身体的不活動は痴呆のリスクと関連していなかった [医学一般の話題]

心血管代謝性疾患を発症した身体障害者のサブグループでは過剰代謝性認知症リスクの徴候は観察されたが、身体的不活動は全原因痴呆またはアルツハイマー病とは関連しなかった。

19の前向き観察コホート研究のメタ分析によって、心血管代謝性疾患の役割および認知症の前臨床(前駆期)段階における身体活動の変化から生じる逆因果関係のバイアスに注意して、身体的不活動が認知症の危険因子であるかを検討。

研究集団は、当初認知症のなかった404,840名(平均年齢45.5歳、57.7%女性)で、研究参加時に身体的不活動性の測定を行った。6,000万人年あたり、全原因痴呆2044件。認知症のサブタイプに関するデータでは、アルツハイマー病の症例数は520万人年あたり1,602名。

痴呆診断の10年未満前(すなわち、痴呆の前臨床段階)に測定した場合、身体的不活動は全原因痴呆の発生率のハザード比1.40(95% confidence interval 1.23 to 1.71)、およびアルツハイマー病1.36(1.12 to 1.65)と、増加。

しかし、認知症発症の10年以上前の身体活動を評価することによって逆因果関係を最小化した場合、それぞれのハザード比は1.01 (0.89 to 1.14)および 0.96 (0.85 to 1.08)で、身体活動的な参加者と非活動的な参加者の間で認知症リスクの差は観察されなかった。

尚、身体的不活発は、偶発的糖尿病(hazard ratio 1.42, 1.25 to 1.61)、冠状動脈性心臓病(1.24, 1.13 to 1.36)、および脳卒中(1.16, 1.05 to 1.27)と、リスク増加と一貫して関連していた。

心臓代謝性疾患が認知症に先行した人々の間では、身体的不活動は認知症と有意には関連していなかった(認知症発症前1.10、0.79〜2.14の身体活動に対するハザード比)。

従来の、身体的非活動性と痴呆との直接的関連性を調べた研究のほとんどはフォローアップ期間が10年未満であった。これは、認知症の前臨床または prodromal 段階で身体活動性の評価が行われたことを意味する。本研究では、このような不確実性に対処するために、罹患率と死亡率を長期にわたってフォローアップした19コホート研究の個人レベルのデータを用い、逆因果関係バイアス(reverse causation bias)を減らして運動不足と認知症との関連を調査した。

出典文献
Physical inactivity, cardiometabolic disease, and risk of dementia: an individual-participant meta-analysis
Mika Kivimäki, Archana Singh-Manoux, Jaana Pentti, Séverine Sabia, et al.,
BMJ 2019; 365 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.l1495 (Published 17 April 2019)
Cite this as: BMJ 2019;365:l1495

コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。