医療崩壊というあやかし [らくがき]

医療崩壊の危機は行政が招いていることにすぎない。それは、新型コロナを未だに「指定感染症2類相当措置」にしているからだ。季節性インフルエンザと同様に、「指定感染症5類」にすれば医療崩壊は避けられる。実に簡単なことだ。その結果、看護師を無駄に疲弊させることが避けられる。

インフルエンザは年間1000万人もの感染者が出ているが、毎年冬になるたびに「医療崩壊の危機」などと叫ぶ者はいない。その理由は簡単で、季節性インフルエンザが指定感染症5類だからだ。新型コロナのように、重症患者は指定感染症医療機関でしか受け入れられない。軽症や無症状でも隔離する。検査結果をすべて報告する。これらの無駄な縛りがないからだ。

例えば、某指定病院で陽性者1人が出たのに対し、53人が濃厚接触者に認定されたとする。すると、基本的には2週間自宅待機となる。PCR検査の結果、陽性者は最初の1人のみであったとすると、他の職員には全く症状はなく感染もしていないのに2週間働けない状況は全くの無駄な行為となってしまう。当然、人員が足りなくなり、病棟を閉鎖したり、外来や救急、手術を止めたりしなければならなくなる。これこそが「医療逼迫」の実体である。

ヨーロッパでは人口10万人あたりの累計死者は100人、一方、日本は2.4人でほぼ40分の1にすぎない。さらに、人口あたりのベッド数はOECD平均の3倍と世界一。新型コロナで人工呼吸の必要な重症患者は全国総数でも約450人であるのに対し、人工呼吸器は4万5000台も揃っている。全国的にみれば、医療資源の限界を超えることはあり得ない。逼迫する要因の1つは、医師の数がOECD平均の70%と少ないことも関係している。しかし、問題は法による縛りや医療資源の偏在だろう。

「死人が出たらどうする」と、メディアは煽る、しかし、日本でも毎年季節性インフルエンザで数千人~1万人が死亡し、通常の肺炎でも94,000人以上(2019年度)が死亡している。しかし、医療崩壊など起こらないし、誰も騒がない。
コメント(0) 

頸動脈洞神経の電気刺激は炎症を軽減して内毒素血症性ショックから保護する [医学一般の話題]

マウスの頸動脈洞神経への電気刺激は炎症を軽減し、骨髄性免疫細胞の糖質コルチコイド受容体に作用するコルチコステロンの増加を介して、リポ多糖によって誘発される内毒素血症性ショックから保護する。これらの結果は、免疫性炎症性疾患の治療アプローチとしての根拠を示すとともに、治療戦略となる可能性がある。

頸動脈洞神経の電気刺激が、麻酔および非麻酔意識マウスの両方でリポ多糖誘発腫瘍壊死因子産生を阻害した。頸動脈洞神経電気刺激の抗炎症効果は非常に強力であり、意識的なマウスを内毒素症のショック誘発死から保護した。

この作用は迷走抗炎症反射のメカニズムとは対照的に、自律神経系を通じたシグナル伝達に依存しない。頸動脈洞神経電気刺激によるリポ多糖誘発腫瘍壊死因子産生の阻害は、副腎の外科的除去によって、グルココルチコイド受容体アンタゴニストミフェプリストンによる治療、または骨髄細胞におけるグルココルチド遺伝子の遺伝的不活性化によって消失する。また、頸動脈洞神経の電気刺激は、視床下部室傍核の自発的放電活動を増加させ、コルチコステロンの産生を増強する。

炎症は、病原体、損傷した細胞、刺激物などの有害な刺激に対する体組織の複雑な生物学的反応の一部であり、免疫細胞の動員と炎症誘発性サイトカイン(腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン(IL)-1α、IL-1β、IL-6、IL-12)などの可溶性分子の産生が含まれる。これらのサイトカインは、最終的に特異的な表面受容体を介してシグナル伝達することによって、免疫および非免疫細胞タイプの両方に作用する。炎症は保護メカニズムであるが、炎症促進部位は組織損傷を引き起こして有害に作用する。これは、グラム陰性菌による血流感染によって誘発される、重度の全身性炎症反応に起因するエンドトキシンショック中に発生する。したがって、いくつかの神経ホルモン抗炎症経路が同定されたことは驚くべきことではなく、視床下部下垂体副腎(HPA)軸および迷走抗炎症反射の活性化の、少なくとも2つの神経ホルモン抗炎症経路が示されている。

HPAは、視床下部の室傍核(PVN)を活性化し、最終的には下垂体前葉へのコルチゾール放出ホルモン(CRH)の放出を活性化する心理的ストレスを含むいくつかの刺激によって活性化される。CRHは、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の血中への放出を誘発して副腎皮質による糖質コルチコイドの産生を刺激する。 糖質コルチコイドは強力な抗炎症分子であり、その効果は、体内のほぼすべての細胞、特に自然免疫細胞によって発現される糖質コルチコイド受容体(GR)によるシグナル伝達を介して媒介される。

免疫細胞による炎症促進性サイトカイン産生の阻害は、HPA軸が活性化されるとグルココルチコイドによって媒介される。一方、迷走抗炎症反射はニコチン性ACh受容体(nAChR)上のアセチルコリン(ACh)の結合に依存する。迷走性抗炎症反射は主に迷走神経、セリアック神経節でのシナプス、脾臓に投影する交感神経線維によるノルエピネフリンの放出を伴う。ノルエピネフリンはCD4+T細胞の表面でβ2アドレナリン受容体(AR)に結合し、最終的にはnAChR依存機構を介して脾臓マクロファージによるAChの放出および炎症促進性サイトカイン産生の阻害を誘発する。近年、迷走神経の電気活性化を介して、この炎症性反射を治療に変換する取り組みが行われている。

さらにこの研究では、CSN電気刺激による炎症の軽減が、致死的LPS注射による内毒素性ショックのモデルに対して生理学的利益をもたらすかを調べた。その結果、意識的なCSN刺激が骨髄細胞におけるGRシグナル伝達を通じてLPS誘導TNF産生を減衰させることが実証された。また、CSN刺激がマウスの生存率を有意に増加させた。この生存率の強化は、免疫細胞のリクルートおよび活性化に重要な役割を果たすTNF、IL-6、IL-12およびIL-1βなどの炎症性サイトカインの産生減少に起因する可能性が高い。IL-12はナチュラルキラー(NK)細胞を活性化し、IL-1βおよびIL-6の両方が発熱活性を誘導する。TNFは、内皮細胞間の密着した結合の緩みを促進し、その結果、体液損失および多臓器不全を生じる。内毒症ショックは免疫系の調節不全の代表であり、CSN刺激がそれに対して保護効果を有することを示唆している。

しかし?

非常に興味深い研究であるが、マウスに対する実験であることから人への効果は不明。さらに、頸動脈洞神経の電気刺激も迷走神経の電気刺激も、その効果が持続するとは思われない。電気刺激による応答も、ホルモンの分泌もいずれ減弱すると予想される。したがって、膠原病などの自己免疫疾患に対して、一時的には症状を緩和したとしてもとても治癒できるとは考えにくい。

出典文献
Electrostimulation of the carotid sinus nerve in mice attenuates inflammation via glucocorticoid receptor on myeloid immune cells
Aidan Falvey, Fabrice Duprat, Thomas Simon, et al,
Journal of Neuroinflammation volume 17, Article number: 368 (2020)

コメント(0)