腸から脳へのTRAIL [臓器相関]

腸内細菌叢によって認可されたナチュラルキラー細胞は、TRAIL +アストロサイトの集団を駆動して脳の炎症を制限する。

アストロサイトは、神経活動の調節や代謝サポートの提供など、中枢神経系(CNS)において様々な役割を果たすグリア細胞であり、その機能の調節不全は多くの神経疾患と神経炎症の根底にある。

アストロサイトにおけるリソソーム関連膜タンパク質1(LAMP1)のノックアウトは、多発性硬化症のマウスモデルであるEAEの症状を悪化させ、中枢神経系(CNS)の炎症誘発性CD4 + T細胞数を増加させた。

マウス星状細胞におけるTRAILのノックアウトは、CNSで動員されたCD4 + T細胞におけるアポトーシス促進性カスパーゼ-3の活性化の低下をもたらし、EAEマウスにおけるLAMP1の喪失の影響を表現型コピーした。

NK細胞の枯渇は、髄膜のTRAIL+星状細胞の数を減少させる。腸内微生物叢がNK細胞でIFN-γ産生を誘導することに注目し、著者らは、無菌マウスでは特定病原体除去マウスよりも髄膜のIFN-γ+ NK細胞とTRAIL +星状細胞が少ないことを発見した。

抗生物質の枯渇と糞便微生物叢の移動実験により、髄膜のTRAIL +星状細胞の数を維持するためにマイクロバイオームが必要であることが確認された。NK細胞は小腸から髄膜に移動し、抗生物質治療がそれらの細胞におけるIFN-γの発現を減少させることが細胞追跡実験に確認された。

これらのデータは、マイクロバイオームライセンスのIFN-γ+ NK細胞が、T細胞アポトーシスを誘導するCNSの星状細胞のTRAIL+集団を維持し、炎症を軽減することを示唆している。

出典文献
A TRAIL from gut to brain
Sci. Signal. 23 Feb 2021:Vol. 14, Issue 671, eabh1677
DOI: 10.1126/scisignal.abh1677
John F. Foley、L. M. Sanmarco, M. A. Wheeler, C. Gutiérrez-ázquez, C. M. Polonio, M. Linnerbauer, F. A. Pinho-Ribeiro, Z. Li,

脳と腸は双方向的に情報伝達を行うことで相互に作用を及ぼしあう。このような、脳(中枢神経系)と腸管の関連を「脳腸相関」と呼び、ストレスなどが原因の過敏性腸症候群など、脳腸相関による疾患や症状は以前から知られていた。しかし近年、この脳腸相関の新たな要因として、腸内フローラが関わっていることが明らかになっている。

細菌と人間(真核生物)は、生物の大分類である「界(キングダム)」のレベルで違っており、全く異なる生物。にもかかわらず、両者の間で情報交換が行われるのは何故か。近年、細菌間の情報伝達に使われる分子の受容器がヒト由来のストレス関連ホルモンにも反応し、病原性大腸菌の増殖と病源反応の増強を促進するという事実が判明した。従って、宿主のストレス状態を病原性大腸菌が感知して増殖することで宿主が病気になる可能性がある。また、逆に、細菌由来のストレス関連ホルモンが宿主細胞に作用するという事実も示されており、界を越えた生物間の情報交換が起きていることが明らかとなっている。

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