慢性炎症はあらゆる疾患に関与する [免疫・炎症]

 慢性炎症は、癌の転移、動脈硬化、肥満などの、あらゆる疾患の発症・病態に関与していることが分かってきており、生命の根幹に関わるものとさえ言われています。

 アスピリンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)による発癌・転移の抑制効果は、癌の病態にも炎症が関与しているためです。

 COX-2、プロスタグランジン、NF-κB、STAT3などの炎症性メディエーターが活性化することで、癌細胞のアポトーシスが抑制され、増殖因子が間質から放出され、血管新生が誘導されます。癌細胞自身も炎症を引き起こし、持続的な炎症シグナルが癌のinitiationのステップになっています。

 慢性炎症とは少し違う概念に、「自然炎症」や「自己炎症」もあります。これらの炎症は急性炎症とは違う病態であり、生活習慣病、癌、自己免疫疾患、神経疾患などの、慢性的に長年月にわたって進行する病気に共通する、根本的なメカニズムの理解と治療に繋がると期待されています。

 慢性炎症を抑制する抗炎症性の免疫細胞には、Treg(T Regulatory Cells), MDSC(Myeloid-derived suppressor cells), M2マクロファージなどがあります。

 免疫の暴走は、例えば、敗血症でも起きています。敗血症の重症化は細菌などによるダメージではなく、好中球の過剰な活性化を起点とする免疫による自分自身への攻撃によるものです。

 興味深いことに、「松くい虫被害」も、線虫への過剰な反応によって自分の細胞を殺す働きを持つ遺伝子が多数働くことが原因であることを、森林総合研究所のチームが突き止めています。

 免疫システムの暴走を押さえることが、多くの疾患の治療に繋がります。これまでの、鍼灸刺激と免疫の関係を調べた研究の多くは、免疫の促進面ばかりに注目していました。これからの鍼灸は、免疫を抑制する刺激法を確率できるか否かがキーポイントになると考えられます。

Oshima, M, et al. : Cell, 87: 803-809, 1996
Greten, F, R, et al. : Cell, 118 : 285-296, 2004
Grivennikov, S, et al. : Cancer Cell, 15 : 103-113, 2009
Strober, W. et al. : J. Clin. Invest., 117 : 514-521, 2007

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