ニューヨーク市地域のCOVID-19入院患者の報告から [医学一般の話題]

既に、新聞等でも報じられている、「Presenting Characteristics, Comorbidities, and Outcomes Among 5700 Patients Hospitalized With COVID-19 in the New York City Area, JAMA; April 22, 2020」なので、周知のことと思われるが、私なりに、気になった点を述べたい。

ノースウェルヘルスシステム内のニューヨーク市、ロングアイランド、ニューヨーク州ウェストチェスター郡の12の病院に入院した、合計5700人(中央値年齢、63歳[四分位範囲{IQR}、52-75;範囲、0-107年];39.7%の女性)の患者についての報告。期間は、2020年3月1日から2020年4月4日まで。

最も一般的な併存疾患は、高血圧(3026 ; 56.6%)、肥満(1737 ; 41.7%)、糖尿病(1808 ; 33.8%)であった。死傷者分類では、患者の30.7%が熱性(37℃<)、17.3%が24呼吸/分を超える呼吸数、27.8%が酸素吸入を受けた。呼吸器ウイルスの共感染率は2.1%。

入院した患者でさえ発熱は3割程度であり、このデータから言えることは、空港などで入国者の体温を計測していたがその効果はなかったと言える。

本報告では、研究の終点で退院または死亡した2634人の患者についてを評価。入院中、373人(14.2%) (median age, 68 years [IQR, 56-78]; 33.5% female) は集中治療室で治療を受け、320人(12.2%)が侵襲性機械的換気(人工呼吸器)を受け、81人 が(3.2%)腎臓補充療法を受け、553人(21%)が死亡。

人工呼吸器を装着した患者の死亡率は88.1%(282人)。その内、18~65歳までの死亡率は76.4%、65歳以上では97.2%。一方、人工呼吸器の装着に至らなかった患者の死亡率は、18~65歳19.8%、65歳以上26.6%。18歳未満の年齢層では死亡者は0人。

65歳以上では人工呼吸器の装着者はほぼ全員が死亡し、65歳以下でも8割近くが死亡する。批判覚悟で言えば、酷なようだが、この調査結果を見る限り器械による酸素化は対象療法にすぎず、Cobid-19における両肺におよぶ肺胞の炎症を鎮静できなければ、根本的な治療にはならない。さらに、直接血液中に酸素を送るECMO(extracorporeal membrane oxygenation:体外式膜型人工肺)の増産を、政府は指示したようだが、この装置も一時しのぎに過ぎないし、この器械を操作するためのマンパワーはそう簡単に確保できることではないだろう。

入院期間は4.1日(IQR、2.3-6.8)。退院後の追跡期間の中央値は4.4日(IQR、2.2-9.3)。合計45人の患者(2.2%)が研究期間中に再入院。再入院期間の中央値は3日間(IQR、1.0-4.5)。

この研究では、明確な転帰(退院または死亡)のある患者についてのみ死亡率が報告されている。それは、感染は様々な集団のセグメントで起きており、死亡率も変化する可能性があるため。

退院、および試験終了までに死亡した2634人の患者のうち、2411人(92%)の在宅薬調整情報が利用可能だった。 これら2411人の患者のうち、189人(7.8%)が自宅でアンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEi)を服用しており、267人(11.1%)が自宅でアンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)を服用していた。在宅薬の総数の中央値は3(IQR、0-7)。

自宅でACEiを服用している患者のうち、91人(48.1%)が入院中もACEiの服用を継続し、残りは来院後にこのタイプの薬剤を中止した。

自宅でARBを服用していた患者のうち、136人(50.1%)は入院後もARBの服用を継続し、残りは来院中にこの種の薬物の服用を中止した。 自宅でACEiまたはARBを処方されなかった患者のうち、49人が入院中にACEiによる治療を開始し、58人がARBによる治療を開始した。

ACEiまたはARBを服用していない高血圧患者の死亡率は26.7%、ACEiを服用している患者は32.7%、およびARBを服用している高血圧患者の死亡率は30.6%%であった。

ACEiおよびARB薬は、心臓アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)のmRNA発現を有意に増加させることができるため、これらの薬物による治療への悪影響が推測され議論になっていた。それは、これらの薬物がすべての降圧薬の中で最も多く処方されているためである。

この報告においても、重要な懸念事項であると述べられている。これに対し、米国心臓協会(AHA)、米国心不全学会(HFSA)、米国心臓病学会(ACC)の3学会は、3月17日、「ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の服用は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後の重症化要因にはならない」とする共同声明を発表している。COVID-19重症化とこれらの降圧薬の使用をめぐる議論を受け、今回の声明の発表に至ったとしている。しかし、直ちには信用できない。これらの薬の利権は大きいだろうから。と、猜疑心が強いせいか、つい疑ってしまう。

出典文献
Presenting Characteristics, Comorbidities, and Outcomes Among 5700 Patients Hospitalized With COVID-19 in the New York City Area
Safiya Richardson, Jamie S. Hirsch, Mangala Narasimhan, et al.,
JAMA. Published online April 22, 2020. doi:10.1001/jama.2020.6775

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