10秒間の片足立ちの成否が中高年の生存を予測すると報告 [医学一般の話題]

10秒間の片足立ち(10秒OLS)を正常に完了する能力は全原因死亡率と独立して関連付けられ、年齢、性別、その他の人体測定および臨床を超えて予後情報を示すと報告されている。

10秒OLSデータは、2008年から2020年までの51〜75歳の1702人(男性68%)で評価された。ログランクおよびCoxモデリングを使用し、10秒OLSテストの可(YES)または不可(NO)で生存曲線と死亡リスクを比較。

片足スタンスバランス評価
参加者は平らな台の上裸足で立ち、非支持足の背側部分を支持側の下腿の後ろに配置する。肘を伸ばして腕は自然に体の近くに置き、視線は2mの距離にある目の高さのポイントに固定するように指示された。参加者はこの姿勢を10秒間保持すりことを求められ、最大3回の試行が許可された。

NO群の割合は、51〜55歳で4.7%、56〜60歳で8.1%、61〜65歳で17.8%、66〜70歳で36.8%。 71〜75歳の年齢層では、参加者の半数以上(53.6%)で、全体では20.4%がNOと分類された。

追跡期間中央値(IQR)7年(4.16–9.41)の間に123人の参加者(7.2%)が死亡した。死因は、癌(32%)、心血管系疾患(30%)、呼吸器系疾患(9%)およびCOVID-19合併症(7%)。NO群の死亡率はYES群よりも高く(17.5%vs 4.6%; p <0.001)、NO群では17.5%で生存曲線は悪化した(ログランク検定= 85.6; p <0.001)。10秒OLSのYES群は4.6%、追跡期間中央値(IQR)7(4.16–9.41)絶対差は12.9%。主要な死因の分布に有意差はなかった。

尚、転倒についての記載は見られず、転倒リスクも明示されていない。

参加者のプロファイルは、冠状動脈疾患、高血圧、脂質異常症、肥満の割合が高い参加者はいなかったが、最も顕著な違いとして、糖尿病はYES群12.6%と比較してNO群で37.9%と3倍であった(p <0.001)。

このテストは13年間の臨床経験において参加者から高い評価を受けているとのこと。非常に安全で、適用するのに1分または2分未満しか必要としないため簡単に組み込むことができる。中高年の定期健康診断の一部として10秒OLSを含めることには潜在的な利点があると述べられている。

しかし。

10秒OLS不可の群が死亡リスクのハザード比が倍近くになったとしても、その数値にどの様な意味があり、改善策はあるのであろうか。また、介入として、10秒OLSテストを繰り返し行うことがバランストレーニングになるのか。実際に、転倒リスクが減少するのかについて、今後の調査が必要であると思う。その上で、バランスの改善が転倒リスクを軽減し、さらに、運動機能を含めた患者個人の基礎疾患に対しても好影響を与えて死亡リスクを減少させ得るのかを検証すべきである。仮に、評価結果に実質的な利益が無いのであれば、単なる評価のための評価にに過ぎず、自己満足となる、と、思うのですが。

ついでに言えば。私は60歳台の後半であるが、閉眼ならいざ知らず、開眼したままの片足立ちであるこのテストは非常に簡単であり、分単位でも可能である。参加者のプロファイルでは参加者は健康であったようであるが、NOが多すぎるように思われる。むしろ、脳疾患や何らかの事情によって運動機能に相当の問題があると考えられるのだが。

出典文献
Successful 10-second one-legged stance performance predicts survival in middle-aged and older individuals FREE
Claudio Gil Araujo, Christina Grüne de Souza e Silva, Jari Antero Laukkanen, et al.
Br J Sports Med 2022; DOI: 10.1136/bjsports-2021-105360.