ヒト由来モノクローナル抗体のシンパネマブは早期パーキンソン病に無効 [医療クライシス]

凝集α-シヌクレインはパーキンソン病の病因において重要な役割を果たしており、α-シヌクレインに結合するヒト由来のモノクローナル抗体であるシンパネマブは、パーキンソン病の疾患修飾治療薬として評価されていた。しかし、多施設二重盲検第2相試験では全く効果は認められず、72 週目の中間解析後に研究は中止された。

登録された参加者は357 人。その中の、100 人が対照群、55 人が 250 mg シンパネマブ群、102 人が 1250 mg 群、100 人が 3500 mg 群に割り当てられた。

52週間の多施設二重盲検第2相試験では、早期パーキンソン病の参加者に、プラシーボボ(対照)またはシンパネマブを4週間ごとに250mg、1250mg、または3500mgの用量で静脈内注入し、その後、最大112週間の積極的な治療用量盲検延長期間を受けるよう、2:1:2:2の比率でランダムに割り当てた。

主要エンドポイントは、運動障害学会が後援した統一パーキンソン病評価尺度(MDS-UPDRS)の合計スコア(範囲、0〜236、スコアが高いほどパフォーマンスが悪いことを示す)のベースラインからの変化。

二次エンドポイントには、ドーパミントランスポーター単一光子放出コンピュータ断層撮影法(DaT-SPECT)で評価した、MDS-UPDRSサブスケールスコアおよび線条体結合が含まれていた。

MDS-UPDRS スコアの 52 週までの変化は、対照群で 10.8 ポイント、250 mg 群で 10.5 ポイント、1250 mg 群で 11.3 ポイント、3500 mg 群で 10.9 ポイント。

調整平均差は対対照群で、−0.3 points [95% confidence interval {CI}, −4.9 to 4.3], P=0.90、0.5 points [95% CI, −3.3 to 4.3], P=0.80、および0.1 point [95% CI, −3.8 to 4.0], P=0.97, respectively)。

二次エンドポイントの結果も、一次エンドポイントの結果と同様。

最近騒がれている、アルツハイマー病の原因として信じられていたアミロイドβ仮説の論文における捏造問題は、これまでに投じた医薬品開発を含む数千億円の研究費が無駄であったことを明らかにした。以前の、「スタップ細胞の捏造問題」と同様に、論文の画像がつぎはぎされていたことに長い間気づかなかった。ネイチャーの査読はその程度かとあきれる。

また、他の例では、急性脳卒中に対する有効な治療法も限られており、これまでに、治療薬の開発に何十億ドルもの費用が投入されてきたが、ヒトに対する効果は一切示されていない。虚血性脳卒中の血栓を溶かして血流を再開させる薬も、神経細胞の機能回復には効果がなく、現在、脳卒中研究の「核の冬」と呼ばれているらしい。

少なくとも、脳疾患に対する薬物治療は既に破綻しており、医学は曲がり角にきているように見える。それでも、古代の思想そのままの理屈に些末な医学知識を後付しただけの、全くナンセンスな中医学・漢方よりは遥にましではあるが。

出典文献
Trial of Cinpanemab in Early Parkinson’s Disease
Anthony E. Lang, Andrew D. Siderowf, Eric A. Macklin, Werner Poewe, et al.
N Engl J Med 2022; 387:421-432 DOI: 10.1056/NEJMoa2202867