心臓手術患者の術後高感度トロポニンレベルは30日間の死亡率に関連する [医学一般の話題]

心臓手術を受けた患者の、術後高感度トロポニンT (hsTnT)のピーク値は30日間の死亡率と有意に関連していたと報告されている。

心臓手術を受けて、術後 hsTnT 測定を行った者のコホート研究。参加者は13カ国23センターにおける45歳以上の患者、21, 842名(平均年齢 63.1歳 (SD,10.7), 女性49.1%)。2008年10月に開始し、2013年12月までフォローアップ。患者は手術後6〜12時間と3日間 hsTnTを 測定。40.4% は術前にもhsTnT 測定。

手術後30日以内に266名が死亡(1.2% ; 95% CI ; 1.1% - 1.4%)。

・基準群 (ピーク hsTnT の 5 ng/l) と比較した術後ピーク値別30日間の死亡率

20 ~ 65 ng/l    ;3.0% (123/4049; 95% CI, 2.6%-3.6%)
65 ~ 1000 ng/l 未満 ;9.1% (102/1118; 95% CI, 7.6%-11.0%)
1000 ng/l 以上   ;29.6% (16/54; 95% CI, 19.1%-42.8%)

corresponding adjusted HRsは、それぞれ23.63 (95% CI, 10.32-54.09), 70.34 (95% CI, 30.60-161.71), 227.01 (95% CI, 87.35-589.92)。

hsTnTの5 ng/Lと最高値を比較した、30日死亡リスクの絶対増加の調整ハザード比(adjusted HR)は4.69(95% CI, 3.52-6.25)で、約4.7倍。

術後、虚血性機能を伴わないhsTnTの20 から65 ng/Lの5 ng/L以上の絶対変化、または65 ng/l以上における30日間の死亡率の調整HRは3.20(adjusted HR, 3.20; 95% CI, 2.37-4.32)。
3904名(17.9%; 95% CI, 17.4%-18.4%)の患者が心臓手術後の心筋損傷(MINS)、3633名(93.1%; 95% CI, 92.2%-93.8%)が虚血性の徴候を示さなかった。

出典文献
Association of Postoperative High-Sensitivity Troponin Levels With Myocardial Injury and 30-Day Mortality Among Patients Undergoing Noncardiac Surgery.
Writing Committee for the VISION Study Investigators
JAMA. 2017;317(16):1642-1651. doi:10.1001/jama.2017.4360

トロポニン複合体(トロポニンT,C,I)は、骨格筋と心筋の横紋筋におけるアクチンとミオシンの間でカルシウムを介した筋収縮の調節を行っている。心筋トロポニンT,Iの90%以上は心筋細胞の構造フィラメント上に存在し、心筋障害に際して微量に血中へ流出する。

血中心筋トロポニンの測定系は、骨格筋と交差しない心筋特異的な抗体を用いており、2000年度の欧州心臓病学会/米国心臓病学会(ESC/ACC)において、急性心筋梗塞の診断基準に記載された。

近年開発された高感度トロポニン測定系は低値部分までも正確で、測定値が高いほど予後不良。従来は正常値とされていた数値でも、10年後の予後予測指標であることが判明し、トロポニン測定系は、心筋梗塞から心不全末期までの段階についてのバイオマーカーである可能性が示唆されている。

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