術前オピオイド療法は術後の様々なリスク因子となる [医学・医療への疑問]

術前慢性オピオイド療法(COT)は、急性術後疼痛を制御するために一般的に行われている方法だが、術後の様々なリスク増大への影響が懸念されている。本報告による、頚椎固定術患者の後ろ向き観察研究の結果、COTは、創傷合併症を含む有害事象、再手術、および術後の麻薬使用を増大させた。

対象は、2007年から2015年にかけて、原発性頸椎固定術を受けた患者20,730名のうちの基準を満たした10,539名。COTは、手術前3ヶ月以内のオピオイド処方の既往と定義。

COTによる90日間のED受診リスクのオッズ比は1.25 [odds ratio (OR): 1.25; P < 0.001]、創傷合併症のOR1.24 ( P = 0.036)。

COTの1年間の再手術リスクのOR1.17 (P = 0.043)、 ED受診のOR1.31 (1.31; P < 0.001)、創傷合併症などの有害事象はOR1.32 (P < 0.001)、感染症OR1.34 (P = 0.042)、便秘OR1.11 (P = 0.032)、神経学的合併症OR1.44(P = 0.01)、急性腎不全OR1.24(P = 0.004)、および静脈血栓塞栓症OR1.20 (P = 0.008)

2年間では、COTは、隣接するセグメントの椎体疾患を含む再手術など(OR:1.21; P = 0.005)、ED受診(OR: 1.32; P < 0.001)、および他の有害事象などの長期的リスク因子となっていた。

また、術前COTは頸部固定術後3ヶ月で、長時間の術後麻薬使用は30%増加に関連し(OR: 1.30;P < 0.001)、さらに、1 年で5倍(OR: 5.17;P < 0.001)、2 年では6倍弱 (OR: 5.75;P < 0.001)に関連していた。

本研究が後ろ向き観察研究であり、因果関係を問えないことを考慮しても、術前COTは、長期の術後オピオイド使用に強く関連する危険因子であり、頸椎融合後の短期的および長期的な有害事象にも関連していると考えられることから、この処置は有害でしかないと思われる。

出典文献
Preoperative Chronic Opioid Therapy Negatively Impacts Long-term Outcomes Following Cervical Fusion Surgery
Kalakoti, Piyush Volkmar, Alexander J. Bedard, Nicholas A. Eisenberg, et al.,
Spine: September 2019 - Volume 44 - Issue 18 - p 1279-1286
doi: 10.1097/BRS.0000000000003064

コメント(0)