潰瘍性大腸炎患者に対する糞便微生物叢移植(嫌気的調製)の効果 [医学一般の話題]

嫌気的に調製した便を用いた糞便微生物叢移植(FMT)によって、活動性の潰瘍性大腸炎(UC)治療の有効性を評価した研究。

オーストラリアの3カ所の三次紹介センターにおける、多施設無作為二重盲検臨床試験。2013年6月から2016年6月までの、軽度から中等度の活動性のUCを有する患者、合計73名の成人。

介入は、大腸内視鏡検査を介して嫌気的に調製されたプールドナーFMT(n = 38)または自家FMT(n = 35)のいずれか。

メインアウトカムはステロイドフリーのUCの寛解であり、8週目にメイヨースコアの合計が2以下で、メイヨースコアの合計が1以下(0:疾患なし~12:最も重度)。 UCのステロイドフリー寛解は12ヶ月で再評価。セカンドアウトカムは有害事象。

無作為化された73名の患者(平均年齢39歳;女性33人)のうち69人(95%)が試験を完了した。結果が達成されたのは、自家FMTを受けた35名のうち3名(9%)に対し、プールされたドナーFMTを受けた38名の参加者のうち12名(32%)(difference, 23% [95% CI, 4%-42%]; odds ratio, 5.0 [95% CI, 1.2-20.1]; P = 0.03)

ドナーFMT後8週目に主要評価項目を達成した12名の参加者のうち5名(42%)が12ヶ月で寛解を維持した。ドナーFMT群で3件、自家FMT群で2件の重篤な有害事象があった。

軽度から中等度のUCの成人を対象としたこの予備的研究では、1週間の治療によって8週間後、自家FMTの9%と比較して嫌気的に調製されたドナーFMTは32%と高く、また、寛解した患者の42%が12ヶ月後にも寛解を維持しており、寛解の可能性が高かいと述べられている。

現在、UCには有効な治療法が無いことを考慮すれば、FMTへの期待は大きい。しかし、この結果の数値は決して高いとは思われない。さらに、患者自身のFMTにそもそも効果がある筈は無く、比較する意味があるとは考えられない。

最近では、一般の人の間でもFMTは話題になっている。ヒト腸マイクロバイオームの役割を理解することへの関心が高まっており、メタゲノム研究によって、腸内細菌種の豊かさと多様性が健康の指標である可能性が示唆されている。

治療としての糞便の使用については、下痢を含む様々な症状に対し、4世紀の中国のGe Hongによって記載されている(Zhang et al, 2012)。Eisemanらは、偽膜性大腸炎の治療法として糞便性浣腸を使用してFMTを導入した(Eiseman et al, 1958)。FMTに関するほとんどの臨床経験は、再発性または難治性のクロストリジウム - ディフィシル感染症(CDI)の治療に由来している(Smits et al, 2013)。

この治療は、先ず、自己免疫、代謝、および悪性疾患の家族歴のないドナーを選択し、あらゆる潜在的な病原体をスクリーニングする。糞便は、水または通常の食塩水と混合し、続いて粒子状物質を除去するための濾過工程によって調製される。混合物は、経鼻胃管、経鼻空腸管、食道胃十二指腸鏡検査、結腸鏡検査、または停留浣腸を通して投与する。

出典文献
Effect of Fecal Microbiota Transplantation on 8-Week Remission in Patients With Ulcerative Colitis
A Randomized Clinical Trial
Samuel P. Costello, Patrick A. Hughes, Oliver Waters, et al.,
JAMA. 2019;321(2):156-164. doi:10.1001/jama.2018.20046

Zhang F., Luo W., Shi Y., Fan Z., Ji G. (2012) Should we standardize the 1,700-year-old fecal microbiota transplantation? Am J Gastroenterol 107: 1755–1756.

Eiseman B., Silen W., Bascom G., Kauvar A. (1958) Fecal enema as an adjunct in the treatment of pseudomembranous enterocolitis. Surgery 44: 854–859.

Smits L., Bouter K., De Vos W., Borody T., Nieuwdorp M. (2013) Therapeutic potential of fecal microbiota transplantation. Gastroenterology 145: 946–953.

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