慢性腎疾患に対するガイドラインに基ずく治療法に優位性は無かった [医学・医療への疑問]

プライマリケア診療所で治療を受けている腎機能障害の3徴候を有するの患者を対象とした、非盲検クラスター無作為化試験の結果、プライマリケアクリニックに組み込まれたEHRベースのアルゴリズムと実践ファシリテーターの利用は、1年の時点で入院の減少にはつながらなかった。

141のプライマリケア診療所で治療を受けている、腎機能障害の3徴候を有する 11,182 人の患者(患者の電子健康記録に基づく)に対する、個別化されたアルゴリズムを使用した介入を受ける群と通常治療群のいずれかに割り当てた。

主要転帰は、何らかの原因による1年時点での入院で、副次アウトカムには、救急外来受診、再入院、心血管イベント、透析、死亡が含まれた。

5,690人の患者をを介入グループに、5,492人の患者を通常ケアグループに割り当てた。1年後の入院率は介入群で20.7%(95%信頼区間[CI]、19.7~21.8)、通常治療群では21.1%(95%信頼区間[CI]、20.1~22.2)(群間差、 0.4 パーセント ポイント; P = 0.58)で、同等。

救急外来の受診、再入院、心血管イベント、透析、または何らかの原因による死亡リスクも、両グループで同様。 有害事象のリスクも12.7%対11.3%で同様。

但し、急性腎損傷は介入群でより多く観察された。

「BACKGROUND」に、「慢性腎臓病、2型糖尿病、および高血圧(腎機能不全の3徴候)患者にとって効果的な治療法が利用可能であるにもかかわらず、この集団における死亡と合併症のリスクを軽減するためのガイドラインに基づいた治療の実施を検討した大規模試験は不足している。」と記されている。しかし、「効果的な治療法」とは何か。慢性腎疾患が回復することはあり得ない。

様々な疾患で、何処かの学会による「治療法のガイドライン」なるものが提唱されており、それぞれの治療法には「エビデンス」や「尤度比」などが示されている。しかしながら、個人的には、ガイドラインが役に立つとは思わない(鍼灸師ごときが言うことではないが)。

さらに、介入群において急性腎損傷がより多く観察されたことは、今後追求すべき問題だと言える。

出典文献
Pragmatic Trial of Hospitalization Rate in Chronic Kidney Disease
Miguel A. Vazquez, George Oliver, Ruben Amarasingham, et al.
N Engl J Med 2024;390:1196-1206 DOI: 10.1056/NEJMoa2311708 VOL. 390 NO. 13