多価不飽和脂肪酸の増加は2型糖尿病の予防および治療に効果無し [栄養の話題]

長鎖オメガ-3脂肪酸の増量は、糖尿病にほとんどまたは全く影響を与えなかった(relative risk 1.00, 95% confidence interval 0.85 to 1.17; 58 643 participants, 3.7% developed diabetes)。

また、α-リノレン酸、オメガ-6、および全多価不飽和脂肪酸(PUFA)の影響については証拠が非常に低品質であったため不明ではあるが、ほとんどまたは全く効果は認められなかった。

さらに、サブグループの研究では、4.4g/dを超える長鎖オメガ-3の用量は、2型糖尿病診断相対リスクが1.86と2倍弱高くなった(type 2 diabetes mellitus diagnosis relative risk 1.86, 0.08 to 44.89; 1 trial with 139 participants; HbA1c mean difference 0.61%, −0.44% to 1.67%; 2 trials with 53 participants; HOMA-IR mean difference 3.00, −2.78 to 8.78; 1 trial with 37 participants; plasma glucose mean 1.12, 0.04 to 2.19, mmol/L; 2 trials with 69 participants)。

研究デザインは、システマティックレビューとメタアナリシスで、対象となった報告は
83件の無作為化対照試験(主に長鎖オメガ-3の効果を評価)。

データソースは、Clinicaltrials.gov、Medline, Embase, Cochrane CENTRAL, WHO International Clinical Trials Registry Platform, Clinicaltrials.gov、および関連する系統的レビュー。統計分析は、相対リスクと平均差を用いたランダム効果メタアナリシスと感度分析が含まれ、研究の偏は“Funnel plots”で評価している。

2型糖尿病は、血糖コントロールが悪化して異脂肪血症(高トリグリセリドおよびより低濃度のHDLコレステロール)を引き起こし、インスリンの産生および作用欠陥が原因で発生する。糖尿病の予防および2型糖尿病患者に総脂肪と飽和脂肪酸摂取の減量と、多価不飽和脂肪酸に置き換えることが推奨されている。

PUFAには、オメガ3、オメガ-6、およびオメガ-9脂肪酸が含まれる。オメガ3脂肪酸は、一般的に魚油に含まれるエイコサペンタエニン酸やドコサヘキサエイン酸などの長鎖オメガ-3脂肪酸、およびいくつかの植物油(亜麻仁および菜種またはカノーラを含む)に含まれるα-リノレン酸を含む。多くの植物油はオメガ6脂肪酸、特にリノール酸が豊富。

イギリス政府は、すべての成人がPUFAとしてエネルギーの6.5%を消費することを推奨し、魚食を提案している。しかし、潜在的なメチル水銀のために、妊娠中および授乳中は制限される(1.2.)。アメリカ糖尿病協会は、長鎖オメガ-3、およびαリノレン酸を含まない魚の摂取量が多い地中海スタイルの食事を支持している。

しかし、糖尿病のコントロールに対する長鎖オメガ3脂肪酸の影響に関する懸念は長い間存在しており、実験的研究では、PUFAおよびオメガ3の補充と食事が有意に空腹時グルコースを上昇させることが示唆されている(3.4.)。メチル水銀と推奨閾値を超えるポリ塩化ビフェニールレベルは、魚介類および魚油サプリメントで報告されている。上昇した水銀レベルはインスリンシグナル伝達を中断し、空腹時グルコースを上げ、マウスモデルにおいて、有機汚染物質の体濃度はアメリカにおける糖尿病の有病率と相関している(5.)。

本研究結果は、オメガ-3、オメガ-6、または全PUFAを増加させることが、2型糖尿病の予防および治療に効果が無いことを示唆している。

出典文献
Omega-3, omega-6, and total dietary polyunsaturated fat for prevention and treatment of type 2 diabetes mellitus: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials
Tracey J Brown, Julii Brainard, Fujian Song, Xia Wang, Asmaa Abdelhamid, Lee Hooper,
BMJ 2019; 366 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.l4697 (Published 21 August 2019)
Cite this as: BMJ 2019;366:l4697

1.
National Institute for Health and Care Excellence
Cardiovascular disease: risk assessment and reduction, including lipid modification.NICE, 2014

2.
Nutrition Science Team
Government Dietary Recommendations: Government recommendations for energy and nutrients for males and females aged 1 – 18 years and 19+ years. Public Health England, 2016.

3.
Glauber H, Wallace P, Griver K, Brechtel G
Adverse metabolic effect of omega-3 fatty acids in non-insulin-dependent diabetes mellitus. Ann Intern Med1988;108:663-8. doi:10.7326/0003-4819-108-5-663 pmid:3282462CrossRefPubMedWeb of ScienceGoogle Scholar

4.
Vessby B, Karlström B, Boberg M, Lithell H, Berne C
Polyunsaturated fatty acids may impair blood glucose control in type 2 diabetic patients. Diabet Med1992;9:126-33. doi:10.1111/j.1464-5491.1992.tb01748.x pmid:1563246

5.
Chen YW, Huang CF, Tsai KS, et al
The role of phosphoinositide 3-kinase/Akt signaling in low-dose mercury-induced mouse pancreatic β-cell dysfunction in vitro and in vivo. Diabetes2006;55:1614-24. doi:10.2337/db06-0029 pmid:16731823
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