301 人 (97.9%)を分析 (高用量タンパク質群で 645 人、通常用量群で 656 人)。

60 日までの生存退院の累積発生率は、高用量タンパク質群で46·1% (95 CI 42·0%–50·1%) 、通常量タンパク質群では50·2% (46·0%–54·3%)であり、通常群におけるハザード比は0.91(hazard ratio 0·91, 95% CI 0·77—1·07; p=0·27)。統計的な有意差はなし。

60 日死亡率は、高用量タンパク質群は34·6% (222 of 642)、通常群では32·1% (208 of 648)で、相対リスクは1.08(relative risk 1·08, 95% CI 0·92–1·26)。

サブグループの評価から、急性腎障害とベースラインにおける臓器不全スコアが高い患者では、より高いタンパク質供給が特に有害となる傾向が見られた。

アミノ酸の組成は疾患や臓器によって異なっており、それぞれの組成に応じてアミノ酸を制御することが治療に繋がる可能性がある。例えば、癌も治療できることが明らかになっている。重篤な疾患だから高用量のタンパク質を投与するという発想が、いかに非科学的かということを医師は認識すべきだ。

出典文献
The effect of higher protein dosing in critically ill patients with high nutritional risk (EFFORT Protein): an international, multicentre, pragmatic, registry-based randomised trial
Daren K Heyland, Jayshil Patel, Charlene Compher, et al.
The Lancet, Published:January 25, 2023DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(22)02469-2

地中海型食餌療法はアルツハイマー病を抑制するか [栄養の話題]

ドイツにおける“cross-sectional analysis縦断的分析”によれば、地中海型食餌療法( Mediterranean-style diet)を厳密に実施した人々は、アミロイドとタウの病状が少なく、脳容積が増加して記憶力が向上したことが示されている。

参加者には、認知的に正常な169人と、アルツハイマー病(AD)リスクの高い被験者(53人のAD近親者、209人のSCDおよび81人のMCI)が含まれていた(n = 512、平均年齢:69.5±5.9歳)。食品頻度アンケートに基づいてMeDiの順守を定義。脳のボリュームは、T1-MRIのボクセルベースの形態計測と広範な神経心理学的認知能力を介して評価。。脳脊髄液中のAD関連バイオマーカー(Aβ42/ 40比、pTau181)は226人について評価。

参加者は、6つの食品カテゴリー(魚、野菜、果物/ナッツ、マメ科植物、シリアル、および一価不飽和/飽和脂肪の比率が高い)の性別の中央値以上でスコア1を獲得。また、地中海型の食餌に典型的ではない食品(肉、乳製品)がカットオフ値を下回ったときにスコア1を獲得。 適度な飲酒(男性で10〜50 g /日、女性で5〜25 g /日)は有益であると見なし、1ポイントを獲得。

地中型の食餌の順守は、右海馬傍回および右海馬における脳灰白質量と有意に相関し、年齢、性別、教育、BMI、カロリー摂取量、および身体活動を調整後、より良い記憶(β= 0.03±0.02、P = 0.038)と相関。p-tau181のCSF測定値(β= -1.96±0.68、P = 0.004)およびAβ42/ 40比(β= 0.003±0.001、P = 0.008)。

個々の食事成分の探索的分析は、一価不飽和/飽和脂肪比とp-tau181およびAβ42/ 40との間の有益な関係を示唆。

しかし、著者らも述べているように、サンプルがアルツハイマー病のリスクについて濃縮されており、調査結果が一般集団に当てはまらない可能性がある。また、食物摂取量は自己申告によるもので、ある時点でのみ評価されているなどに限界がある。これらの観察結果は仮説を立てるのに役立つが、因果関係を問うことはできない。

追伸
地中海型食餌:Mediterranean-style diet
しつこいようだが、日本人が良く使う、減量としての「◯◯ダイエット」は、日本人得意のデタラメ言葉。“diet”とは、減量のことではなく、「食餌」を意味する。

出典文献
Mediterranean Diet, Alzheimer Disease Biomarkers and Brain Atrophy in Old Age
Tommaso Ballarini, Debora Melo van Lent, Julia Brunner, Alina Schröder, et al,.
Neurology 2021; DOI: 10.1212/WNL.0000000000012067.

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脂肪および炭水化物の摂取と心血管疾患および死亡率との関連 [栄養の話題]

食餌に関する様々な研究は報告によって結果に違いが見られ、解釈に混乱を来している。この原因として、主要栄養素と健康との関連性を、消費量の広範囲にわたって線形と見なしていることが考えられる。実際は、他の生命現象と同様に、主要栄養素の摂取量と健康上の結果の多くは非線形の関係となる。

また、その関係性が他の栄養素の摂取量のレベルと総エネルギー消費量に関係なく有効であるとする先入観によって齟齬が生じる。食餌のアドバイスは、それぞれの成分、例えば、炭水化物に関するガイドラインでは、その成分である砂糖とデンプンの違いやそれぞれの摂取量を考慮する必要がある。

本研究の対象者は、英国バイオバンクの502,536名の参加者のうち、不可解なエネルギー摂取量または食餌摂取のために除外された15,365名を除く195,658名。参加者は、少なくとも1つの食餌アンケートを完了した。食餌は、ウェブベースの24時間リコールアンケートであるオックスフォードWebQを使用して評価され、栄養素摂取量は標準的な方法論を使用して推定。非線形の関連性は“Cubic Spline Analysis;3次スプライン解析”を使用したCox比例モデルによって解析している。

4780名(2.4%)が平均10.6年(範囲9.4-13.9)のフォローアップ期間中に死亡し、948名(0.5%)が致命的なCVDイベント、9776名(5.0%)が非致命的なCVDイベントを、平均9.7年間(8.5-13.0)に発症した。

全原因死亡率が最も低い食餌は、高線維(10〜30 g/日)、タンパク質(14〜30%)、一価不飽和脂肪酸(MUFA;10-25%)、および中程度の多価不飽和脂肪酸(PUFA;5% から <7%)とデンプン(20%から<30%)の摂取で構成されたものであった。

高タンパク質の食餌(≥14%)とデンプン(≥30%)、低線維(<10 g/日)、MUFA(<10%)、PUFA(<5%)は死亡率リスクが70%高い。より高い線維摂取量(≥10 g/日)は、より低いリスクに対応した。尚、同様の低レベルのリスクは、デンプンの摂取量を総エネルギーの30%から20%に減らし、MUFA(総エネルギー摂取量の最大10〜25%)またはPUFA(総エネルギー摂取量の最大5%から7%)に置き換えることで達成できる。

炭水化物の摂取量は死亡率と非線形の関連を示し、総エネルギー摂取量の20〜50%では関連せず、50〜70%で関連性が見られた(3.14 v 2.75 per 1000 person years, average hazard ratio 1.14, 95% confidence interval 1.03 to 1.28 (60-70% v 50% of energy))。この知見は、線維、多価不飽和脂肪酸(PUFA)、およびタンパク質の摂取と心血管疾患(CVD)発症に類似していた。

MUFAの高摂取量 (2.94 v 3.50 per 1000 person years, average hazard ratio 0.58, 0.51 to 0.66 (20-25% v 5% of energy))と、PUFAの低摂取量(2.66 v 3.04 per 1000 person years, 0.78, 0.75 to 0.81 (5-7% v 12% of energy))、および飽和脂肪酸(SFA)(2.66 v 3.59 per 1000 person years, 0.67, 0.62 to 0.73 (5-10% v 20% of energy))が、死亡リスクの低下に関連していた。

総脂肪摂取量は、全原因死亡率と関連しなかった。残りのすべての主要栄養素は、MUFA、PUFA、およびSFAを除いて死亡率と非線形関係を有していた。

より高い糖摂取量とSFA摂取量が高いほど、全原因死亡およびCVD発症の高リスクと関連する。これら2つの成分の等カロリー置換が検討され、エネルギー摂取量が一定のままで、砂糖を、デンプンからのエネルギーの最大30%、MUFAからの25%、タンパク質からの20%に置換すると、全原因死亡およびCVD発症リスクが低下した。

MUFAとの関連は直線的であったのに対し、タンパク質とCVDの関係はJ字型を示した。PUFAに糖を置き換えた場合、PUFAがエネルギーの6〜7%を超えたときに死亡率とCVDのリスクは増加した。糖をSFAに置き換えてエネルギーの10%を超えると死亡リスクは高くなり、CVDリスクは低下した。

本研究では、炭水化物(糖、デンプン、線維を含む)とタンパク質の摂取は、全原因死亡率と非線形に関連しており、この知見は線維、多価不飽和脂肪酸(PUFA)、および心血管疾患(CVD)の発症を有する場合のタンパク質摂取に類似していた。対照的に、SFA、MUFA、およびPUFAの摂取は、全原因死亡率と直線的に関連していた。さらに、砂糖の摂取量をデンプン、MUFA、またはタンパク質に置き換えると、デンプン、MUFA、およびタンパク質の現在の摂取量が少ないときに、全原因死亡率およびCVD発症リスクを低下させる。同様に、SFAをMUFAまたはタンパク質に置き換えることは、総死亡率およびCVDの両方のリスク低下に関連した。

これらの知見は、栄養素摂取量と健康結果との間の複雑で多様な関連性を強調している。以前の研究では、一般的に健康結果と単一の主要栄養素の線形関係を報告している。.本研究では、非線形関係を調べ、観測された関連性に影響を与える可能性のある他の主要栄養素の摂取に関する分析を調整し、主要栄養素と健康結果の非線形および線形関連に基づいて等量カロリー置換を実施した。

尚、非線形関係は、グラフによって一目瞭然なので、興味のある方は原著を参照していただきたい。

出典文献
Associations of fat and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality: prospective cohort study of UK Biobank participants
Frederick K Ho, Stuart R Gray, Paul Welsh, et al.,
BMJ 2020; 368 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.m688 (Published 18 March 2020)
Cite this as: BMJ 2020;368:m688

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多価不飽和脂肪酸の増加は2型糖尿病の予防および治療に効果無し [栄養の話題]

長鎖オメガ-3脂肪酸の増量は、糖尿病にほとんどまたは全く影響を与えなかった(relative risk 1.00, 95% confidence interval 0.85 to 1.17; 58 643 participants, 3.7% developed diabetes)。

また、α-リノレン酸、オメガ-6、および全多価不飽和脂肪酸(PUFA)の影響については証拠が非常に低品質であったため不明ではあるが、ほとんどまたは全く効果は認められなかった。

さらに、サブグループの研究では、4.4g/dを超える長鎖オメガ-3の用量は、2型糖尿病診断相対リスクが1.86と2倍弱高くなった(type 2 diabetes mellitus diagnosis relative risk 1.86, 0.08 to 44.89; 1 trial with 139 participants; HbA1c mean difference 0.61%, −0.44% to 1.67%; 2 trials with 53 participants; HOMA-IR mean difference 3.00, −2.78 to 8.78; 1 trial with 37 participants; plasma glucose mean 1.12, 0.04 to 2.19, mmol/L; 2 trials with 69 participants)。

研究デザインは、システマティックレビューとメタアナリシスで、対象となった報告は
83件の無作為化対照試験(主に長鎖オメガ-3の効果を評価)。

データソースは、Clinicaltrials.gov、Medline, Embase, Cochrane CENTRAL, WHO International Clinical Trials Registry Platform, Clinicaltrials.gov、および関連する系統的レビュー。統計分析は、相対リスクと平均差を用いたランダム効果メタアナリシスと感度分析が含まれ、研究の偏は“Funnel plots”で評価している。

2型糖尿病は、血糖コントロールが悪化して異脂肪血症(高トリグリセリドおよびより低濃度のHDLコレステロール)を引き起こし、インスリンの産生および作用欠陥が原因で発生する。糖尿病の予防および2型糖尿病患者に総脂肪と飽和脂肪酸摂取の減量と、多価不飽和脂肪酸に置き換えることが推奨されている。

PUFAには、オメガ3、オメガ-6、およびオメガ-9脂肪酸が含まれる。オメガ3脂肪酸は、一般的に魚油に含まれるエイコサペンタエニン酸やドコサヘキサエイン酸などの長鎖オメガ-3脂肪酸、およびいくつかの植物油(亜麻仁および菜種またはカノーラを含む)に含まれるα-リノレン酸を含む。多くの植物油はオメガ6脂肪酸、特にリノール酸が豊富。

イギリス政府は、すべての成人がPUFAとしてエネルギーの6.5%を消費することを推奨し、魚食を提案している。しかし、潜在的なメチル水銀のために、妊娠中および授乳中は制限される(1.2.)。アメリカ糖尿病協会は、長鎖オメガ-3、およびαリノレン酸を含まない魚の摂取量が多い地中海スタイルの食事を支持している。

しかし、糖尿病のコントロールに対する長鎖オメガ3脂肪酸の影響に関する懸念は長い間存在しており、実験的研究では、PUFAおよびオメガ3の補充と食事が有意に空腹時グルコースを上昇させることが示唆されている(3.4.)。メチル水銀と推奨閾値を超えるポリ塩化ビフェニールレベルは、魚介類および魚油サプリメントで報告されている。上昇した水銀レベルはインスリンシグナル伝達を中断し、空腹時グルコースを上げ、マウスモデルにおいて、有機汚染物質の体濃度はアメリカにおける糖尿病の有病率と相関している(5.)。

本研究結果は、オメガ-3、オメガ-6、または全PUFAを増加させることが、2型糖尿病の予防および治療に効果が無いことを示唆している。

出典文献
Omega-3, omega-6, and total dietary polyunsaturated fat for prevention and treatment of type 2 diabetes mellitus: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials
Tracey J Brown, Julii Brainard, Fujian Song, Xia Wang, Asmaa Abdelhamid, Lee Hooper,
BMJ 2019; 366 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.l4697 (Published 21 August 2019)
Cite this as: BMJ 2019;366:l4697

1.
National Institute for Health and Care Excellence
Cardiovascular disease: risk assessment and reduction, including lipid modification.NICE, 2014

2.
Nutrition Science Team
Government Dietary Recommendations: Government recommendations for energy and nutrients for males and females aged 1 – 18 years and 19+ years. Public Health England, 2016.

3.
Glauber H, Wallace P, Griver K, Brechtel G
Adverse metabolic effect of omega-3 fatty acids in non-insulin-dependent diabetes mellitus. Ann Intern Med1988;108:663-8. doi:10.7326/0003-4819-108-5-663 pmid:3282462CrossRefPubMedWeb of ScienceGoogle Scholar

4.
Vessby B, Karlström B, Boberg M, Lithell H, Berne C
Polyunsaturated fatty acids may impair blood glucose control in type 2 diabetic patients. Diabet Med1992;9:126-33. doi:10.1111/j.1464-5491.1992.tb01748.x pmid:1563246

5.
Chen YW, Huang CF, Tsai KS, et al
The role of phosphoinositide 3-kinase/Akt signaling in low-dose mercury-induced mouse pancreatic β-cell dysfunction in vitro and in vivo. Diabetes2006;55:1614-24. doi:10.2337/db06-0029 pmid:16731823
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遺伝学的な血清Caの高値は臨床学的に骨折予防効果はない [栄養の話題]

正常カルシウム値を有する集団において、血清カルシウムを増加させる遺伝的素因は、骨密度の上昇とは関連せず、骨折に対する臨床的に意味のある保護効果をもたらさないことが、カナダ・マギル大学のAgustin Cerani氏らの検討で示された。

脆弱性骨折は、生活の質と死亡率に影響を与えるために世界的な問題となっており、カルシウム補充は骨粗鬆症や骨折リスクを軽減するための予防として治療ガイドラインによって推奨されている。NHANESの研究では、アメリカ人の53%がカルシウムサプリメントを使用し、43%が毎日服用している。

しかし、正常なカルシウムレベルを有する個人において、血清カルシウムレベルの増加は骨ミネラル密度の増加と関連しておらず、骨折に対する臨床的な保護を提供しない。最近のメンデリアンランダム化分析でも、骨折リスクに対し、持続的な乳製品摂取による保護効果がないことも確認されている。5284

本研究は、Mendelian randomisation studyによって、血清カルシウム濃度の遺伝的増加が骨密度の改善と骨粗鬆症性骨折の減少に関連しているかを調査したもの。

61,079個体の血清カルシウム値のゲノムワイド関連メタ解析データを用いて、血清カルシウム値の遺伝的決定因子を同定した。次に、UK Biobank研究のデータを使用して、血清カルシウム値上昇の遺伝的素因と、平均カルシウム値が正常範囲の42万6,824例の骨密度(踵骨の超音波測定)との関連を評価。

さらに、平均カルシウム値が正常範囲の骨折症例76,549例と対照471,64例を含む24のコホートとUK Biobankのデータを用いて、骨折のゲノムワイド関連メタ解析を実施。

遺伝的に誘導された血清カルシウム値の標準偏差の上昇(0.13 mmol / Lまたは0.51 mg / dL)は、推定骨塩密度の増加 (0.003 g/cm2, 95% confidence interval −0.059 to 0.066; P=0.92)、および逆分散加重メンデルのランダム化分析における骨折リスクの低下 (odds ratio 1.01, 95% confidence interval 0.89 to 1.15; P=0.85)とは関連しなかった。 潜在的な多面的作用(pleiotropic effect)を探索するために、3つの感度分析を行ったがエビデンスは得られなかった。

さらに、従来の複数の研究では、カルシウム補充による血清カルシウムの増加は冠動脈疾患や心筋梗塞発症および死亡率リスクの増加と関連し(1.2.)、脳卒中リスクの増加とも関連していることが示唆されている(3.4.)。

一般的な集団において、長期間カルシウムサプリメントを使用する広範な努力が骨の健康増進に実質的な影響を与える可能性が低いことを示唆している。さらに、同じ遺伝的素因に由来する血清カルシウムの増加が冠状動脈疾患のリスクの増加に関連していることを考えると、カルシウム補充は利益よりも多くのリスクを提供する可能性が高い。

カルシウムは多くの生物学的プロセスに不可欠であり、血清濃度は厳しく調節されています。排泄量に対する補充は必要ですが、必要なカルシウム量は結論は出ていません。

但し、本研究では、カルシウムレベルと研究結果との線形効果を仮定し、正常な血清カルシウムレベルの一般集団の個人を対象としてテストしている。著者は「生涯にわたる遺伝学的に誘導された血清カルシウムの増加が、長期的なカルシウム剤の補充の効果をどの程度再現するかは不明である」と、述べている。

つまり、正常な血清カルシウムレベルの個人におけるさらなる増加の効果に関する洞察を提供したものであり、骨粗鬆症を発症した者は含まれない。したがって、本研究結果によって、低カルシウム血症を含むカルシウム補充の影響を踏まえた骨ミネラル密度と骨折リスクに関する洞察は得られないことに留意する必要があると、考えられる。


出典文献
Genetic predisposition to increased serum calcium, bone mineral density, and fracture risk in individuals with normal calcium levels: mendelian randomisation study
Agustin Cerani, Sirui Zhou, Vincenzo Forgetta, et al.,
BMJ 2019; 366 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.l4410 (Published 01 August 2019)
Cite this as: BMJ 2019;366:l4410

二次文献
1.
Reid IR, Gamble GD, Bolland MJ.,
Circulating calcium concentrations, vascular disease and mortality: a systematic review. J Intern Med2016;279:524-40. doi:10.1111/joim.12464. pmid:26749423

2.
Larsson SC, Burgess S, Michaëlsson K.,
Association of Genetic Variants Related to Serum Calcium Levels With Coronary Artery Disease and Myocardial Infarction. JAMA2017;318:371-80. doi:10.1001/jama.2017.8981. pmid:28742912

3.
Foley RN, Collins AJ, Ishani A, Kalra PA.,
Calcium-phosphate levels and cardiovascular disease in community-dwelling adults: the Atherosclerosis Risk in Communities (ARIC) Study. Am Heart J2008;156:556-63. doi:10.1016/j.ahj.2008.05.016. pmid:18760141

4.
Rohrmann S, Garmo H, Malmström H, et al.,
Association between serum calcium concentration and risk of incident and fatal cardiovascular disease in the prospective AMORIS study. Atherosclerosis2016;251:85-93. doi:10.1016/j.atherosclerosis.2016.06.004 pmid:27289190

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グルコサミンサプリメントの習慣的使用は心血管疾患のリスク低下に関連する [栄養の話題]

変形性関節症などによる、関節痛の患者に対するグルコサミンの有効性については、議論が続いている。一方、疫学的研究による新たな証拠によって、グルコサミンが心血管疾患 (CVD) を予防する可能性が示唆されている。

グルコサミンは、ほとんどのヨーロッパ諸国においては厳密に規制されており、処方箋が必要となっている。しかし、アメリカやオーストラリア、および日本などの他の国では栄養補助食品として人気があり、大人の約 20% が毎日消費している。

研究デザインは、イギリスバイオバンクにおける前向きコホート研究。参加者は、心疾患のない466, 039名について、グルコサミンが含まれる、サプリメント使用に関するアンケートを実施。2006年から2010年に登録され、2016年まで継続。メインアウトカムは、CVD 死、冠動脈心疾患、脳卒中などを評価。

フォローアップの中央値7年間に、10,204件のCVDイベントが発生。3,060名がCVD死亡、5,745件の冠動脈心疾患イベント、および3,263件の脳卒中イベントがあった。

年齢、性別、体格指数、人種、生活習慣、食事摂取、薬物使用、および他のサプリメント使用の調整後、グルコサミンの使用は総 CVDイベントの低リスク(15%低下)と有意に関連していた(hazard ratio 0.85, 95% confidence interval 0.80 to 0.90)

また、CVD 死 (0.78、0.70 ~ 0.87)、冠動脈心疾患 (0.82、0.76 〜 0.88)、および脳卒中 (0.91、0.83 〜 1.00)のいずれも低下した。

さらに興味深いのは、CVD発症におけるグルコサミン使用と喫煙の間に一貫した関連性が認められたこと。グルコサミンの使用によってCVDリスクは逆相関し、現在の喫煙者ではリスク低減は37%、これは、非喫煙者の12% 、および以前の喫煙者の 18%よりも有意に大きかった。

喫煙者は非喫煙者と比較して、より高い炎症レベルによってCVDリスクが高いことが想定されるため、抗炎症効果によってリスク低減が大きくなったものと推測され、グルコサミンの使用と喫煙の間の関係は説明できるものと考えられている。

出典文献
Association of habitual glucosamine use with risk of cardiovascular disease: prospective study in UK Biobank
Hao Ma, Xiang Li, Dianjianyi Sun, Tao Zhou, Sylvia H Ley, et al.,
BMJ 2019; 365 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.l1628 (Published 14 May 2019)
Cite this as: BMJ 2019;365:l1628

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適度なナトリウムと高カリウム摂取で心血管死リスクは低下する [栄養の話題]

現在の、WHOによるナトリウムの1日の摂取量の勧告である<2.0g、およびカリウム>3.5gを検証した調査の結果、ナトリウムおよびカリウムの連結排泄カテゴリーの場合、ナトリウム排泄3-5g/日と高カリウム排泄 (コホートの 21.9%) を有する群で死亡および心血管イベントのリスクは最低であった。

研究デザインは、国際前向きコホート研究。高、中、低所得18カ国における都市と農村地域からサンプリング。参加者は103,570名。朝の空腹時尿を測定した。

主要転帰は、多変数 Cox 回帰を使用して、推定24時間尿中ナトリウムおよびカリウム排泄量 (尿中排泄量の測定は摂取量の代用手段)を測定し、全原因死亡率と主要な心血管イベントとの関連を評価した。ナトリウムの排泄量 <3 g/日を低度、3-5g/日を中等度、>5 g/日を高度と分類し、ナトリウムとカリウムを連結して6つのカテゴリー変数を生成。

推定ナトリウムおよびカリウム尿排泄量は、それぞれ4.93g/日および2.12g/日。中央値8.2年のフォローアップ後、7,884(6.1%)名が死亡または主要な心血管イベントを経験。

推定ナトリウム排泄量4.99g/日と比較して> 7g/日では、一次複合結果のハザード比1.23(95% 信頼区間1.12 〜 1.34)、全原因死亡率1.36(1.20 〜 1.53)、主要な心血管イベント1.20(1.08 〜 1.34)、心血管死のオッズ比1.49(95% 信頼区間1.21 〜 1.84)、および致死的脳卒中のハザード比1.76(95% 信頼区間1.28 〜 2.41)。

同様に、より低い推定ナトリウム排泄量 (< 3 g/日)でも、一次複合結果のハザード比1.19(95% 信頼区間1.09 〜 1.30)、全原因死亡率1.26(1.12 に 1.41)、主要な心血管イベント 1.19(1.06 〜 1.33)、心臓血管死 1.35(1.09 〜 1.69)、および脳卒中1.24(1.05 〜 1.46)と高リスクに関連していた。

全原因死亡率のハザード比を示したグラフでは、4g/日以下になると急上昇し、2gで約1.4、1g以下では2.6にまで上昇している。したがって、WHOによる1日の摂取量の勧告である<2.0 gでは死亡リスクは約1.4倍になってしまう。

一方、1.5 g /日未満の推定カリウム排泄量と比較して、3 g/日では多変量解析の結果、心血管イベントおよび死亡リスクは0.83(0.73~0.94)であり、高カリウム排泄量で低くなった。この関連性は、死亡リスクのハザード比0.71(0.60 〜0.85)で、主要な心血管イベントのハザード比の0.87(0.75 〜 1.02)よりも低かった。

尚、癌では、ナトリウムもカリウムも、摂取量との関連性は認められなかった。

また、調査結果から、当然ながら、低ナトリウム摂取量<2 g/日と高カリウム摂取量>3.5 g/日の同時標的は極めて稀であることが示唆されている。

現在の、ナトリウム摂取量の目標に関する公衆衛生政策は、主として、血圧に対するナトリウムとカリウムの摂取量の変化による関係を評価したもので、小規模で短期の臨床試験に基づいている。<2.7 g/日および>5 g/日のナトリウム摂取量に関連付けられている心血管リスクの増加は、特に高血圧との関係であるように思われる。

但し、余計なお世話ながら、血漿ナトリウムおよびカリウムが異常値となる疾患ではそれぞれの問題を考慮しなければならない。

出典文献
Joint association of urinary sodium and potassium excretion with cardiovascular events and mortality: prospective cohort study
Martin O’Donnell, Andrew Mente, Sumathy Rangarajan, et al.,
BMJ 2019; 364 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.l772 (Published 13 March 2019)
Cite this as: BMJ 2019;364:l772

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慢性的な赤肉食は全身のトリメチルアミン N-オキシドを増加させる [栄養の話題]

トリメチルアミンN-オキシド(TMAO)は、アテローム硬化性心疾患の病因におけるメカニズム的な関連性を有する腸内微生物生成代謝産物。さらに、血漿TMAOレベルの上昇は、心血管疾患(CVD)発症、CVD有害事象、脳卒中のリスクを有する被験者で観察される。

本研究では、赤肉、白肉、または非食肉タンパク質が TMAO 代謝に及ぼす影響を無作為化された食事介入によって調べている(all meals prepared in metabolic kitchen with 25% calories from protein) 。TMAOおよびその他のトリメチルアミン (TMA) 関連代謝産物は、各食餌期間の終了時に定量。

カルニチンとコリンは、腸内細菌叢に依存する動脈硬化代謝産物の生成のための主要な栄養素前駆体であり、赤肉に富む食事はTMA のためのコリンおよびカルニチン栄養前駆体の両方のより高い含量を有する。

食餌性赤肉の中止は、4週間以内に血漿 TMAO を減少させる。また、食物飽和脂肪は TMAO およびその代謝産物に影響を与えなかった。

補足
栄養学や疫学において、赤肉(red meat)とは、牛、豚、羊、馬、やぎ、熊、うさぎなどの哺乳動物全般の肉を意味し、鶏肉および魚は白肉と呼ばれる。一般的に呼ばれている、脂肪が少ない「赤身肉」のことではない。因みに、米国農務省による分類では、ミオグロビンのレベルが 65% 以上含まれるものを赤身肉としている。

出典文献
Impact of chronic dietary red meat, white meat, or non-meat protein on trimethylamine N-oxide metabolism and renal excretion in healthy men and women 
Zeneng Wang, Nathalie Bergeron, Bruce S Levison, et al.,
European Heart Journal, ehy799, https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehy799

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高脂肪食の摂取は視床下部における炎症応答を活性化する [栄養の話題]

食餌誘発性肥満では、長鎖飽和脂肪は視床下部でTLR4および小胞体ストレス依存性炎症反応を引き起こし、食物摂取およびエネルギー消費を制御するニューロンに対して重度の損傷を与える。

体重の恒常性は、身体のエネルギー状態を感知するニューロンと食物摂取およびエネルギー消費を調整するエフェクターニューロンとの複雑な相互作用に依存している。

身体のエネルギー状態を感知するニューロンの多くは視床下部に存在し、全身エネルギー貯蔵の短期および長期変動を示す循環ホルモンおよび栄養素に応答するように設定されている。

この研究では、マウスに高脂肪食を与え、リアルタイムPCR、イムノブロット、免疫蛍光法、透過電子顕微鏡、および代謝測定を用いて分子および構造を調べている。

その結果、高脂肪食の摂取は他の脳室領域の変化に先立ち、正中隆起に炎症性サイトカインおよび脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現を増加させた。正中隆起β1細胞の構造的組織の早期喪失を引き起こし、BDNFの免疫中和によって、正中隆起の血液/脊髄液界面の食事誘発機能損傷と食餌誘導性視床下部炎症を悪化させて体重を増加させる。

脳由来の神経栄養因子は損傷に対して早期に防御するが、大量の食物脂肪が持続的に消費されるとその機能が失われる。

出典文献
Dietary fats promote functional and structural changes in the median eminence blood/spinal fluid interface—the protective role for BDNF
Albina F. Ramalho, Bruna Bombassaro, Nathalia R. Dragano, et. al.,
Journal of Neuroinflammation201815:10
https://doi.org/10.1186/s12974-017-1046-8

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ω-3脂肪酸の摂取量と緑内障リスクの関連性 [栄養の話題]

アメリカにおける、多価不飽和脂肪酸(特にω-3脂肪酸)の日常摂取量と緑内障の罹患率との関連性について調査した研究で、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸摂取量の増加は緑内障のリスク低下と関連していた。しかし、より高い四分位数での全不飽和脂肪酸摂取量では緑内障リスクは有意に上昇した。

研究は、3865名を対象にした横断的集団調査。

エイコサペンタエン酸の毎日の食事摂取量の増加は、オッズ比0.06(OR, 0.06; 95% CI, 0.01-0.87)。ドコサヘキサエン酸も、OR、0.06(OR, 0.06; 95% CI, 0.01-0.87)と、オッズ比の有意な低下と関連していた。

しかし、総食餌性多価不飽和脂肪酸の第2四分位のORは2.84(95% CI, 1.39-5.79)、および第3四分位のOR2.97(95% CI, 1.08-8.15),95%CI、1.08-8.15)と、より高い四分位数における全不飽和脂肪酸摂取量の日常レベルでは緑内障罹患率は有意に上昇した。

これらの知見は、ω-3脂肪酸(エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸)の緑内障に対する作用を評価するためには、縦断研究または無作為化臨床試験が必要であることを示唆している。

出典文献
Association of Dietary Fatty Acid Intake With Glaucoma in the United States
Ye Elaine Wang, Victoria L. Tseng, Fei Yu, et al.,
JAMA Ophthalmol. Published online December 21, 2017. doi:10.1001/jamaophthalmol.2017.5702


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赤肉による死亡リスク増加はヘム鉄・硝酸/亜硝酸塩が関与する [栄養の話題]

赤肉の摂取による健康上のリスク増加は、ヘム鉄・硝酸/亜硝酸塩が関与している。一方、家禽や魚などの白肉はリスクを低減する。

アメリカの6つの州と2大都市圏における、人口ベースのコホート研究(“dietary data of the NIH-AARP Diet and Health Study食餌のデータと健康調査” )
(しつこいようだが、「diet;ダイエット」とは食餌のことで、痩せるための行為ではない。)

参加者はAARPメンバーの536, 969名(ベースラインで50-71歳)。

赤肉 (牛肉、子羊、豚肉) および白肉 (家禽・魚)、ヘム鉄、硝酸塩/亜硝酸塩の全ての摂取量をアンケートに基づいて処理し、カロリー調整摂取量の最低5番目を使用してcox 比例ハザード回帰モデルで推計。主要評価は、フォローアップ期間の全原因死亡率の測定。

赤肉の最高摂取量対最低5番目とのハザード比1.26(95% confidence interval 1.23 to 1.29)。死亡率の増加は、アルツハイマー病による死亡を除く、9種類の原因による死亡率で観察されたが、慢性肝疾患は特に高かった (hazard ratio 2.30, 1.78 to 2.99)。

白肉の摂取量の最も高いカテゴリーの人々は最低レベルと比較して、全原因死亡率リスクが25% 減少し、慢性肝疾患ではハザード比0.32(hazard ratio 0.32, 0.24 to 0.42)で、68%減少した。この傾向は未処理の白肉で特に強かった。

全体的な死亡率リスクは、ヘム鉄の高摂取量で増加し (最高対最低第五のハザード比 1.15;1.13 to 1.17)、原因では、癌およびその他の未知の原因10%、腎臓病34%。

加工肉の硝酸摂取量に関連するリスク増加は、糖尿病のハザード比1.39(hazard ratio 1.39, 1.24 to 1.55)、呼吸器疾患 1.38(1.29 to 1.48)、腎臓病 1.35(1.16 to 1.58)。

加工赤肉によるヘム鉄と硝酸/亜硝酸塩の摂取量は、ほぼ全ての原因による(アルツハイマー病による死亡を除く)死亡率と独立した関連付けが示唆された。

従来の研究でも、加工肉は、特に冠状動脈性心臓病、脳卒中、および糖尿病のリスクを高めることが示されている。これは、ナトリウム、硝酸塩、および処理された肉の亜硝酸塩の高い含有量に起因している。

ヘム鉄と硝酸/亜硝酸はプロオキシダントであり、酸化ストレスバイオマーカーと脂質過酸化を誘発するため、臓器の酸化的損傷や炎症を促進し、糖尿病、心血管疾患、および癌などに関与する。

また、硝酸塩/亜硝酸塩の代謝はn-ニトロソ化合物の形成に密接に関連している。n-ニトロソ化合物は、発癌、冠状動脈性心臓病やインスリン抵抗性のリスクを高めることが示されている, n-nitrosohemaoglobin と n-nitrosomyoglobin は、ヘモグロビンとミオグロビンと亜硝酸塩の反応の結果として形成される、また、一酸化窒素は、これらのヘムタンパク質と直接反応して n-ニトロソ化合物を形成する。

因みに、野菜には亜硝酸および硝酸塩が多く含まれており、口腔内のバクテリアや胃酸と還元酵素が反応して亜硝酸になり、肉や魚の第2級アミン(ジメチルアミン)と反応して強力な発癌物質であるニトロソアミン類に変化する。このジメチルアミンは加熱によって含有量が増加し、焼きサンマでは17倍にも増加する。ビタミンCはこの反応を抑制するため新鮮な野菜では安全であるが、古ずけの漬け物と焼き魚などを組み合わせて食べると強力な発癌物質が作られることになる。昔、東北地方で胃癌が多かったのは、漬け物の塩分が原因ではなく、ニトロソアミンであると言われている。 

補足
栄養学や疫学において、赤肉(red meat)とは、牛、豚、羊、馬、やぎ、熊、うさぎなどの哺乳動物全般の肉を意味し、鶏肉は白肉と呼ばれる。一般的に呼ばれている、脂肪が少ない「赤身肉」のことではない。因みに、米国農務省による分類では、ミオグロビンのレベルが 65% 以上含まれるものを赤身肉としている。

出典文献
Mortality from different causes associated with meat, heme iron, nitrates, and nitrites in the NIH-AARP Diet and Health Study: population based cohort study
Arash Etemadi, Rashmi Sinha, Mary H Ward, et al.,
BMJ 2017; 357 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.j1957 (Published 09 May 2017)
Cite this as: BMJ 2017;357:j1957

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VD3とカルシウムサプリメントは高齢女性の癌リスクを減少させない [栄養の話題]

健康な閉経後女性を対象にした無作為化二重盲検プラシーボ対照試験の結果、ビタミン D3とカルシウムの補充は全てのタイプの癌の発生リスクを減少させなかった。

参加者は、2303 名(55 歳以上, 平均年齢65.2 歳 [SD、7.0])。

治療群1156名(2000 IU/d of vitamin D3 and 1500 mg/d of calcium)、プラシーボ群 1147名。

主要評価項目は、カプラン・マイヤー生存分析、コックス比例ハザードモデルを用いて評価。非黒色腫皮膚癌を除く、全てのタイプの癌の発生率について4年間フォロー アップ。

血清 25-ハイドロキシビタミンD の平均レベルはベースラインで32.8 ng/mL、1 年後、治療群は43.9 ng/mL、プラシーボ群は31.6 ng/mL。

新規の癌発生者は、治療群45 (3.89%)、プラシーボ群64 (5.58%)。差は1.69%(95% CI, −0.06% to 3.46% ; P =0 .06)。

4年以上における“Kaplan-Meier incidence”は、治療群 0.042 (95% CI, 0.032 to 0.056)、プラシーボ群0.060 (95% CI, 0.048 to 0.076 ; P = 0 .06)。

未調整の Cox 比例ハザード回帰でハザード比 0.70 (95% CI, 0.47 to 1.02)。

研究に関連する有害事象として、腎結石が治療群で16名、プラシーボ群では10名。高血清カルシウム濃度が、それぞれ6名、2名。

低ビタミンD が癌発生リスクを高める可能性があるとの考えから実施された研究ですが、結果は否定。

ついでに言えば、閉経後の高齢女性における骨粗鬆症や骨折予防にも、ビタミンDやカルシウムの補充は効果が無い。

出典文献
Effect of Vitamin D and Calcium Supplementation on Cancer Incidence in Older Women
A Randomized Clinical Trial
Joan Lappe, Patrice Watson, et al.,
JAMA. 2017;317(12):1234-1243. doi:10.1001/jama.2017.2115

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心臓病・脳卒中・2 型糖尿病死亡率と食餌因子との関係 [栄養の話題]

心臓病・脳卒中・2 型糖尿病の推定死亡率に関連する、10 種類の食餌因子の最適摂取量とは?。
“Question What is the estimated mortality due to heart disease, stroke, or type 2 diabetes (cardiometabolic deaths) associated with suboptimal intakes of 10 dietary factors in the United States?”
因みに、“diet”とは食餌のことで、痩せるための行為ではない。

この報告では、2012年の調査の結果、食餌因子の摂取量は 318,656件の心代謝(cardiometabolic)による死亡の45.4%に関連付けられると推定(出典は、アメリカ医師会雑誌)。

結論として、Cardiometabolic死亡率の増加に関連する食餌因子は、過剰なナトリウム摂取、ナッツ/種子の摂取不足、加工肉の大量摂取、およびシーフードのオメガ 3脂肪酸の低摂取量に関連すると推定された。

推定された食餌因子
高ナトリウム:死亡数 66,508名、全死亡数の9.5%に関連
ナッツ/種子の摂取不足:59, 374名、8.5%
シーフードomega-3脂肪の低摂取量:54, 626名7.8%
野菜の低摂取:53, 410名7.6%
砂糖入り甘味飲料(sugar-sweetened beverages ;SSBs)の高摂取量:51, 694名7.4%

2002 年から 2012 年において、人口調整後cardiometabolicによる年間あたり死亡が26.5%減少。

減少に関連付けられた因子は
多価不飽和脂肪酸:相対変更−20.8% (95% UI, −18.5% to −22.8%)
ナッツ/種子:−18.0% (95% UI, −14.6% to −21.0%)
SSBs:−14.5% (95% UI, −12.0% to −16.9%)

増加に関連した最大因子は未処理の赤身肉:+14.4% (95% UI, 9.1%-19.5%)

出典文献
Renata Micha, Jose L. Peñalvo, Frederick Cudhea, et al.,
Association Between Dietary Factors and Mortality From Heart Disease, Stroke, and Type 2 Diabetes in the United States.
JAMA. 2017;317(9):912-924. doi:10.1001/jama.2017.0947
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食品はRAの症状を良くも悪くもすると報告 [栄養の話題]

RA(関節リウマチ)の患者に対し、食品の15% が有益であると同時に、19%が悪化させると報告。

ブルーベリーと魚は11.1%改善し、デザートおよび砂糖入りソーダは12.4%悪化させる。

カフェインを含む飲料は5% 未満の症状に影響をおよぼす。カフェインが細胞外アデノシン阻害作用を介して治療薬であるメトトレキサートの効果減少につながるといわれているが、意見は分かれており、定かではない。

この報告は、“RA Sequential Study”に登録された 1,400名の患者から300名を対象として、20品目の食品について調査している。しかし、自己申告を基にした後ろ向き観察研究であることに限界がある。

しかし、「栄養シグナル」は遺伝子さえも改変させることが分かってきており、栄養素は従来の認識以上に疾患の症状に影響を与える可能性があるものと予想されるので、今後の詳細な研究が期待される。

出典文献
Sara K. Tedeschi, Michelle Frits BA, Jing Cui, Zhi Zack Zhang MS,
Diet and rheumatoid arthritis symptoms: survey results from a rheumatoid arthritis registr.
Arthritis Care & Research, 2017; DOI:10.1002/acr.23225.

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高蛋白質食による減量はインスリン感受性を低下させる [栄養の話題]

34名の閉経後肥満の女性(BMI 30以上)を対象にして実施された、小規模な研究の結果で、高蛋白質食による減量療法(Weight Loss Therapy)は、筋のインスリン感受性を減少させたと報告されています。この結果によって、高蛋白食は代謝機能に悪影響を及ぼし、2 型糖尿病の発症に関与する主要な病態生理学的メカニズムを改善するための障害となる可能性があると指摘されています。

減量中の高蛋白質食の摂取は組織を維持するために重要であると一般に信じられ、閉経後女性を含む高齢者のサルコペニアのリスク低減に寄与するとも考えられています。しかし、高蛋白食によるインスリン感受性の悪化と利点をトレードオフする必要があります。

尚、参加者は、脂肪や炭水化物の量は同等で、同様の基本食事を受け取っています。参加者は、コントロールと、低カロリー食蛋白質0.8g/kg 体重/日、および1.2 g 蛋白質/kg 体重/日の高蛋白質摂取の3グループに無作為に割り付けられ、28週間実施。

両減量グループは、体重と体組成に違いは無く、体重は10%減少。肝内のトリグリセリド、腹腔内脂肪組織、基礎インスリンなど、他のパラメーターに差は無し。

但し、サンプル数が少なく、閉経後の女性のみを対象にしているため、一般化はできません。

しかし、以前に紹介した「低炭水化物高蛋白食は動脈硬化を促進させると報告 2015.2.4.」でも記しましたが、マウスによる実験では、低炭水化物高蛋白食(LCHF)は動脈硬化(心臓の冠動脈)を促進させます。

LCHFでは、循環血液中の 血管内皮前駆細胞 (Sca1+ Flk1+) 数を減少させ、血管再生能力のマーカーである骨髄および末梢血の血管内皮前駆細胞 (Epc) の数が大幅に削減します。

LCHPは、Epcの動員、増殖、生存に重要である、セリンスレオニンキナーゼ活性化(リン酸化) Akt の下位レベルも抑制します。

LCHPを与えられたマウスでは、大動脈動脈硬化がより多く発症し、新しい血管を生成する能力が低下しました。これらの徴候は、酸化ストレス、炎症性メディエーター、血清コレステロール値の変化では説明できません。あくまでも、マウスによる結果ですが、代謝は複雑です。
Foo SY et al. Vascular effects of a low-carbohydrate high-protein diet. Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Sep8;106(36):15418-23.

出典文献
Source Reference: Smith GI, et al.,
High-protein intake during weight-loss therapy eliminates the weight-loss-induced improvement in insulin action in obese postmenopausal women.
Cell Reports 2016; DOI: 10.1016/j.celrep.2016.09.047.

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幼児期の卵・ピーナッツ摂取はアレルギーリスクが低い [栄養の話題]

幼児への食餌によるアレルギー食品導入のタイミングは、アレルギーや自己免疫疾患のリスクに影響を与えますが、その証拠は不十分です。 

この報告は、146の研究、204 タイトルから十分な証拠があった5 試験を抽出してメタ分析。

データソースは、MEDLINE, EMBASE, Web of Science, CENTRAL, および LILACS databases。 対象となった研究には介入試験と観察研究が含まれ、出生の年におけるアレルゲン食品導入のタイミングを評価し、アレルギー感作や自己免疫疾患を調査。

その内容は、喘鳴、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、アレルギー感作、Ⅰ型糖尿病、セリアック病、炎症性腸疾患、自己免疫性甲状腺疾患、若年性関節リウマチ。

生後4~6ヶ月で卵を導入した場合、卵アレルギーのリスク比は0.56でほぼ半減 (risk ratio [RR], 0.56; 95% CI, 0.36-0.87; I2=36%; P=0.009)。

生後4~11ヶ月でピーナッツを導入した場合、ピーナッツアレルギーのリスク比は0.29で、71%減少(RR, 0.29; 95% CI, 0.11-0.74; I2=66%; P=0.009)。

低確実性の証拠で、早期の魚の導入はアレルギー性鼻炎の低リスクに関連し、高確実な証拠として、グルテン導入のタイミングは、セリアック病リスクに関連しない。

この調査結果は、一般的な認識には問題があることを示していますが、遺伝的素因の有無による違いなどは、この文献の要約のみでは不明です。

一般的な常識の誤りは、以前に紹介した「木の実食品と発酵食品はアトピー性皮膚炎の悪化因子2014.8.1」、にも見られます。

出典文献
Despo Ierodiakonou, Vanessa Garcia-Larsen, Andrew Logan, et al.
Timing of Allergenic Food Introduction to the Infant Diet and Risk of Allergic or Autoimmune Disease.
A Systematic Review and Meta-analysis.
JAMA. 2016;316(11):1181-1192. doi:10.1001/jama.2016.12623.

追伸
本ブログは休止中でしたが、その後も、「休止中の独り言」のカテゴリーでたまに投稿していました。
この度、3冊目の出版もできましたので、今後は興味深い文献などを少しずつ書くつもりです。

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酸化ストレスは癌転移を抑制し抗酸化剤は癌転移を促進する [栄養の話題]

固形癌細胞は一般的に血液に入ることで全身に広がりますが、遠隔転移を形成するのには非常に非効率的で、この理由は良く解っていません。メラノーマの細胞を静脈内および脾臓内移植した実験では腫瘍を形成する細胞は極めて少なく、血液中や内臓内のメラノーマ細胞は皮下腫瘍では観察されていない酸化ストレスを受けていることが示唆されました。

転移性黒色腫においては、葉酸経路におけるNADPH生成酵素の増加によって酸化ストレスに耐える能力を増加させる可逆的代謝変化を受けていました。

抗酸化剤は、NSGマウスで癌の遠隔転移を促進しました。

低用量メトトレキサート、ALDH1L2およびMTHFD1のノックダウンによる葉酸経路の阻害は、有意に同マウスにおける皮下腫瘍の遠隔転移を阻害しました。

このように、酸化ストレスはin vivo(体内)でメラノーマ細胞の遠隔転移を制限します。

世間では、抗酸化剤が盲目的にもてはやされていますが、活性酸素種にも多くの重要な働きがあります。酸化的か抗酸化的かは、相手によって変化することにも留意すべきです。

葉酸塩は、葉酸塩-メチオニン代謝系(one-carbon metabolism)、およびDNAの複製や細胞分裂への働きを介して、癌発症に関与する可能性が示唆されています。

・Kim YI (2004). Will mandatory folic acid fortification prevent or promote cancer? Am J Clin Nutr 80(5): 1123-1128. [PubMed abstract]

・Kim YI (1999). Folate and carcinogenesis: evidence, mechanisms, and implications. J Nutr Biochem 10(2): 66-88. [PubMed abstract]

ノルウェーにおける臨床試験の結果では、虚血性心疾患患者3,411名に対して、葉酸(800 μg/日)+ビタミンB12(400 μg/日)を39カ月間(中央値)補充した結果、補給しない場合と比較して癌の発生率が21%、癌による死亡率が38%増加したと報告されています。癌の発症とは無関係であるとする多くの報告もありますが、葉酸の補充によって癌のリスクが上昇する可能性も留意する必要があります。

・Ebbing M, Bønaa KH, Nygård O, Arnesen E, Ueland PM, Nordrehaug JE, et al. (2009). Cancer incidence and mortality after treatment with folic acid and vitamin B12. JAMA 302(19): 2119-2126. [PubMed abstract]

葉酸に関する詳しい説明は、厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』 「統合医療」情報発信サイトを参考にしてください。

補足
メトトレキサートは、ジヒドロ葉酸レダクターゼと結合することで、ジヒドロ葉酸のテトラヒドロ葉酸への還元を阻害します。その結果、TMPとプリン塩基の合成、およびアミノ酸代謝を阻害します。メトトレキサートは、急性白血病、慢性リンパ性白血病、小児白血病などの白血病、および乳癌、頭頚部腫瘍などへの抗腫瘍効果を有しています。

出典文献
Elena Piskounova, Michalis Agathocleous, Malea M. Murphy, Zeping Hu, et al.,
Oxidative stress inhibits distant metastasis by human melanoma cells
Nature (2015) doi:10.1038/nature15726

サプリメントに起因する救急受診は年間23000件 [栄養の話題]

アメリカでは、サプリメントに関連する有害事象による救急受診が年間に23,005件 (95% confidence interval [CI], 18,611 to 27,398)、入院が2,154件 (95% CI, 1342 to 2967)と推定されています。

全米63救急部門の2004年から2013年までのサーベイランスデータを使用して推計。

単一サプリメント(ハーブや栄養補完製品)関連有害事象が65.9%(95% CI, 63.2 to 68.5)で、微量栄養素(ビタミンやミネラル)が31.8%(95% CI, 29.2 to 34.3)でした。

減量(weight loss) やエナジー製品に関連する、動悸、胸痛、または頻脈などの有害事象は71.8% (95% CI, 67.6 to 76.1)。58.0% (95% CI, 52.2 to 63.7)が20~34歳。

65歳以上では、 サプリメント関連の錠剤による誘発性嚥下障害または窒息による救急受診が37.6% (95% CI, 29.1 to 46.2)、微量栄養素によるものが 83.1% (95% CI, 73.3 to 92.9)でした。

出典文献
Andrew I. Geller, Nadine Shehab, Nina J. Weidle, et al.,
Emergency Department Visits for Adverse Events Related to Dietary Supplements
N Engl J Med 2015; 373:1531-1540October 15, 2015DOI: 10.1056/NEJMsa1504267

カルシウム摂取量の増加には骨密度減少予防効果は認められない [栄養の話題]

食物源およびサプリメントからのカルシウム摂取量の増加による骨ミネラル密度(BMD)の変化を調べた研究の結果、骨密度は増加したものの、骨折リスクを減少させる程の効果は無いと報告されています。

この研究は、Medline, Embase, Pubmedなどから、59の適格なランダム化比較試験を同定してメタ分析したものです。食物源からのカルシウム摂取量の増加(n=1,533)、サプリメント(n=12,257)。

食物源のBMD増加は、股関節および体全体の1年後0.6-1.0% 、腰椎および大腿骨頚部の2年後0.7-1.8%。前腕では差は無し。

カルシウムサプリメントは、5骨格部位1年後で0.7-1.8%の増加で、その後も同様。

また、BMD増加は、カルシウム単独vsビタミンD同時投与, ≧1000 vs <1000 mg/day, ≦500 vs >500 mg/day, >1000 vs <1000 mg/day, ≦500 vs >500 mg/day, およびベースライン時のカルシウム摂取量<800 vs >800 mg/dayの何れも同様。

結論として、骨密度の増加は1%弱から2%に過ぎず、骨そしょう症予防としてのカルシウム摂取の増量にはほとんど効果は無いと言えます。

高齢者では、少なくとも1000-1200 mg /日のカルシウム摂取量を維持することが推奨されてきました。しかしこの推奨量は、欧米における高齢者のカルシウム平均摂取量の700~900 mg /日に比べてかなり高い量です。

最近では、カルシウム摂取量の増加による僅かな骨折減少に対して、便秘などのマイナーな副作用だけではなく、重篤な副作用である心血管イベント、腎臓結石、および急性消化管症状による入院など、カルシウムサプリメントのリスクに対する懸念が浮上しています。

出典文献
Vicky Tai, William Leung, Andrew Grey, et al.,
Calcium intake and bone mineral density: systematic review and meta-analysis
BMJ 2015; 351 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h4183 (Published 29 September 2015)
Cite this as: BMJ 2015;351:h4183

抗酸化性食物の摂取量は年齢関連白内障リスクに逆相関する [栄養の話題]

食物中の抗酸化物質(総抗酸化能;TAC)は年齢関連白内障リスクを減少させ、その効果は食品によっても違いのあることが認められています(March 10, 2015 少し前の報告ですが)。

これまでの疫学研究では、食物中のすべての抗酸化物質と年齢関連白内障との関連は調べられていないようです。この研究は、食物中のTACと中高年女性の集団ベースのコホートにおける年齢関連白内障の発生率との関連を前向きに調査し、抗酸化剤の効果を確認したものです。

対象は、スウェーデンマンモグラフィコホート研究における30,607名の女性(49~83歳)。平均7.7年間フォローアップ。食物中のTACは、食品のデータベースを使用して、酸素ラジカル吸収能アッセイで分析し推定。

フォローアップ期間内に、4309名/234,371人年が年齢関連白内障を発症。TACの最高五分位と最低を比較した多変量速度比は0.87 (95% CI, 0.79-0.96; P for trend=0.03)。

主要なTACへの貢献食物は、野菜(44.3%)、全粒穀物(17.0%)、コーヒー(15.1%)でした。

出典文献
Julie Mares,
Food Antioxidants to Prevent Cataract
JAMA. 2015;313(10):1048-1049. doi:10.1001/jama.2014.15301.

妊娠前の良質な食事は子供の特定の先天性心臓疾患の発生リスクを低減する [栄養の話題]

妊娠前年度の良質な食餌は、生まれてくる子供の、心房中隔欠損などの心臓奇形のリスク低減に関連していたと報告されています。

国立先天異常予防研究における、多施設集団ベース(米国10カ所)のケースコントロール研究。対象者は、1997年から2009年に出産予定で、主要な非症候性先天性心疾患を持つ乳幼児の母親(n= 9885)と、健康な乳幼児の母親(n = 9468)。

妊娠のダイエット(食餌)スコア(the Diet Quality Index for pregnancy ;DQI-P)と、地中海ダイエットスコア。妊娠前年の母体の食事の質を四分位数によって分類し評価(最良の食事の四分位 ; Q4, 最悪の食事の質; Q1)。

心房中隔欠損は23%低下(OR 0.77, 95% CI 0.63 to 0.94)。conotruncal(円錐動脈幹)欠陥全体のリスク低下は24% (OR 0.76, 95% CI 0.64 to 0.91)、全体的なリスク低下は14% (OR 0.86, 95% CI 0.75 to 1.00)。

ファロー4徴のリスクは、Q4 vs Q1で37%低下(OR 0.63, 95% CI 0.49 to 0.80)。

但し、その他の主要な先天性心疾患では関連性はより弱い傾向でした。

出典文献
Lorenzo D Botto, Sergey Krikov, Suzan L Carmichael, Ronald G Munger, Gary M Shaw, et al.,
Lower rate of selected congenital heart defects with better maternal diet quality: a population-based study.
Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed doi:10.1136/archdischild-2014-308013

高ビタミンD療法は閉経後女性の骨密度・機能改善に効果無し [栄養の話題]

閉経後の女性に対する高用量コレカルシフェロール療法は、カルシウムの吸収は増加させて血清25(OH)Dレベルを30ng/mL以上に維持できましたが、骨密度、筋量、および筋機能への有益な効果は認められませんでした。

研究デザインは、無作為化二重盲検プラシーボ対照臨床試験。期間は、2010年5月1日から2013年7月31日。ウィスコンシン州マディソンの単一施設で実施。最終調査は8月8日。

対象は、ベースラインの25(OH)D レベルは14 ~27 ng/mLで、骨粗しょう症を発症していない75歳以下230名の閉経後女性。

介入は、毎日の白と月2回の黄色プラシーボ(N = 76)、毎日800 IUのビタミンD3と月2回の黄色プラシーボ(N = 75)、毎日白いプラシーボと月2回の50,000 IUのビタミンD3を(N = 79)の3群に分け、25(OH)Dレベルを30 ng/mL以上に維持。

カルシウムの吸収は、高用量群で1% (10 mg/d)増加しましたが、低用量では2%減少(P=0.005 vs high-dose arm)し、プラシーボ群でも1.3%減少(P=0.03 vs high-dose arm)しました。

しかし、脊椎、大腿骨頸部および骨幹部の骨密度、骨梁スコア、筋量、および“Timed Up and Go or five sit-to-stand test scores”の、何れの群にも差は認められませんでした。同様に、転倒の回数、身体活動、および機能にも群間に差を認めませんでした。

出典文献
Johnson, MS, Christina C. Lemon, et al.,
Treatment of Vitamin D Insufficiency in Postmenopausal Women.
JAMA Intern Med. Published online August 03, 2015. doi:10.1001/jamainternmed.2015.3874
A Randomized Clinical Trial ONLINE FIRST

クルクミンの投与は低酸素誘導脳浮腫を予防する [栄養の話題]

低酸素誘導脳浮腫(HACE)に対する、クルクミンの予防的効果を調べた研究で、低比重低酸素状態に曝露したラットの脳浮腫や炎症が消失して強力に改善したと報告されています。

ラットを、7620メートル25±1℃の低比重低酸素状態で24時間曝露する1時間前にクルクミン(100 mg / 体重kg)を投与してその効果を検証。

クルクミンの前投与によって、低酸素下における脳水分含量は(3.53±0.58湿潤-乾燥重量(W/D)比)コントロール(7.1±1.0 W/D ratio)に比べ有意に減少(p<0.001)。

経血管漏出についても、クルクミン投与は(136.2±13.24 relative fluorescence units per gram (r.f.u./g)コントロール(262.42±24.67 r.f.u./g)に比べ有意に減少。

さらに、クルクミンの投与によって、NF-κBの増加を抑制し(p<0.001) 、IL-1、IL-2、IL-18、TNF-α、および細胞接着分子(P-selectin and E-selectin)を減少させ、抗炎症性サイトカインであるIL-10を増加させました。

クルクミンは低酸素下において、Na+/K+-ATPaseとENaC レベルの発現上昇(p<0.001)に沿って血管内皮増殖因子 (hypoxia-inducible factor:VEGF)レベルを維持し、脳の低酸素誘導性因子(hypoxia-inducible factor:HIF) HIF-1 α レベルを安定化させました。

クルクミンは低酸素下において、脳ZO-1、 JAMC、 claudin 4、claudin 5 レベル(p<0.001)を回復させ、病理組織学的観察でも脳浮腫や炎症がないことが確認されました。

一般的にも良く知られているように、クルクミンはウコン(英名ターメリック)に含まれる代表的な成分であり、ポリフェノールの仲間です。クルクミンは植物自身の防御成分であり、カレーやたくあんの黄色の元となる色素です。最も消費量の多い食品の1であるとともに、サプリとしても多く出回っています。しかし、ウコンには牛肉に匹敵する鉄が含まれるため、慢性C型肝炎などで肝臓に炎症がある人では過剰な摂取によって炎症が悪化することや、急性肝障害を引き起こす原因としても最も多い食品であることに注意が必要です。

出典文献
SKS Sarada, M Titto, P Himadri, S Saumya, V Vijayalakshmi,
Curcumin prophylaxis mitigates the incidence of hypobaric hypoxia-induced altered ion channels expression and impaired tight junction proteins integrity in rat brain.
Journal of Neuroinflammation 2015, 12:113 doi:10.1186/s12974-015-0326-4
http://www.jneuroinflammation.com/content/12/1/113

補足
低酸素誘導性因子(hypoxia-inducible factor:HIF)の活性化は、様々な遺伝子の発現を誘導し、細胞を環境に対して適応させます。最近は、HIF が幹細胞の維持や炎症の制御、さらに虚血性疾患や癌の転移、治療抵抗性などにも関与していることが明らかになっています。

脳ZO-1・ JAMC・claudin
生体バリアを構成する血液脳関門の本体は、毛細血管内皮細胞間のタイト結合によるシールです。タイト結合は、体表を覆う上皮細胞や血管内腔を覆う内皮細胞の、細胞間の最も外側に存在する細胞間接着装置です。このタイト結合を構成するタンパクとして、クローディン(claudin)、(occuludin)、JAM(junctional adhesion moleccule)、ZO(zonulaocculudens)-1があります。

脳血液関門の機能的破綻は、脳浮腫、アルツハイマー病、多発性硬化症など、多くの中枢神経疾患の発症や悪化に関与しています。また、以前は、単に物質の通過を阻害する防御機能のみが認識されていましたが、最近では、選択的に物質を透過させることができるチャネルとして、細胞内への様々なシグナル伝達に関与していると考えられています。

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