実験的壊死性腸炎は新生児脳の神経炎症を誘発する [医学一般の話題]

壊死性腸炎 (NEC) は、主に早産の新生児に影響を及ぼす消化管疾患であるが、同時に、脳の細胞集団の形態の重篤な変化と炎症反応に関連し、未熟児だけでは説明できない神経発達遅延を引き起こす。

NECは、脳の特定の領域におけるニューロン数、オリゴデンドロサイト、および神経前駆細胞数の減少と関連していた。 炎症誘発性サイトカインのレベル、ならびに活性化ミクログリアおよびアストロサイトの密度が脳内で増加し、腸内の炎症誘発性サイトカインの増加およびNEC損傷の重症度とそれぞれ正に相関した。

回腸と脳における IL-6 レベルは正に相関した [p = 0.02, r = 0.61 (95% CI 0.14 から 0.85)]。同様に、回腸および脳における Tnfαのレベルにも正の相関が見られた [p = 0.01, r = 0.66 (95% CI 0.17 〜 0.89)]。

本研究の結果、実験的NEC が新生児脳の構造を損ない、アポトーシスや ER ストレスを含む細胞状態の変化を誘発して脳の特定領域における密度を変化させることを示している。これらの変化は、炎症性サイトカインの活性化によって媒介される脳内の抗炎症反応中に起こっており、腸内における神経炎症の重症度に比例する。

巨視的なデータでは、NEC仔の脳はコントロールと比較して皮質の厚さが減少していた。皮質の厚さはニューロン数と相関し、正常な神経発達は小児期における皮質の厚さの漸進的増加に関連する。早産児において、長期認知障害は、灰色および白色の皮質体積の減少と関連している。観察された皮質の厚さの違いはミエリン沈着の障害に起因する。本研究で、中脳、海馬、皮質下領域に髄鞘形成障害を持つマウス仔は、行動研究によって認知機能障害が確認されている。

以前の、超低出生体重児に対して行われた人口ベースの観察研究では、NECの出生児は重度の頭部成長障害のリスクが3倍増加することが示されていた。

また、Niñoらによって、NECマウス仔はミクログリアの活性化を伴う髄鞘形成障害および認知機能障害を発症することが示されている。 しかしこれまで、異なる脳領域における脳細胞の集団の密度、および恒常性に対するNECの局所効果の詳細は特徴付けられておらず、神経発達遅延の病因は部分的にしか知られていなかった。

本研究では、NECの新生児マウスモデルを用いて、特定の脳領域における脳細胞集団に生じる巨視的および微視的変化を評価するとともに、NECに続発する腸損傷の重篤度について検討している。

出典文献
Experimental necrotizing enterocolitis induces neuroinflammation in the neonatal brain
George Biouss, Lina Antounians, Bo Li, Joshua S. O’Connell, Shogo Seo, et al.,
Journal of Neuroinflammation201916:97
https://doi.org/10.1186/s12974-019-1481-9

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