高用量VDの補充は骨ミネラル密度を減少させる [薬とサプリメントの問題]

許容上限摂取量レベル以上のバイタミンD(VD)の継続的投与は、むしろ、投与量が多いほど骨ミネラル密度(BMD)を減少させた。

カナダ・カルガリーの単一センターで行われた(3年間;2013年8月~2017年12月)、二重盲検無作為化臨床試験。対象者は、コミュニティに住む骨粗鬆症のない311人の健康な成人(55~70歳, ベースラインで30〜125 nmol/Lの25−ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)を有する)。

介入は、VD3 を400 IU (n = 109)、 4000 IU (n = 100)、 および10 000 IU (n = 102)3 年間毎日摂取。.カルシウム補充は、1日あたりの食事摂取量が1200mg未満の参加者に提供された。

主要評価項目は、高解像度の周辺定量的コンピューター断層撮影で評価された橈骨と脛骨の全容積BMD、および有限要素解析による橈骨と脛骨の骨強度(破損荷重)の推定。

311人の参加者(53%の男性;平均[SD]年齢、62.2 [4.2]歳)のうち、287人(92%)が研究を完了。 25(OH)Dのレベルは、ベースライン、3か月、3年でそれぞれ、400-IUグループ76.3、76.7、77.4 nmol / L、4,000-IUグループ81.3、115.3、132.2。 10,000-IUグループ78.4、188.0、144.4。

試験終了時の輻射容積BMDは、400 IUグループと比較して、4,000 IUグループ-3.9 mg HA / cm3 (95% CI, −6.5 to −1.3)、10,000 IUグループ-7.5 mg HA / cm3(95% CI, −10.1 to −5.0 )、体積BMDの平均変化率は-1.2%(400 IUグループ)、-2.4%(4000 IUグループ)、および-3.5%(10 000 IUグループ)。

脛骨容積BMDの400 IUグループとの差は、4000 IUグループで-1.8 mg HA / cm3(95% CI, −3.7 to 0.1)、10000 IUグループで-4.1 mg HA / cm3(95% CI, −6.0 to −2.2)。平均パーセント変化値は-0.4%(400 IU)、-1.0%(4000 IU)、および-1.7%(10 000 IU)。 破損荷重の変化に有意差は認められない(半径; P =0.06; 脛骨; P =0.12)。

高用量のVD補充は、用量依存的に骨のミネラルを減少させた。VDやカルシウムの補充が骨折のリスクを改善しないことは、これまでにも多くの報告がある。しかし、12 ヶ月以上におよぶ許容上限摂取量レベル以上のVDの 投与の影響を評価した研究はほとんどないとのこと。アメリカの成人の 3% は、1 日あたり少なくとも 4000 IU のビタミン Dを 摂取していると報告されているが、本研究の結果から、骨の健康上の利点は考えられない。但し、有害であるかの判断にはさらなる研究が必要。

出典文献
Effect of High-Dose Vitamin D Supplementation on Volumetric Bone Density and Bone Strength
A Randomized Clinical Trial
Lauren A. Burt, Emma O. Billington, Marianne S. Rose, et al.,
JAMA. 2019;322(8):736-745. doi:10.1001/jama.2019.11889

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オゾンへの長期暴露は肺気腫および肺機能悪化に関連する [環境問題]

大気汚染物質の中でも、オゾン(O3)と窒素酸化物(NOx)への長期的暴露は肺気腫の増加、および肺機能(1秒量:FEV1)の悪化に関連していたと報告されている。

アメリカ6大都市圏における、5780人を対象とするコホート研究。調査期間は2000年から2018年。フォローアップの中央値10年間に、少なくとも1回CTスキャンを実施し、2772名は少なくとも1回スパイロメトリー評価を実施。

居住地固有の暴露大気汚染物質濃度(オゾン;O3、微粒子状物質;PM2.5、窒素酸化物;NOx、およびブラックカーボン)は、1999年からフォローアップの終わりまでにコホート特異的モニタリングを組み込んだ検証済みの時空間モデルによって推定。

肺気腫は、CTスキャン用いて参加者ごとに最大5回定量的に評価(2010-2018)。肺機能については、肺の閉塞性障害の指標の1つである1秒量(FEV1)を、スパイロメトリーを使用して参加者1人につき最大3回(2004-2018)測定。

肺気腫の中央値はベースラインで3%であり、10年間で平均0.58%ポイント上昇した。O3およびNOx濃度は肺気腫の増加と有意に関連し、PM2.5濃度は関連しなかった。

ベースライン時およびフォローアップ時の周囲のO3濃度はFEV1の大幅な減少と有意に関連していた(baseline: 13.41 mL per 3 parts per billion [95% CI, 0.7-26.1]; follow-up: 18.15 mL per 3 parts per billion [95% CI, 1.59-34.71]).

大気中オゾン濃度の増加によってFEV1が悪化することや死亡率が増加することは、これまでにも多くの研究報告によって示されている(私の、このブログでも指摘)。オゾンは死亡するような濃度では特有の臭気があるため異常を察知できる。したがって、実際に中毒による死亡例はない。しかし、全く感知できないような低レベルでも、呼吸器の炎症や呼吸機能の低下を引き起こし、その影響は呼吸器疾患患者ではさらに大きく死亡リスクは数倍高くなる。オゾンを発生させる空気浄化器なるものが家庭用に製造され販売されている。さらに、あろうことか、患者がいる病院の病室で使用されるなど、危険きわまりないことが行われている。それは医師の無知による認識不足と、この日本では一切規制されていないためである。

大気中(地上レベル)のオゾンは、強力な酸化作用を有する故に大気汚染物質であり、近年世界的な増加傾向にある。オゾンの増加(成層圏の話ではなく)は、人への健康被害だけでなく、すでに、植物生産量の世界的な減少をもたらし、その影響はCO2の増加による増産を上回っており、今後さらに被害が拡大することが欧米では指摘されていた。しかし、ヨーロッパの一部など、環境基準値を下げて規制している国もあるが、一方で、アメリカのように企業活動への影響を重視して、大統領が法改正を拒否した国や、日本のように全く黙殺している国もある。

引用文献
Association Between Long-term Exposure to Ambient Air Pollution and Change in Quantitatively Assessed Emphysema and Lung Function
Meng Wang, Carrie Pistenmaa Aaron, Jaime Madrigano, et al.,
JAMA. 2019;322(6):546-556. doi:10.1001/jama.2019.10255


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「偽性局在徴候」は責任病変の同定を困難にする [医学一般の話題]

“the false localizing sign ; 偽性局在兆候”は1904年にCollierによって提案された概念。従来より、神経学的兆候から予想される疾患局在と実際の病変部位が遠く離れている症例は知られていたが、その正確な機序は現在でも未解明。

偽性局在兆候は、神経学的検査の基礎となる古典的な臨床解剖学的パラダイムと矛盾しているため、誤診を引き起こす要因となる。これらの患者では、頚椎と腰椎の両方に異常な所見が見られる場合も多く、当初は腰椎の病変として診断され、不必要な外科的処置につながるなど適切な治療の妨げとなる。

実際は頚椎病変でありながら、初発症状として、腰痛、大腿および下腿の疼痛・シビレ、間欠性跛行などが認められた者は約5%に認められ、当初は腰椎疾患として誤診されていたと報告されている(1.)。また、C1-2レベルの頚部脊柱管の神経鞘腫によって右坐骨神経痛様の下肢痛を呈した症例の報告や、C4/5レベルの脊柱管狭窄症、広範の頸椎性脊椎症など(2.3.4.)、いずれの症例も最終的に、頚椎の手術や硬膜外ブロックなどによって症状が軽減している。

胸椎レベルでも、胸椎黄色靱帯骨化症における主訴の26%で背部痛や下肢痛を認めたと報告されている(5.)。

現時点で報告例は少ないものの、見過ごされている症例は少なからず存在するものと予想されることから、実際の頻度はもっと高い可能性がある。今後、神経学的検査によって責任病変を同定する上で、偽性局在徴候の存在を念頭に置くことが重要と思われる。

引用文献
1.
頚椎病変でありながら、腰椎病変と誤診された症例
本多文昭, 花北順哉, 髙橋敏行
脊椎脊髄, 28(3):179-184,2015

2
Sciatica caused by cervical and thoracic spinal cord compression.
Ito T1, Homma T, Uchiyama S.
Spine (Phila Pa 1976). 1999 Jun 15;24(12):1265-7.

3.
Cervical disc herniation causing localized ipsilateral popliteal pain.
Neo M1, Ido K, Sakamoto T, Matsushita M, Nakamura T.
J Orthop Sci. 2002;7(1):147-50.

4.
Cervical cord compression presenting with sciatica-like leg pain.
Chan CK1, Lee HY, Choi WC, Cho JY, Lee SH.
Eur Spine J. 2011 Jul;20 Suppl 2:S217-21. doi: 10.1007/s00586-010-1585-5. Epub 2010 Oct 13.

5.
Clinical analysis and prognositic study of ossified ligamentum flavum of the thoracic spine, J Neurosurg , 91(2uppl) : 231-226, 2001

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腸内細菌が作る酪酸は脱髄を抑制して再ミエリン化を促進する [医学一般の話題]

多発性硬化症(MS)を含む中枢神経系(CNS)の腸内細菌叢と疾患との関連が注目されている。MSの腸内微生物叢の分析で、短鎖脂肪酸(SCFA)を産生する種の減少が明らかになっている。しかし、これらの代謝産物が脱髄および再髄膜形成に及ぼす影響はMS病因の重要な要因ではあるが依然として不明。

腸内細菌は、消化できない食物繊維などを微生物発酵によって代謝して有用な代謝産物に作り替える働きをしている。これらの代謝産物は腸管粘膜でエネルギー源として使われて腸の収縮運動を高める作用や、炎症やアレルギーを抑制することが知られていた。そのメカニズムとして、腸内細菌が作る酪酸が免疫系に作用して炎症やアレルギーなどを抑える制御性T細胞(Treg細胞)を増やすことが報告されていた(1.)。

本研究では、脱髄と腸内細菌叢の関係を調べるために、非吸収性抗生物質またはSCFAの混合物をクプリゾン誘発脱髄を有するマウスに投与し、脱髄とミクログリアの蓄積を評価した。脱髄または再髄膜化に対するSCFAの直接的な影響を分析するため、リソレシチンを用いて組織性小脳スライス培養における脱髄を誘導し、オリゴデンドロサイト前駆細胞の脱髄および成熟を分析した。

抗生物質の経口投与はクプリゾン誘発脱髄を有意に増強した。脱髄病変へのミクログリアの蓄積は影響を受けなかったが、 butyrateの経口投与は著しく脱髄を改善した。
さらに、butyrate(ブチ酸塩:酪酸)処理がリゾレシチン誘発脱髄を大幅に抑制し、ミクログリアの存在下または非存在下で組織スライス培養における再ミエリン化の強化を示した。butyrate処理は、未熟なオリゴデンドロサイト(乏突起膠細胞)の分化を促進した。

MS患者において、短鎖脂肪酸(SCFA)を産生するクロストリジウム属クラスターIVおよびXIVaに属する細菌の減少が見られている(2.)。また、SCFA産生属であるブトリシモナスが、治療および未治療のMS患者で減少している(3.)。

いくつかの報告(4.5.6.)では、SCFAがヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害を通じてTreg細胞を誘導することによって腸の免疫を調節することが実証されている。butyrateはまた、樹状細胞(DC)上で発現されるGPR109aのリガンドとして作用し、Treg細胞の増殖につながるレチノイン酸およびIL-10の産生を誘導することも報告されている(7.)。

最近、SCFAの経口投与が実験自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の疾患重症度を改善したことも報告されている(8.9.)。無菌マウスにおいて、血液脳関門(BBB)の透過性が増加し、SCFA産生細菌移植によって改善する(10.)など、CNSに対するSCFAの様々な効果が示されている。

SCFAは、腸の健康の維持、エネルギー代謝の制御、および免疫系の調節に多くの重要な役割を有しており、腸内環境がCNSの恒常性に与える影響に関するメカニズムが明らかになりつつある。

本研究結果によって、腸内微生物叢と中枢神経系の代謝物間の相互作用の新しいメカニズムに光を当て、MSの脱髄と再ミエリン化を制御する治療戦略となる可能性がある。

Butyrateは、食物線維の細菌発酵に起因する大腸内部の主要な代謝産物であり、腸上皮細胞のエネルギー源(約70%を占める)となることや、腸のバリア機能を高める作用がある。また、大腸炎症反応の重要なメディエーターであり、炎症媒介性潰瘍性大腸炎(UC)やクローン病、および大腸癌の予防および治療の可能性について示唆されている。

出典文献
Butyrate suppresses demyelination and enhances remyelination
Tong Chen, Daisuke Noto, Yasunobu Hoshino, Miho Mizuno, Sachiko Miyake
Journal of Neuroinflammationvolume 16, Article number: 165 (2019)

引用文献
1.
Commensal microbe-derived butyrate induces colonic regulatory T cells.
Furusawa, Y., Obata, Y., Fukuda, S., Endo, T. A., Nakato, G., et al.,
Nature 10.1038/nature12721. 2013.

2.
Miyake S, Kim S, Suda W, Oshima K, Nakamura M, Matsuoka T, et al. Dysbiosis in the gut microbiota of patients with multiple sclerosis, with a striking depletion of species belonging to clostridia XIVa and IV clusters. PLoS One. 2015;10:1–16.

3.
Jangi S, Gandhi R, Cox LM, Li N, von Glehn F, Yan R, et al. Alterations of the human gut microbiome in multiple sclerosis. Nat Commun. 2016;7:12015.

4.
Canfora EE, Jocken JW, Blaak EE. Short-chain fatty acids in control of body weight and insulin sensitivity. Nat Rev Endocrinol. 2015;11:577–91.

5.
Smith PM, Howitt MR, Panikov N, Michaud M, Gallini CA, Bohlooly-Y M, et al. The microbial metabolites, short-chain fatty acids, regulate colonic Treg cell homeostasis. Science. 2013;341:569–73.

6.
Arpaia N, Campbell C, Fan X, Dikiy S, Van Der Veeken J, Deroos P, et al. Metabolites produced by commensal bacteria promote peripheral regulatory T-cell generation. Nature. 2013;504:451–5.

7.
Singh N, Gurav A, Sivaprakasam S, Brady E, Padia R, Shi H, et al. Activation of Gpr109a, receptor for niacin and the commensal metabolite butyrate, suppresses colonic inflammation and carcinogenesis. Immunity. 2014;40:128–39.

8.
Mizuno M, Noto D, Kaga N, Chiba A, Miyake S. The dual role of short fatty acid chains in the pathogenesis of autoimmune disease models. PLoS One. 2017;12:1–15.
Google Scholar

9.
Haghikia A, Jörg S, Duscha A, Berg J, Manzel A, Waschbisch A, et al. Dietary fatty acids directly impact central nervous system autoimmunity via the small intestine. Immunity. 2015;43:817–29.

10.
Braniste V, Al-Asmakh M, Kowal C, Anuar F, Abbaspour A, Tóth M, et al. The gut microbiota influences blood-brain barrier permeability in mice. Sci Transl Med. 2014;6:263ra158.

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遺伝学的な血清Caの高値は臨床学的に骨折予防効果はない [栄養の話題]

正常カルシウム値を有する集団において、血清カルシウムを増加させる遺伝的素因は、骨密度の上昇とは関連せず、骨折に対する臨床的に意味のある保護効果をもたらさないことが、カナダ・マギル大学のAgustin Cerani氏らの検討で示された。

脆弱性骨折は、生活の質と死亡率に影響を与えるために世界的な問題となっており、カルシウム補充は骨粗鬆症や骨折リスクを軽減するための予防として治療ガイドラインによって推奨されている。NHANESの研究では、アメリカ人の53%がカルシウムサプリメントを使用し、43%が毎日服用している。

しかし、正常なカルシウムレベルを有する個人において、血清カルシウムレベルの増加は骨ミネラル密度の増加と関連しておらず、骨折に対する臨床的な保護を提供しない。最近のメンデリアンランダム化分析でも、骨折リスクに対し、持続的な乳製品摂取による保護効果がないことも確認されている。5284

本研究は、Mendelian randomisation studyによって、血清カルシウム濃度の遺伝的増加が骨密度の改善と骨粗鬆症性骨折の減少に関連しているかを調査したもの。

61,079個体の血清カルシウム値のゲノムワイド関連メタ解析データを用いて、血清カルシウム値の遺伝的決定因子を同定した。次に、UK Biobank研究のデータを使用して、血清カルシウム値上昇の遺伝的素因と、平均カルシウム値が正常範囲の42万6,824例の骨密度(踵骨の超音波測定)との関連を評価。

さらに、平均カルシウム値が正常範囲の骨折症例76,549例と対照471,64例を含む24のコホートとUK Biobankのデータを用いて、骨折のゲノムワイド関連メタ解析を実施。

遺伝的に誘導された血清カルシウム値の標準偏差の上昇(0.13 mmol / Lまたは0.51 mg / dL)は、推定骨塩密度の増加 (0.003 g/cm2, 95% confidence interval −0.059 to 0.066; P=0.92)、および逆分散加重メンデルのランダム化分析における骨折リスクの低下 (odds ratio 1.01, 95% confidence interval 0.89 to 1.15; P=0.85)とは関連しなかった。 潜在的な多面的作用(pleiotropic effect)を探索するために、3つの感度分析を行ったがエビデンスは得られなかった。

さらに、従来の複数の研究では、カルシウム補充による血清カルシウムの増加は冠動脈疾患や心筋梗塞発症および死亡率リスクの増加と関連し(1.2.)、脳卒中リスクの増加とも関連していることが示唆されている(3.4.)。

一般的な集団において、長期間カルシウムサプリメントを使用する広範な努力が骨の健康増進に実質的な影響を与える可能性が低いことを示唆している。さらに、同じ遺伝的素因に由来する血清カルシウムの増加が冠状動脈疾患のリスクの増加に関連していることを考えると、カルシウム補充は利益よりも多くのリスクを提供する可能性が高い。

カルシウムは多くの生物学的プロセスに不可欠であり、血清濃度は厳しく調節されています。排泄量に対する補充は必要ですが、必要なカルシウム量は結論は出ていません。

但し、本研究では、カルシウムレベルと研究結果との線形効果を仮定し、正常な血清カルシウムレベルの一般集団の個人を対象としてテストしている。著者は「生涯にわたる遺伝学的に誘導された血清カルシウムの増加が、長期的なカルシウム剤の補充の効果をどの程度再現するかは不明である」と、述べている。

つまり、正常な血清カルシウムレベルの個人におけるさらなる増加の効果に関する洞察を提供したものであり、骨粗鬆症を発症した者は含まれない。したがって、本研究結果によって、低カルシウム血症を含むカルシウム補充の影響を踏まえた骨ミネラル密度と骨折リスクに関する洞察は得られないことに留意する必要があると、考えられる。


出典文献
Genetic predisposition to increased serum calcium, bone mineral density, and fracture risk in individuals with normal calcium levels: mendelian randomisation study
Agustin Cerani, Sirui Zhou, Vincenzo Forgetta, et al.,
BMJ 2019; 366 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.l4410 (Published 01 August 2019)
Cite this as: BMJ 2019;366:l4410

二次文献
1.
Reid IR, Gamble GD, Bolland MJ.,
Circulating calcium concentrations, vascular disease and mortality: a systematic review. J Intern Med2016;279:524-40. doi:10.1111/joim.12464. pmid:26749423

2.
Larsson SC, Burgess S, Michaëlsson K.,
Association of Genetic Variants Related to Serum Calcium Levels With Coronary Artery Disease and Myocardial Infarction. JAMA2017;318:371-80. doi:10.1001/jama.2017.8981. pmid:28742912

3.
Foley RN, Collins AJ, Ishani A, Kalra PA.,
Calcium-phosphate levels and cardiovascular disease in community-dwelling adults: the Atherosclerosis Risk in Communities (ARIC) Study. Am Heart J2008;156:556-63. doi:10.1016/j.ahj.2008.05.016. pmid:18760141

4.
Rohrmann S, Garmo H, Malmström H, et al.,
Association between serum calcium concentration and risk of incident and fatal cardiovascular disease in the prospective AMORIS study. Atherosclerosis2016;251:85-93. doi:10.1016/j.atherosclerosis.2016.06.004 pmid:27289190

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高血糖急性虚血性脳卒中患者への集中的血糖コントロールは有害 [医学一般の話題]

急性虚血性脳卒中患者における高血糖は一般的であり、より不良な転帰に関連付けられているものの高血糖に対する集中治療の有効性は不明。本研究は、無作為化臨床試験によって、高血糖に対する集中的治療と標準的治療の効果を比較したもの。

参加者は、2012年4月から2018年8月までに、アメリカの63サイトで脳卒中発症から12時間以内に登録された虚血性脳卒中患者。フォローアップは2018年11月に終了。対象者は、適格性基準を満たした1151人の成人患者。

コンピュータ化された意思決定支援ツール(目標血糖濃度80-130 mg / dL [4.4-7.2 mmol / L])を使用した連続静脈内インスリン投与の集中治療群(n = 581)、または、スライディングスケールによってインスリンを皮下投与(目標血糖濃度80-179 mg / dL [4.4-9.9 mmol / L])する標準治療群(n = 570)の2群に、無作為に分類して72時間実施。

メインアウトカムは、改変ランキンスケールスコア(脳卒中障害尺度:0[症状なしまたは完全に回復した]から6[死亡]まで)に基づいて、90日間における良好な結果を示した患者の割合で評価(ベースラインの脳卒中重症度に合わせて調整)。

1151名の平均年齢は66歳(SD, 13.1 years)、529名 [46%]が女性、920名[80%]が糖尿病、調査を完了したのは1118名 (97%)。平均血糖値は、集中治療群で118 mg/dL (6.6 mmol/L)、標準治療群では 179 mg/dL (9.9 mmol/L)。

良好な結果を達成した患者の割合は集中治療群で20.5%、標準治療群で21.6%で、両群に統計的有意差は無し。

低血糖ないしはその他の有害事象で治療を中止した患者は、集中治療群で65/581名 (11.2%)、一方、標準治療群では18/570名(3.2%)。重篤な低血糖を起こした患者は集中治療群のみで15/581名[2.6%]。

結論として、集中的治療および標準的治療による最大72時間の血糖制御は、90日間で機能的結果に有意な差をもたらさなかっただけではなく、集中治療は有害事象が多く、さらに、重篤な低血糖が認められた。

つまり、急性期虚血性脳卒中患者における高血糖は、むやみに下げることはかえって有害であると言える。

出典文献
Intensive vs Standard Treatment of Hyperglycemia and Functional Outcome in Patients With Acute Ischemic Stroke
The SHINE Randomized Clinical Trial
Karen C. Johnston, Askiel Bruno, Qi Pauls, et al.,
JAMA. 2019;322(4):326-335. doi:10.1001/jama.2019.9346

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