免疫・炎症 ブログトップ
- | 次の25件

リウマチ発症に歯周病が関与する可能性 [免疫・炎症]

早期関節リウマチ(RA)患者の血清サンプルの調査で、歯周病(PD )の病原体である、ポルフィロモナス・ジンジバリス(PG)の抗体が増加しており、PG抗体陽性群はより大きなリウマチ因子値( P = 0.04 )と、炎症マーカー(赤血球沈降速度、またはESR)(P = 0.05 )を有しており、それらは疾患のより高い活動スコアを有する傾向があったと報告されています。

最近の報告では、RAの病因として、PDの病原体であるポルフィロモナス・ジンジバリス(PG)の証拠が増えています。 Pgは、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)シトルリンにアルギニン残基の、翻訳後修飾を触媒する酵素を有することが知られている唯一の原核生物です。シトルリンは、炎症部位においてより一般的に発生することがありますが、シトルリン化タンパク質(抗環状シトルリン化ペプチド(抗CCP)抗体)に対する抗体は、RAに特異的であり有用な診断マーカーです。 CCP抗体によって、より攻撃的な疾患を検出することができます。

さらに、Pgエノラーゼは、 DR4-IEトランスジェニックマウスの関節炎を引き起こすことが見出されており、 Pg感染は、コラーゲン抗体誘導関節炎を悪化させることも示されています。
 
この研究では、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)療法後の早期RA患者50名の血清サンプルと、後期RA患者、他の結合組織疾患( CTDS )患者、同年齢の健康な病院職員、および血液バンクドナーにおけるPG抗体反応と、その臨床関連を検討しています。

PGに対する正の免疫グロブリンG(IgG )抗体応答は、後期RA患者は43名中13名( 30% )、早期RA患者では50名中17名( 34% )でした。これらの抗体応答は、同様の年齢の健康的な病院職員や血液バンクドナーのものよりも有意に高い頻度と大きなものでした。

出典文献
Arvikar S, et al.
Clinical correlations with Porphyromonas gingivalis antibody responses in patients with early rheumatoid arthritis
Arthritis Res Ther 2013; DOI: 10.1186/ar4289.

慢性炎症はあらゆる疾患に関与する [免疫・炎症]

 慢性炎症は、癌の転移、動脈硬化、肥満などの、あらゆる疾患の発症・病態に関与していることが分かってきており、生命の根幹に関わるものとさえ言われています。

 アスピリンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)による発癌・転移の抑制効果は、癌の病態にも炎症が関与しているためです。

 COX-2、プロスタグランジン、NF-κB、STAT3などの炎症性メディエーターが活性化することで、癌細胞のアポトーシスが抑制され、増殖因子が間質から放出され、血管新生が誘導されます。癌細胞自身も炎症を引き起こし、持続的な炎症シグナルが癌のinitiationのステップになっています。

 慢性炎症とは少し違う概念に、「自然炎症」や「自己炎症」もあります。これらの炎症は急性炎症とは違う病態であり、生活習慣病、癌、自己免疫疾患、神経疾患などの、慢性的に長年月にわたって進行する病気に共通する、根本的なメカニズムの理解と治療に繋がると期待されています。

 慢性炎症を抑制する抗炎症性の免疫細胞には、Treg(T Regulatory Cells), MDSC(Myeloid-derived suppressor cells), M2マクロファージなどがあります。

 免疫の暴走は、例えば、敗血症でも起きています。敗血症の重症化は細菌などによるダメージではなく、好中球の過剰な活性化を起点とする免疫による自分自身への攻撃によるものです。

 興味深いことに、「松くい虫被害」も、線虫への過剰な反応によって自分の細胞を殺す働きを持つ遺伝子が多数働くことが原因であることを、森林総合研究所のチームが突き止めています。

 免疫システムの暴走を押さえることが、多くの疾患の治療に繋がります。これまでの、鍼灸刺激と免疫の関係を調べた研究の多くは、免疫の促進面ばかりに注目していました。これからの鍼灸は、免疫を抑制する刺激法を確率できるか否かがキーポイントになると考えられます。

Oshima, M, et al. : Cell, 87: 803-809, 1996
Greten, F, R, et al. : Cell, 118 : 285-296, 2004
Grivennikov, S, et al. : Cancer Cell, 15 : 103-113, 2009
Strober, W. et al. : J. Clin. Invest., 117 : 514-521, 2007

ROS・NOの抗ストレス・抗炎症機能 [免疫・炎症]

 有害性のみが話題となっている活性酸素(reactive oxygen species:ROS)ですが、実は巧妙に制御されたシグナル伝達によって、抗酸化や抗炎症作用に対する細胞応答の中心的役割を担っていることが解ってきています。

 ROSや一酸化窒素(NO)は生体分子に損傷をもたらす毒性因子としてだけではなく、その強力な酸化作用による抗菌活性から、マクロファージなどによる自然免疫機能にとって重要な存在でもあります。

 炎症部位などで生成されるROSとNOに依存して、cGMPのニトロ化体である8-nitro-GMPは作られます。この8-nitro-GMPは蛋白質のチオール基と反応してKeap1のS-グアニル化を引き起こし、ヘムオキシダーゼ-1の発現調節を行っています。ヘムオキシダーゼ1は、抗酸化や抗炎症作用を持つことから、ROSは防御的な酸化ストレス応答や抗炎症シグナルを誘導する分子であることが明らかになってきました。

 また同時に、サルモネラ感染の際に、マクロファージ細胞内に8-nitro-GMPが生成されて細胞保護作用を示すことも報告されています。

 以前は、ガス状分子は代謝経路の末席を汚す有害な排泄物としての認識のみでした。しかしながら、NO、CO、H2Sなどの内因性ガス物質が生体恒常性維持に不可欠であることが解明されてきました。また、ある種の酵素は、化学的に困難な反応を触媒するためにラジカルの高い反応性を利用していることも知られています。

 従来、NOは神経伝達物質として知られてましたが、最近は、喘息患者の気道内において好酸球性炎症の際に多量に産生されることから、呼気分析による発作予測など診断ツールとしても利用されています(NIOX MINOスウェーデン製:以前にこのブログでも紹介)。
 
 これまでは、COPDと喘息の病態はoverlappingしているため、臨床的鑑別は容易ではありませんでしたが、最近、非侵襲的biomarkerとして、呼気揮発性有機化合物(volatile organic compounds:VOCs)を分析する、呼気指紋(breathprints)によって鑑別できる可能性があると報告されています。

 ガス状分子は細胞膜を容易に抜けて浸透するため、アセトン、水素などの多くの物質が皮膚からも発散しており、様々な診断への利用が期待されています。

 鍼灸刺激によるガス状物質の発生に関しては不明ですので、治療への応用は未知数です。しかしながら、将来的には研究する価値は高いものと考えます。また、NOのみならず、ガス状分子の分析は身体への侵襲が無いため、将来的には我々鍼灸師にとっても有益な診断ツールとなる可能性があります。

1) Rhee SG., Cell signaling. H2O2 a necessary evil for cell signaling, Science, 2006; 312: 1882-3.
2) D'Autreaux B, Toledano MB,ROS as signaling molecules : mechanisms that generate specificity in ROS homeostasis, Nature Rev Mol Cell Biol, 2007; 8: 813-24.
3) Akaike T, Fujii S, Sawa T, et al., Cell signaling mediated by nitrated cyclic guanine nucleotide, Nitric Oxide, 2010; 23: 166-74.
4) Zaki MH, Fujii S, Okamoto T, et al., Cytoprotective function of heme oxygenase-1 induced by a nitrade cyclic nucleotide formed during murine salmonerllosis , J Immunol, 2009; 182: 3746-56.
5) Feelisch M, Nitrated cyclic GMP as a new cellular signal , Nature Chem Biol, 2007; 3: 687-8.
6) Niki Fens, Aeiko H. Zwinderman, Exhaed Breath Profiling Enabies Discrimination of Chronic Obstructive Pulmonary Disease Asthma, American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, 2009; Vol 180 : 1076-1082.
7) K Alving, C Janson, L Nordvall, Performance of new hand-held device for exhald nitric oxide mesurement in adults and children, Respir Res, Published online 2006 April 20. doi ; 10. 1186/1465-9921-7-67.
8) E Hatziagorou, J Tsanakas, Assessment of airway inflamation with exhald NO measurement, Hippokratia, 2007 Apr-Jun ; 11(2): 51-62.
9) Price D, Berg J, Lindgren P., An economic evaluation of NIOX MINO airway inflamation monitor in the United Kingdom, Allegy, 2009 Mar; 64(3): 431-8.
10) Boot JD, Ridder L, Kam ML, et al. Comparison of exhaled nitric oxide measurements between NIOX MINO electrochemical and Ecomedcs chemiluminescence analyzer, Respir Med, 2008 Nov ; 102(11): 1667-71.

- | 次の25件 免疫・炎症 ブログトップ