中性脂肪が高い高齢者ほど認知症リスクが低い [医学一般の話題]

中性脂肪レベルが高い高齢者ほど、アルツハイマー病のリスクが低いことが示唆されています。この研究では地域在住の高齢者を対象として、中性脂肪と認知症との関連を調査。

調査は、前向き縦断研究で、登録時に認知症や以前の心血管イベントのない65歳以上の成人を対象としたASPREEランダム化試験のデータを使用。

主要アウトカムは認知症の発症。その他には、複合的認知および領域固有の認知(全体的な認知、記憶、言語および実行機能、精神運動速度)の変化が含まれていた。 ベースラインの中性脂肪と認知症リスクとの関連性は、関連する危険因子を調整した Cox 比例ハザード モデルを使用して推定し、線形混合モデルを使用して認知変化を調査。

分析は、APOE-ε4 キャリア状態をさらに調整した利用可能な APOE-ε4 遺伝データを持つ参加者のサブコホートと、同様の選択基準が適用された外部コホート (UK Biobank)で繰り返された。

この研究の対象は、18,294人のASPREE参加者と68,200人のイギリスバイオバンク参加者が含まれた(平均年齢:75.1歳と女性66.9歳:56.3%と52.7%、 [IQR]トリグリセリド中央値:106[80-142]mg/dlと139[101- 193]mg/dl)。

追跡期間中央値6.4年と12.5年で、それぞれ823人および2,778人が認知症を発症。 ASPREEコホート全体において、トリグリセリド値が高いほど認知症リスクが低いことが示された(HR with doubling of TG: 0.82, 95% CI 0.72-0.94).。

所見は、APOE-ε4 遺伝データを持つ参加者のサブコホート (n=13,976) と UK Biobank コホートでも同様(HR was 0.82 and 0.83, respectively, all p≤0.01)。トリグリセリドが高いほど、時間の経過に伴う全体的、複合的な認知、および記憶の低下が遅いことにも関連(p≤0.05)。

より高いトリグリセリドレベルは認知症の発症を防ぐ、全体的な健康状態およびライフスタイル行動の改善を反映している可能性があります。 今後の研究では、血漿トリグリセリドの全循環プール内の特定の成分が認知機能の向上を促進する可能性があるかどうかを調査することで、新しい予防戦略の開発に繋がることが期待されます。

出典文献
Association Between Triglycerides and Risk of Dementia in Community-Dwelling Older Adults: A Prospective Cohort Study.
Zhen Zhou, Joanne Ryan, Andrew M Tonkin, Sophia Zoungas, Lacaze, et al.
Neurology,
First published October 25, 2023, DOI: https://doi.org/10.1212/WNL.0000000000207923