コリン作動性抗炎症性経路 [鍼治療を考える]

 アセチルコリン受容体を介する、迷走神経の炎症抑制機能が新しい炎症性疾患治療に成り得るのでは、という報告がありました(Journal of Internal Medicine)。このコリン作動性抗炎症作用は、nicotinic alpha 7 acetylcholine receptor subunitによるsignal transductionが関与しています。

 しかしながら既に、Wangらが2003年にNature誌に、迷走神経の炎症抑制機能がニコチン受容体α7を介して発揮されることを報告しています。その後、Jongeらによって、α7受容体刺激がJAK2-STAT3経路の活性化を引き起こし、LPS誘導性炎症性サイトカインの産生抑制が、IL-10/IL10RおよびSOCS3の非関与のもとで誘導されることを確認しています。

 以前から、迷走神経切除により齧歯類の敗血症が悪化することが知られていました。敗血症や炎症性腸疾患へのニコチンの有効性が証明され、迷走神経の刺激伝達におけるマクロファージ/単球上のα7ニコチン受容体の役割が明らかになっています(但し、ニコチンの毒性が問題)。

 最近は、炎症性サイトカインに対する抗体が各種自己免疫疾患の治療に応用されています。これらの知見は、鍼灸にとっても有望な情報です。今後は、迷走神経への有効な刺激法と効果の確認が求められます。

Jared M. Huston1, Kevin J.
The Pulse of Inflammation: Heart Rate Variability, the Cholinergic Anti-Inflammatory Pathway, and Implications for Therapy
Journal of Internal Medicine , DOI: 10.1111/j.1365-2796.2010.02321.x1

Wang H, Yu M, Ochani M, et al. Nicotinic acetylcholine receptor alph7 subunit is an essential regulator of inflamation, Nature , 2003; 421: 384.

de Jonge WJ, van der Zanden EP, The FO, et al. Stimulation of the vagus nerve attenuates macrophage activation by activating the Jak2-STAT3 signaling pathway,Nat Immunol, 2005; 6: 844.

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