VCは新型コロナウイルス感染症に効果なくむしろ悪化させる [薬とサプリメントの問題]

大規模で調和のとれた多国籍ランダム化臨床試験の結果、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者にVitamin C (ビタミンC:VC, 正しくは、バイタミンC)を投与しても、臓器サポートなしの日数や入院生存率は改善しなかった。 それどころか、VCが重症患者と重症でない患者の両方の転帰を悪化させる高い事後確率(臓器サポートなしの日数で90%以上、病院生存で75%以上)が示された。これらの効果は、事前定義されたサブグループ全体および感度分析において一貫していた。

本研究は、COVID-19の入院患者に対し、VCの投与が患者の転帰を改善するかを判断するために実施された。

2 つの前向きに調和されたランダム化臨床試験では、2020 年 7 月 23 日から 2022 年 7 月 15 日までに、集中治療室で臓器サポートを受けている重症患者 (90 施設) と重症ではない患者 (40 施設) が登録された。

患者は、96 時間にわたって 6 時間ごとにV C を静脈内投与する群と対照群(プラシーボまたはV C なし)に無作為に割り付けられた(最大 16 回の投与)。

主要アウトカムと尺度は、21日目までの集中治療室で生存し、呼吸器および心血管器官のサポートを受けていない日数として定義される臓器サポートなしの日数と、退院までの生存を組み合わせたもの。

この試験では、重症患者1,568名(VCC群1,037名、対照群531名、年齢中央値60歳[IQR、50~70歳]、35.9%が女性)とそうでない患者1,022名に関する主要転帰データが得られた。重症者(VC群456人、対照群566人、年齢中央値62歳[IQR、51~72歳]、39.6%が女性)。

重症患者の場合、臓器サポートが不要な日数の中央値は、VC群では7日(IQR:−1〜17日)であったのに対し、対照群では10日(IQR、−1〜17日)(調整済み比例OR:0.88 [95% 信頼区間 {CrI}、0.73 ~ 1.06])。有効性の事後確率は 8.6%、有害性は91.4% 、無益99.9%。
重篤な病気ではなかった患者の場合、臓器サポートが不要な日数の中央値は、VC群では22日(IQR、18~22日)であったのに対し、対照群では22日(IQR、21~22日)(調整比例OR)、0.80 [95% CrI、0.60 ~ 1.01])。有効性の事後確率は 2.9%、有害性は97.1% 、無益性は99.9% 以上。

重症患者のうち、退院までの生存率はVC群で61.9%(642/1037人)、対照群で64.6%(343/531人)(調整後OR、0.92 [95% CrI、0.73~1.17])、有効性の事後確率は 17.8% 。

重症ではなかった患者の場合、退院までの生存率はVC群で85.1%(388/456)だったのに対し、対照群では86.6%(490/566)(調整後OR、0.86 [95% CrI、0.61~1.17])、有効性の事後確率は 17.8% 。

2020年から2022年までに実施されたこの試験の募集は、REMAP-CAP試験の無益さと有害性の統計的トリガーに達したため、2022年7月に停止された。

COVID-19のパンデミックの当初、WHOは軽率にもVCの使用を強調しました。潜在的な免疫調節剤として、VCはCOVID-19の特徴である酸化ストレスと微小血管血栓症を軽減するため、死亡率を低下できる可能性があると考えられました。

2017年の単一施設研究では、V C、ヒドロコルチゾン、チアミンの投与により敗血症による死亡率が大幅に減少したことが示されましたが、最終的には敗血症患者にVC を投与しても何の効果もないことが示されました。 しかし、これらの試験の結果が広く知られる前のパンデミックが始まった頃に、COVID-19患者の血中VCが低かったことから、治療法としてのVCへの関心が高まったのですが、今回の研究の結果は期待を覆すものでした。

出典文献
Intravenous Vitamin C for Patients Hospitalized With COVID-19
Two Harmonized Randomized Clinical Trials
The LOVIT-COVID Investigators, on behalf of the Canadian Critical Care Trials Group, and the REMAP-CAP Investigators
JAMA. Published online October 25, 2023. doi:10.1001/jama.2023.21407