基準値以下でも微小粒子状物質とオゾン暴露の増加で死亡率は上昇する [環境問題]

大気汚染への短期的な暴露と死亡率の関係について調査した研究の結果、基準値以下であっても、微小粒子状物質とオゾン暴露の増加によって死亡率が上昇した。

PM2.5とオゾンに対する短期曝露(死亡の同じ日と1日前の日の平均曝露の平均)と2年間の死亡率との間の関連性を、ケース・クロスオーバー設計と条件付ロジスティック回帰汚染物質モデルによって推定。

短期間における、PM2.5 の10 μg/m3増加(adjusted by ozone)による相対リスクの増加は 1.05% (95% CI, 0.95%-1.15%)、温暖シーズンのオゾン濃度の10ppbの増加(adjusted by PM2.5)による1日当たりの死亡率増加は0.51% (95% CI, 0.41%-0.61%)。

1日の死亡率の絶対リスクは、1日、100万人当たり1.42(95%CI、1.29-1.56)および0.66(95%CI、0.53-0.78)であった。尚、この調査では、暴露 - 反応関係には閾値は認められなかった。

しかしながら、このような研究は目新しいものではない(私が以前に検索した文献だけでも400件近く存在する)。

以前に、私が、36件の同様の研究報告を統合して解析した結果では、10ppbの上昇24時間で死亡率は約1%増加し、呼吸器疾患では3%増加した。糖尿病では、10ppb8時間で8.28%増加したとする報告もあった。これらの数値を見ても実感が沸かないかも知れないが、インフルエンザの致死率がわずか 0.045%であること(WHO報告)と比較すると、影響の大きさが理解できるはずである。

* 因みに、1ppb とは、1000m×1000m×1000mの容積中に1辺が1cmの物質が1個存在することを意味している。

日本における環境基準値は0.06ppmで、作業環境におけるオゾン濃度基準では0.1pmを許容濃度としている。これは、1日8時間、週40時間程度の労働時間中に暴露する濃度の算術平均値がこれ以下であれば健康被害は起こらないとする考である。しかし、認識の誤りは明確である。知らぬ間に、作業環境の中で(例えば、電気溶接など)呼吸器や心臓血管にダメージを受けているのである(急性死するような濃度では、その臭いによって感知できる。)。

酸素分子が3つ結合したオゾンは強力な酸化剤であるため、地上レベルに存在するオゾンは大気汚染物質である。その酸化力と、反応後は無害なことから殺菌・消毒目的に使用されているが、人体に対しては有害である。室内の殺菌・浄化をうたい文句にしたオゾン発生器(日本では基準や規制が無い)は危険であり、健康被害の報告も散見されている。しかし、ほとんどの人は、自身の不調の原因として認識できていないのが現実である。

出典文献
Association of Short-term Exposure to Air Pollution With Mortality in Older Adults
Qian Di, Lingzhen Dai, Yun Wang, et al.,
JAMA. 2017;318(24):2446-2456. doi:10.1001/jama.2017.17923

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