ガドリニウム強調画像は椎間板炎症と関連しない [腰痛関連]

椎間板手術中に摘出されたディスク組織へのマクロファージ浸潤によって評価した炎症程度と、ガドリニウム強調MRI画像は関連せず、坐骨神経痛患者における椎間板ヘルニアまたは神経根の炎症の指標として信頼できないと報告されている。

後ろ向き観察研究。椎間板組織は119名の坐骨神経痛患者から採取。ガドリニウムによる増強は、74名の椎間板ヘルニア、26名の神経根で示された。

しかし、マクロファージによる炎症の程度と神経根またはヘルニアディスクのガドリニウム増強と関連しなかった。これらの結果は、Modicタイプ別に評価した場合も変化せず、Modic2型変化の存在とも関連は認められなかった。

T1強調像にガドリニウム造影剤を使用することで活動性の炎症領域が増強されるようです。例えば、MSの活動性病変部分は造影剤が蓄積して明るい領域として写されますが、、、。

出典文献
Gadolinium Enhancement Is Not Associated With Disc Inflammation in Patients With Sciatica
Djuric, Niek, Yang, Xiaoyu, Barzouhi, Abdelilah el, Ostelo, Raymond W.J.G., et al.,
Spine: June 15, 2019 - Volume 44 - Issue 12 - p E742-E748
doi: 10.1097/BRS.0000000000003004
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空軍パイロットの無症候性若年成人における脊髄MRI所見から読み解く事 [腰痛関連]

イタリア空軍アカデミー士官候補生を対象とする、無症候性若年成人(18~22歳)の脊髄MRIの評価では、350名中270名(77%)と、高率に異常所見が認められた。

106名 (30%)が少なくとも1椎間板の脱水を有し、47名(13%)が少なくとも 1椎間板の狭窄、176名(49%)が椎間板の膨隆、62名(18%)が椎間板の突出、28名(8%)が椎間板の脱出、45名(13%)が低レベルの椎間板脊椎症、および、これらの12名が脊椎関節脊椎症を示し、2名(<1%)が無症候性椎体骨折を有していた。

本論文では、高い加速力に曝されたパイロットにおいて、成人集団と同様の高いMRI所見が若い無症候性被験者の集団で検出されたことより、空軍アカデミーは、軍のパイロットを選択する際に候補生の脊椎疾患を排除することが重要であるとしている。

しかし、医学的には、これらの被験者について今後5年10年と長期間フォローする前向き研究が必要だろう。

飛行中の戦闘機による加速度が脊椎への負荷となって椎間板へダメージを与えることが確認された。したがって、作業やスポーツなどによる脊椎への負荷も同様に椎間板へのダメージとなることは予想される。しかし、そのことが直ちに腰痛の原因となるとは言えない。

従来、脊髄MRI所見における異常所見が無症候性の被験者で頻繁に検出されているように、椎間板の変形イコール腰痛症の発症とはならない。上記のような異常所見を示しながらも、全ての被験者が無症状であったことにこそ重要な問題点があると考えられる。

出典文献
High Prevalence of Spinal Magnetic Resonance Imaging Findings in Asymptomatic Young Adults (18–22 Yrs) Candidate to Air Force Flight
Romeo, Valeria, Covello, Mario, Salvatore, Elena, Parente, Chiara Anna, et al.,
Spine: June 15, 2019 - Volume 44 - Issue 12 - p 872-878
doi: 10.1097/BRS.0000000000002961

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抗ウイルス療法を受けた慢性C 型肝炎患者はパーキンソン病発症リスクが低い [免疫・炎症]

インターフェロン-α-2b およびリバビリンで治療したC 型肝炎ウイルス (HCV) 患者は、未治療の患者よりもパーキンソン病(PD)発症リスクが低いことが報告されている。この知見は、HCV がパーキンソン病の危険因子である可能性を支持するとともに、"抗ウイルス療法が罹患リスクを低減する可能性を示している。

台湾国民健康保険調査データベースによるコホート研究。分析した患者は合計188,152名。
PD の発症密度は処置群で、1000人- 年あたり 1.00 (95% CI, 0.85-1.15)、未処置群では1.39 (95% CI, 1.21-1.57)。

抗ウイルス療法のハザード比 (HR)は0.75(95% CI, 0.59-0.96)で、リスクは25%減少。5年間のフォローアップにおいて統計的有意性に達し、この利点はフォローアップ終了(最大11年)まで増加し続けた (HR, 0.71; 95% CI, 0.58-0.87)。

神経炎症はPDの病理学的に特徴的な所見として示唆されており、先天性免疫反応が PD においてニューロンの喪失をもたらす可能性がある。また、最近の研究では、C 型肝炎ウイルス (HCV) が中枢神経系に侵入する可能性があること、また、HCVおよびパーキンソン病 (PD) の両方において、炎症性バイオマーカーの過剰発現を共通に有していることが示されている。

さらに、B型肝炎ウイルスではなく、C型肝炎ウイルス粒子が中脳ニューロン - グリア共培養において、チロシンヒドロキシラーゼ(+)ニューロンの喪失を誘導することが見出され、ドーパミン細胞に対するHCVの神経毒性効果が示唆されている(Wu WY, et al.,2015)。

脳、血液細胞、肝臓における HCV の遺伝子型は多様であり、脳特異的変異を伴うウイルスは脳内で生存する可能性がある。これらの研究は、HCV 感染と PD 発生との関連の疫学的所見を支持する。さらに、インターフェロンは血液脳と血液脊髄障壁を通過することができることが確認されている。従って、抗ウイルス療法はHCV によって引き起こされる中枢神経系損傷を減少させる可能性がある。

出典文献
Association of Antiviral Therapy With Risk of Parkinson Disease in Patients With Chronic Hepatitis C Virus Infection
Wey-Yil Lin, Ming-Shyan Lin, Yi-Hsin Weng, et al.,
JAMA Neurol. Published online June 5, 2019. doi:10.1001/jamaneurol.2019.1368

Hepatitis C virus infection: a risk factor for Parkinson's disease.
Wu WY, Kang KH, Chen SL, Chiu SY, et al.,
J Viral Hepat. 2015 Oct;22(10):784-91. doi: 10.1111/jvh.12392. Epub 2015 Jan 21.

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早産児は成人期における虚血性心疾患リスクが高い [医学一般の話題]

スウェーデンにおける人口ベースのコホート研究によって、早産および早期産児は成人期における虚血性心疾患 (IHD)の高リスクと関連していたと報告されている。

以前の研究において、早産は高血圧および糖尿病のリスク増加に関連していると報告されていた。

参加者2,141,709名中女性は1,041,906 (48.6%)で、年齢は 30 ~ 43 歳。フォローアップ期間の3,090万人- 年に1,921人 (0.09%) がIHDの診断を受けた。

全期出産(39-41週)と比べた調整後ハザード比は、早産 (出生時妊娠年齢 < 37 週)が1.53 (95% CI, 1.20-1.94)、早期出産 (37-38週) が1.19 (1.01-1.40)と、早産ではリスクは53%増加した。

10万人- 年あたりのIHD の発症率は、女性15.16 対男性22.00で女性の方が低かったが、調整後ハザード比は、女性1.93; 95% CI, 1.28-2.90 対男性1.37; 95% CI, 1.01-1.84と、リスクは女性が高く、これらの関連は遺伝的要因や環境因子によっては説明できないようであった。

出典文献
Association of Preterm Birth With Risk of Ischemic Heart Disease in Adulthood
Casey Crump, Elizabeth A. Howell, Annemarie Stroustrup, et al.,
JAMA Pediatr. Published online June 3, 2019. doi:10.1001/jamapediatrics.2019.1327

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プロトンポンプ阻害剤の服用は死亡リスクの若干の上昇に関連する [薬とサプリメントの問題]

アメリカ退役軍人を対象とした縦断観察コホート研究の結果、プロトンポンプ阻害剤 (PPIs) を服用している患者では、10年間のフォローアップ期間に、1000人あたり45.20 の過剰死亡(95% confidence interval 28.20 to 61.40)が認められた。

循環系疾患17.47(95% confidence interval 5.47 to 28.80)、新生物12.94( 1.24 to 24.28)、感染性および寄生虫性疾患4.20(1.57 to 7.02)、および泌尿生殖器系疾患 6.25(3.22 to 9.24)。

PPI 曝露の累積持続期間と、循環系疾患、新生物、および泌尿生殖器系疾患による死亡リスクとの間には段階的な関係が見られる。

PPIsは処方箋または店頭薬として広く使用されている。しかし、過去数年間の証拠によると、PPIは、心血管疾患、肺炎、骨粗鬆症性骨折、クロストリジウム - ディフィシル感染症、急性腎臓障害、慢性腎臓病、認知症、および上部消化管癌などの重篤な有害事象に関連していることが示唆されている。

出典文献
Estimates of all cause mortality and cause specific mortality associated with proton pump inhibitors among US veterans: cohort study
Yan Xie, Benjamin Bowe, Yan Yan, Hong Xian, Tingting Li, Ziyad Al-Aly
BMJ 2019; 365 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.l1580 (Published 30 May 2019)
Cite this as: BMJ 2019;365:l1580
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