オゾンへの長期暴露は肺気腫および肺機能悪化に関連する [環境問題]

大気汚染物質の中でも、オゾン(O3)と窒素酸化物(NOx)への長期的暴露は肺気腫の増加、および肺機能(1秒量:FEV1)の悪化に関連していたと報告されている。

アメリカ6大都市圏における、5780人を対象とするコホート研究。調査期間は2000年から2018年。フォローアップの中央値10年間に、少なくとも1回CTスキャンを実施し、2772名は少なくとも1回スパイロメトリー評価を実施。

居住地固有の暴露大気汚染物質濃度(オゾン;O3、微粒子状物質;PM2.5、窒素酸化物;NOx、およびブラックカーボン)は、1999年からフォローアップの終わりまでにコホート特異的モニタリングを組み込んだ検証済みの時空間モデルによって推定。

肺気腫は、CTスキャン用いて参加者ごとに最大5回定量的に評価(2010-2018)。肺機能については、肺の閉塞性障害の指標の1つである1秒量(FEV1)を、スパイロメトリーを使用して参加者1人につき最大3回(2004-2018)測定。

肺気腫の中央値はベースラインで3%であり、10年間で平均0.58%ポイント上昇した。O3およびNOx濃度は肺気腫の増加と有意に関連し、PM2.5濃度は関連しなかった。

ベースライン時およびフォローアップ時の周囲のO3濃度はFEV1の大幅な減少と有意に関連していた(baseline: 13.41 mL per 3 parts per billion [95% CI, 0.7-26.1]; follow-up: 18.15 mL per 3 parts per billion [95% CI, 1.59-34.71]).

大気中オゾン濃度の増加によってFEV1が悪化することや死亡率が増加することは、これまでにも多くの研究報告によって示されている(私の、このブログでも指摘)。オゾンは死亡するような濃度では特有の臭気があるため異常を察知できる。したがって、実際に中毒による死亡例はない。しかし、全く感知できないような低レベルでも、呼吸器の炎症や呼吸機能の低下を引き起こし、その影響は呼吸器疾患患者ではさらに大きく死亡リスクは数倍高くなる。オゾンを発生させる空気浄化器なるものが家庭用に製造され販売されている。さらに、あろうことか、患者がいる病院の病室で使用されるなど、危険きわまりないことが行われている。それは医師の無知による認識不足と、この日本では一切規制されていないためである。

大気中(地上レベル)のオゾンは、強力な酸化作用を有する故に大気汚染物質であり、近年世界的な増加傾向にある。オゾンの増加(成層圏の話ではなく)は、人への健康被害だけでなく、すでに、植物生産量の世界的な減少をもたらし、その影響はCO2の増加による増産を上回っており、今後さらに被害が拡大することが欧米では指摘されていた。しかし、ヨーロッパの一部など、環境基準値を下げて規制している国もあるが、一方で、アメリカのように企業活動への影響を重視して、大統領が法改正を拒否した国や、日本のように全く黙殺している国もある。

引用文献
Association Between Long-term Exposure to Ambient Air Pollution and Change in Quantitatively Assessed Emphysema and Lung Function
Meng Wang, Carrie Pistenmaa Aaron, Jaime Madrigano, et al.,
JAMA. 2019;322(6):546-556. doi:10.1001/jama.2019.10255


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