空軍パイロットの無症候性若年成人における脊髄MRI所見から読み解く事 [腰痛関連]

イタリア空軍アカデミー士官候補生を対象とする、無症候性若年成人(18~22歳)の脊髄MRIの評価では、350名中270名(77%)と、高率に異常所見が認められた。

106名 (30%)が少なくとも1椎間板の脱水を有し、47名(13%)が少なくとも 1椎間板の狭窄、176名(49%)が椎間板の膨隆、62名(18%)が椎間板の突出、28名(8%)が椎間板の脱出、45名(13%)が低レベルの椎間板脊椎症、および、これらの12名が脊椎関節脊椎症を示し、2名(<1%)が無症候性椎体骨折を有していた。

本論文では、高い加速力に曝されたパイロットにおいて、成人集団と同様の高いMRI所見が若い無症候性被験者の集団で検出されたことより、空軍アカデミーは、軍のパイロットを選択する際に候補生の脊椎疾患を排除することが重要であるとしている。

しかし、医学的には、これらの被験者について今後5年10年と長期間フォローする前向き研究が必要だろう。

飛行中の戦闘機による加速度が脊椎への負荷となって椎間板へダメージを与えることが確認された。したがって、作業やスポーツなどによる脊椎への負荷も同様に椎間板へのダメージとなることは予想される。しかし、そのことが直ちに腰痛の原因となるとは言えない。

従来、脊髄MRI所見における異常所見が無症候性の被験者で頻繁に検出されているように、椎間板の変形イコール腰痛症の発症とはならない。上記のような異常所見を示しながらも、全ての被験者が無症状であったことにこそ重要な問題点があると考えられる。

出典文献
High Prevalence of Spinal Magnetic Resonance Imaging Findings in Asymptomatic Young Adults (18–22 Yrs) Candidate to Air Force Flight
Romeo, Valeria, Covello, Mario, Salvatore, Elena, Parente, Chiara Anna, et al.,
Spine: June 15, 2019 - Volume 44 - Issue 12 - p 872-878
doi: 10.1097/BRS.0000000000002961

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