脂肪および炭水化物の摂取と心血管疾患および死亡率との関連 [栄養の話題]

食餌に関する様々な研究は報告によって結果に違いが見られ、解釈に混乱を来している。この原因として、主要栄養素と健康との関連性を、消費量の広範囲にわたって線形と見なしていることが考えられる。実際は、他の生命現象と同様に、主要栄養素の摂取量と健康上の結果の多くは非線形の関係となる。

また、その関係性が他の栄養素の摂取量のレベルと総エネルギー消費量に関係なく有効であるとする先入観によって齟齬が生じる。食餌のアドバイスは、それぞれの成分、例えば、炭水化物に関するガイドラインでは、その成分である砂糖とデンプンの違いやそれぞれの摂取量を考慮する必要がある。

本研究の対象者は、英国バイオバンクの502,536名の参加者のうち、不可解なエネルギー摂取量または食餌摂取のために除外された15,365名を除く195,658名。参加者は、少なくとも1つの食餌アンケートを完了した。食餌は、ウェブベースの24時間リコールアンケートであるオックスフォードWebQを使用して評価され、栄養素摂取量は標準的な方法論を使用して推定。非線形の関連性は“Cubic Spline Analysis;3次スプライン解析”を使用したCox比例モデルによって解析している。

4780名(2.4%)が平均10.6年(範囲9.4-13.9)のフォローアップ期間中に死亡し、948名(0.5%)が致命的なCVDイベント、9776名(5.0%)が非致命的なCVDイベントを、平均9.7年間(8.5-13.0)に発症した。

全原因死亡率が最も低い食餌は、高線維(10〜30 g/日)、タンパク質(14〜30%)、一価不飽和脂肪酸(MUFA;10-25%)、および中程度の多価不飽和脂肪酸(PUFA;5% から <7%)とデンプン(20%から<30%)の摂取で構成されたものであった。

高タンパク質の食餌(≥14%)とデンプン(≥30%)、低線維(<10 g/日)、MUFA(<10%)、PUFA(<5%)は死亡率リスクが70%高い。より高い線維摂取量(≥10 g/日)は、より低いリスクに対応した。尚、同様の低レベルのリスクは、デンプンの摂取量を総エネルギーの30%から20%に減らし、MUFA(総エネルギー摂取量の最大10〜25%)またはPUFA(総エネルギー摂取量の最大5%から7%)に置き換えることで達成できる。

炭水化物の摂取量は死亡率と非線形の関連を示し、総エネルギー摂取量の20〜50%では関連せず、50〜70%で関連性が見られた(3.14 v 2.75 per 1000 person years, average hazard ratio 1.14, 95% confidence interval 1.03 to 1.28 (60-70% v 50% of energy))。この知見は、線維、多価不飽和脂肪酸(PUFA)、およびタンパク質の摂取と心血管疾患(CVD)発症に類似していた。

MUFAの高摂取量 (2.94 v 3.50 per 1000 person years, average hazard ratio 0.58, 0.51 to 0.66 (20-25% v 5% of energy))と、PUFAの低摂取量(2.66 v 3.04 per 1000 person years, 0.78, 0.75 to 0.81 (5-7% v 12% of energy))、および飽和脂肪酸(SFA)(2.66 v 3.59 per 1000 person years, 0.67, 0.62 to 0.73 (5-10% v 20% of energy))が、死亡リスクの低下に関連していた。

総脂肪摂取量は、全原因死亡率と関連しなかった。残りのすべての主要栄養素は、MUFA、PUFA、およびSFAを除いて死亡率と非線形関係を有していた。

より高い糖摂取量とSFA摂取量が高いほど、全原因死亡およびCVD発症の高リスクと関連する。これら2つの成分の等カロリー置換が検討され、エネルギー摂取量が一定のままで、砂糖を、デンプンからのエネルギーの最大30%、MUFAからの25%、タンパク質からの20%に置換すると、全原因死亡およびCVD発症リスクが低下した。

MUFAとの関連は直線的であったのに対し、タンパク質とCVDの関係はJ字型を示した。PUFAに糖を置き換えた場合、PUFAがエネルギーの6〜7%を超えたときに死亡率とCVDのリスクは増加した。糖をSFAに置き換えてエネルギーの10%を超えると死亡リスクは高くなり、CVDリスクは低下した。

本研究では、炭水化物(糖、デンプン、線維を含む)とタンパク質の摂取は、全原因死亡率と非線形に関連しており、この知見は線維、多価不飽和脂肪酸(PUFA)、および心血管疾患(CVD)の発症を有する場合のタンパク質摂取に類似していた。対照的に、SFA、MUFA、およびPUFAの摂取は、全原因死亡率と直線的に関連していた。さらに、砂糖の摂取量をデンプン、MUFA、またはタンパク質に置き換えると、デンプン、MUFA、およびタンパク質の現在の摂取量が少ないときに、全原因死亡率およびCVD発症リスクを低下させる。同様に、SFAをMUFAまたはタンパク質に置き換えることは、総死亡率およびCVDの両方のリスク低下に関連した。

これらの知見は、栄養素摂取量と健康結果との間の複雑で多様な関連性を強調している。以前の研究では、一般的に健康結果と単一の主要栄養素の線形関係を報告している。.本研究では、非線形関係を調べ、観測された関連性に影響を与える可能性のある他の主要栄養素の摂取に関する分析を調整し、主要栄養素と健康結果の非線形および線形関連に基づいて等量カロリー置換を実施した。

尚、非線形関係は、グラフによって一目瞭然なので、興味のある方は原著を参照していただきたい。

出典文献
Associations of fat and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality: prospective cohort study of UK Biobank participants
Frederick K Ho, Stuart R Gray, Paul Welsh, et al.,
BMJ 2020; 368 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.m688 (Published 18 March 2020)
Cite this as: BMJ 2020;368:m688

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