抗ウイルス療法を受けた慢性C 型肝炎患者はパーキンソン病発症リスクが低い [免疫・炎症]

インターフェロン-α-2b およびリバビリンで治療したC 型肝炎ウイルス (HCV) 患者は、未治療の患者よりもパーキンソン病(PD)発症リスクが低いことが報告されている。この知見は、HCV がパーキンソン病の危険因子である可能性を支持するとともに、"抗ウイルス療法が罹患リスクを低減する可能性を示している。

台湾国民健康保険調査データベースによるコホート研究。分析した患者は合計188,152名。
PD の発症密度は処置群で、1000人- 年あたり 1.00 (95% CI, 0.85-1.15)、未処置群では1.39 (95% CI, 1.21-1.57)。

抗ウイルス療法のハザード比 (HR)は0.75(95% CI, 0.59-0.96)で、リスクは25%減少。5年間のフォローアップにおいて統計的有意性に達し、この利点はフォローアップ終了(最大11年)まで増加し続けた (HR, 0.71; 95% CI, 0.58-0.87)。

神経炎症はPDの病理学的に特徴的な所見として示唆されており、先天性免疫反応が PD においてニューロンの喪失をもたらす可能性がある。また、最近の研究では、C 型肝炎ウイルス (HCV) が中枢神経系に侵入する可能性があること、また、HCVおよびパーキンソン病 (PD) の両方において、炎症性バイオマーカーの過剰発現を共通に有していることが示されている。

さらに、B型肝炎ウイルスではなく、C型肝炎ウイルス粒子が中脳ニューロン - グリア共培養において、チロシンヒドロキシラーゼ(+)ニューロンの喪失を誘導することが見出され、ドーパミン細胞に対するHCVの神経毒性効果が示唆されている(Wu WY, et al.,2015)。

脳、血液細胞、肝臓における HCV の遺伝子型は多様であり、脳特異的変異を伴うウイルスは脳内で生存する可能性がある。これらの研究は、HCV 感染と PD 発生との関連の疫学的所見を支持する。さらに、インターフェロンは血液脳と血液脊髄障壁を通過することができることが確認されている。従って、抗ウイルス療法はHCV によって引き起こされる中枢神経系損傷を減少させる可能性がある。

出典文献
Association of Antiviral Therapy With Risk of Parkinson Disease in Patients With Chronic Hepatitis C Virus Infection
Wey-Yil Lin, Ming-Shyan Lin, Yi-Hsin Weng, et al.,
JAMA Neurol. Published online June 5, 2019. doi:10.1001/jamaneurol.2019.1368

Hepatitis C virus infection: a risk factor for Parkinson's disease.
Wu WY, Kang KH, Chen SL, Chiu SY, et al.,
J Viral Hepat. 2015 Oct;22(10):784-91. doi: 10.1111/jvh.12392. Epub 2015 Jan 21.

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