スプリフェルミンの関節内投与で関節軟骨の厚みが若干増加したが [膝OA]

症候性変形性膝関節症(膝OA)患者に対するスプリフェルミン(sprifermin 100μg)の関節内注射によって、2年後、大腿脛骨関節軟骨の厚みがプラシーボ群に比べて統計学的に有意に増加したと報告されている。しかし、臨床的改善は認められなかった。

spriferminは、組み換え型ヒト線維芽細胞成長因子であり、膝OAラットモデルでは、硝子軟骨を産生する関節軟骨細胞の増殖を誘導し、in vitroおよびex vivoで硝子細胞外基質の合成を促進して膝関節軟骨の厚さを増加させると報告されている。

本研究は、症候性膝OA患者におけるspriferminの用量を決定するために計画された、5年間の二重盲検プラシーボ対照無作為化第II相試験。10施設が参加し、2013年7月~2014年5月までに患者登録(MerckおよびEMD Serono Research Instituteの助成による)。

対象は、年齢40~85歳までのX線確認による症候性膝OA(内側、外側および両側性)で、Kellgren-Lawrence分類のGrade2/3、内側の最小関節腔幅2.5mm以上、膝関節痛が6ヵ月以上持続し、スクリーニング前1ヵ月間の半分以上の日数で鎮痛薬を必要とした患者。

被験者は(1)sprifermin100μgを6ヵ月毎に投与(110例)、(2)同量を12ヵ月毎に投与(110例)、(3)30μgを6ヵ月毎に投与(111例)、(4)同量を12ヵ月毎に投与(110例)、(5)プラシーボを6ヵ月毎に投与(108例)する、5つの群に無作為に分類。

各治療サイクルでは、毎週1回、3週間の関節内注射が行われ、試験期間は5年。2年と3年時にアウトカムの評価が行われた。

主要エンドポイントは、ベースラインから2年後におけるMRI測定による大腿脛骨関節軟骨の厚みの変化。二次エンドポイントは、Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC:患者の主観的な健康関連QOLの評価法、0~10点、高得点ほど不良)のベースラインからの変化など。

2年後の大腿脛骨関節軟骨の厚みの変化は、プラシーボ群の- 0.02mmに対し、sprifermin100μg6ヵ月毎投与群は+0.05mm(95%信頼区間[CI]:0.03~0.07)、100μgの12ヵ月ごと投与群は+0.04mm(0.02~0.06)で、いずれも有意差が認められた。しかし、30μg6ヵ月毎投与群は+0.02mm(-0.01~0.04)、30μgの12ヵ月毎投与群は+0.01mm(-0.01~0.03)で、有意差は認められなかった。

2年後のWOMAC総スコアの変化では、spriferminの4つの投与群のいずれにおいても、プラシーボ群と比較して比べて統計学的な有意差はなく、WOMACの3つの下位尺度(疼痛、身体機能、こわばり)についても有意差は認められなかった。また、鎮痛薬の使用においても、プラシーボ群と4つのsprifermin群の間に有意差はなかった。

尚、sprifermin群の18.4%(81/441例)およびプラシーボ群の25.9%(28/108例)が2年以内に治療を中止し、それぞれ12.2%および19.4%が試験を中止した。

そもそも、膝OA患者において、関節軟骨の状態と臨床症状に関連性が無いことは周知の事実である。関節軟骨を復活させることに治療目標を設定する視点が理解できない。やるべきことは他にあると思う。

出典文献
Effect of Intra-Articular Sprifermin vs Placebo on Femorotibial Joint Cartilage Thickness in Patients With Osteoarthritis
The FORWARD Randomized Clinical Trial
Marc C. Hochberg, Ali Guermazi, Hans Guehring, et al.,
JAMA. 2019;322(14):1360-1370. doi:10.1001/jama.2019.14735

コメント(0)