周産期心筋症に関する20年間の集団研究 [医学一般の話題]

1998年から2017年までに、スコットランドで検証された周産期心筋症(PPCM)を対象とした遡及的観察的集団レベル研究の結果、発生率は 4,950件の出産に1件でした。 PPCM を患う 225 人の女性のうち、肥満、妊娠高血圧症候群、多胎妊娠がこの症状の発症と関連していることが判明しました。

PPCMを患う女性の8%が死亡し、75%が何らかの原因で少なくとも1回は再入院した。PPCM 患者の女性の死亡率約 12 倍、再入院率は約3倍でした。 全死因死、機械的循環補助、または心臓移植の複合が14%で発生。LVの回復は 76%で、回復した人の13%は初期回復にもかかわらず LV 収縮機能の低下を続けました。 PPCM を持つ女性から生まれた子供の死亡率は、対照から生まれた子供の死亡率の約 5 倍であり、中央値 8.8 年間で心血管疾患の発生率は約3 倍でした。

母子ともに、見かけの回復だけではなく、長期的な追跡調査を考慮する必要があるようです。

「難病情報センター」によれば。

1. 概要
周産期心筋症とは、心疾患の既往のなかった女性が、妊娠・産褥期に心不全を発症し、拡張型心筋症に類似した病態を示す特異な心筋症であり、WHOの心筋症の定義と分類では、二次性心筋症に分類されている。最重症例は致死的であり、欧米では妊産褥婦間接死亡原因の上位にある疾患と認識されている。

2. 疫学
新規発症例約50症例/年、慢性化症例を含めるとおそらく500~1,000人

3. 原因
未だ原因不明である。病態が拡張型心筋症に類似していることから、診断基準の項で述べたように、妊娠・出産の心負荷により潜在して いた拡張型心筋症が顕在化したものや心筋炎であるという説もあるが、アメリカNIHのwork shop groupにおいても、特発性拡張型心筋症や心筋炎の発症率よりも高率で妊産褥婦に発症することから、妊娠自体が発症に関与している別な病態と結論付けら れている。2007年に、異型プロラクチンが発症に関与しているとの報告が出され、注目されている。

4. 症状
発症時は急性心不全症状(呼吸困難、咳、浮腫、全身倦怠感、動悸、ショック、意識障害など)を呈する。急性期治療後、約半数は、心 機能が回復して無症状となる。残りの半数においては心機能低下が残存して、その心機能の低下度に応じた慢性心不全症状(労作時息切れ、浮腫、動悸など)の 訴えを認める。

出典文献
A 20-year population study of peripartum cardiomyopathy
Alice M Jackson, Mark Macartney, Katriona Brooksbank, Carolyn Brown, et al.
European Heart Journal, ehad626, https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehad626