膝OAに対する高強度筋力トレーニングに効果無く有害事象が多い [膝OA]

変形性膝関節症(膝OA)の患者に対する、高強度筋力トレーニング群(n = 127)、低強度筋力トレーニング群(n = 126)、および対照群(注意制御n = 124)の効果を調べた研究の結果、何れも、有意差は認められなかった。

また、研究に関連する非重篤な有害事象が87件あり、高強度群は53件、低強度群30件、対照群では4件であった。具体的な内容を知りたいが、この要約には記載が無いため不明。

西オンタリオマクマスター大学変形性関節症指数(WOMAC)の膝の痛み(0:べスト-20: 最悪)、臨床的に重要な差は最小限MCID、2と膝関節圧迫力で評価。

ランダム化された377人の参加者(平均年齢65歳、女性151人[40%])のうち、320人(85%)が試験を完了。18か月のフォローアップでのWOMAC疼痛スコアは、高強度群と対照群の間で統計的有意な差はなく(5.1対4.9;調整された差、0.2; 95% CI、-0.6〜1.1; P =0.61)、高強度群と低強度群(5.1対4.4;調整された差、0.7; 95%CI、-0.1〜1.6; P =0.08)。

平均膝関節圧迫力は、高強度群と対照群の間で統計的に有意差は無く(2453N対2512N;調整された差、-58; 95%CI、-282〜165 N; P =0.61)、高強度群と低強度群(2453N対2475N;調整された差、-21; 95%CI、-235〜193 N; P = 0.85)でも同様に差は無かった。

この報告の冒頭に、「大腿筋の衰弱は、膝の不快感と変形性関節症の進行に関連しています。」と記されているが、私は大きな勘違いではないかと考えている。私が最近上梓した「膝痛の鍼治療」でも述べているが、膝OAの患者が、整形外科医に言われて大腿四頭筋の筋力強化を行った場合、その多くは痛みが悪化する。負荷を弱めにして運動を行えば有効であるが、この程度の訓練で筋力が強化される訳では無く、膝関節に対する適度の負荷と関節運動による生理的刺激によって膝関節が修復されるものと推測している。この事は、半月板損傷や十字靱帯損傷においても実証されている。

膝痛の患者では、大腿四頭筋に過緊張と圧痛を伴う硬結が認められる。私は、このような患者に対し、治療には緊張の緩和が重要であり、サイベックスや重りを使用した筋力強化はしないように説明している。それは、この研究における、膝OAの成人における低強度筋力トレーニングまたは注意制御と比較して、高強度筋力トレーニングは推奨できないとする結論と同様である。

出典文献
Effect of High-Intensity Strength Training on Knee Pain and Knee Joint Compressive Forces Among Adults With Knee Osteoarthritis
The START Randomized Clinical Trial
Stephen P. Messier, Shannon L. Mihalko, Daniel P. Beavers, et al,
JAMA. 2021;325(7):646-657. doi:10.1001/jama.2021.0411

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