膝OAにおけるリンパ管の変化 [膝OA]

変形性関節症 (OA)モデルマウスにおいて、軽度ではリンパ管数と毛細血管の数は有意に増加するが、重度では成熟したリンパ管の数が著しく減少した。膝OA患者においても、リンパクリアランスの減少と、関節の毛細血管と成熟リンパ管の数が有意に減少していると報告されている(少々古いが;Arthritis Rheumatol. 2014)。

リンパ血管は広く体内組織に分布しており、アンカーフィラメントを介して周囲の間質マトリックスに連続している。余分な血漿は、免疫細胞と一緒にリンパ毛細血管の透過性リンパ内皮細胞の接合部を介して濾過されて間質性空間に排出される。

膝関節への分布は十分には検討されておらず、関節液の恒常性におけるリンパ系の正確な役割は明確ではない。

本研究の膝OAモデルは、軟骨形質転換成長因子β (tgf β) 型 ii 受容体の遺伝子をノックアウトした、半月靱帯を傷害させたマウスを使用。軟骨の損失と関節破壊の重症度を組織学的に評価。キャピラリーおよび成熟リンパ管を同定し、二重蛍光染色と全体のスライド式デジタルイメージングシステムを使用して分析。近赤外リンパ管像を用いて膝関節のリンパ排液を検討。また、人工膝関節または人工股関節置換術で得られた患者関節標本を評価してマウス所見の妥当性を検証。

滑液は滑膜によって生成されて関節軟骨を養う。OAでは、コラゲナーゼ(collagenases)、マトリックスメタロプロテアーゼ、サイトカイン、ケモカインなどの異化因子が関節中の種々の細胞型によって生成され、滑液中に放出される。これらの成分の有害な影響から、滑液または関節洗浄標本中の濃度はOAの重症度のバイオマーカーとして使用されている。しかし、これらの異化因子がリンパ管を介して関節からクリアされる機構は未解明。

リンパ管は、単に組織液を運搬するのみならず、抗原や免疫細胞を運搬して局所的な炎症や免疫力を調整しており、その機能不全は炎症性疾患や癌などの進行に影響する。しかし、リンパ管の構造や機能は十分には理解されていない。

一方、COPDの肺では、重症度と肺胞リンパ管の増加と、主要末梢肺コンパートメントにおけるリンパ管の表現型の変化が関連している。このように、疾患によってリンパ管の変化に違いが認められる。

本研究では、リンパ管の形成と排水機能がOA関節で障害されていることを示し、病因と治療においてリンパ系のさらなる調査の必要性を提唱している。

出典文献
Distribution and Alteration of Lymphatic Vessels in Knee Joints of Normal and Osteoarthritic Mice.
Jixiang Shi, Qianqian Liang, Michael Zuscik, et al.,
Arthritis Rheumatol. 2014 Mar; 66(3): 657–666. doi: 10.1002/art.38278

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