適度なナトリウムと高カリウム摂取で心血管死リスクは低下する [栄養の話題]

現在の、WHOによるナトリウムの1日の摂取量の勧告である<2.0g、およびカリウム>3.5gを検証した調査の結果、ナトリウムおよびカリウムの連結排泄カテゴリーの場合、ナトリウム排泄3-5g/日と高カリウム排泄 (コホートの 21.9%) を有する群で死亡および心血管イベントのリスクは最低であった。

研究デザインは、国際前向きコホート研究。高、中、低所得18カ国における都市と農村地域からサンプリング。参加者は103,570名。朝の空腹時尿を測定した。

主要転帰は、多変数 Cox 回帰を使用して、推定24時間尿中ナトリウムおよびカリウム排泄量 (尿中排泄量の測定は摂取量の代用手段)を測定し、全原因死亡率と主要な心血管イベントとの関連を評価した。ナトリウムの排泄量 <3 g/日を低度、3-5g/日を中等度、>5 g/日を高度と分類し、ナトリウムとカリウムを連結して6つのカテゴリー変数を生成。

推定ナトリウムおよびカリウム尿排泄量は、それぞれ4.93g/日および2.12g/日。中央値8.2年のフォローアップ後、7,884(6.1%)名が死亡または主要な心血管イベントを経験。

推定ナトリウム排泄量4.99g/日と比較して> 7g/日では、一次複合結果のハザード比1.23(95% 信頼区間1.12 〜 1.34)、全原因死亡率1.36(1.20 〜 1.53)、主要な心血管イベント1.20(1.08 〜 1.34)、心血管死のオッズ比1.49(95% 信頼区間1.21 〜 1.84)、および致死的脳卒中のハザード比1.76(95% 信頼区間1.28 〜 2.41)。

同様に、より低い推定ナトリウム排泄量 (< 3 g/日)でも、一次複合結果のハザード比1.19(95% 信頼区間1.09 〜 1.30)、全原因死亡率1.26(1.12 に 1.41)、主要な心血管イベント 1.19(1.06 〜 1.33)、心臓血管死 1.35(1.09 〜 1.69)、および脳卒中1.24(1.05 〜 1.46)と高リスクに関連していた。

全原因死亡率のハザード比を示したグラフでは、4g/日以下になると急上昇し、2gで約1.4、1g以下では2.6にまで上昇している。したがって、WHOによる1日の摂取量の勧告である<2.0 gでは死亡リスクは約1.4倍になってしまう。

一方、1.5 g /日未満の推定カリウム排泄量と比較して、3 g/日では多変量解析の結果、心血管イベントおよび死亡リスクは0.83(0.73~0.94)であり、高カリウム排泄量で低くなった。この関連性は、死亡リスクのハザード比0.71(0.60 〜0.85)で、主要な心血管イベントのハザード比の0.87(0.75 〜 1.02)よりも低かった。

尚、癌では、ナトリウムもカリウムも、摂取量との関連性は認められなかった。

また、調査結果から、当然ながら、低ナトリウム摂取量<2 g/日と高カリウム摂取量>3.5 g/日の同時標的は極めて稀であることが示唆されている。

現在の、ナトリウム摂取量の目標に関する公衆衛生政策は、主として、血圧に対するナトリウムとカリウムの摂取量の変化による関係を評価したもので、小規模で短期の臨床試験に基づいている。<2.7 g/日および>5 g/日のナトリウム摂取量に関連付けられている心血管リスクの増加は、特に高血圧との関係であるように思われる。

但し、余計なお世話ながら、血漿ナトリウムおよびカリウムが異常値となる疾患ではそれぞれの問題を考慮しなければならない。

出典文献
Joint association of urinary sodium and potassium excretion with cardiovascular events and mortality: prospective cohort study
Martin O’Donnell, Andrew Mente, Sumathy Rangarajan, et al.,
BMJ 2019; 364 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.l772 (Published 13 March 2019)
Cite this as: BMJ 2019;364:l772

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