うつ病患者とマッチングした健常者との脳脊髄液サイトカインの比較 [免疫・炎症]

106 人の最近発症したうつ病患者と、個別にマッチングした106 人の健常者の脳脊髄液(CSF)のサイトカイン25種類を比較調査した症例対照研究の結果、主要転帰であるIL-6およびIL-8のレベルに有意差は認められなかった。

副次的転帰のIL-4 は、健常対照者と比較してうつ病患者で 40% 高く (MD: 1.40; 95% CI 1.14–1.72; p = 0.001)、複数のテストの補正後も有意であった (p = 0.025)。 MCP-1 は 25% 高く (MD: 1.25; 95% CI 1.06–1.47; p = 0.009)、MIP-1β は 16% 高かった (MD: 1.16; 95% CI 1.02–1.33; p = 0.025)。

但し、副次的結果の複数のテストの修正後、IL-4 の上昇のみが有意であった(p = 0.025)。

5,083 人の健常対照者と合計 5,166 人のうつ病患者を比較した、107 の研究に基づく血
液中のサイトカイン変化のメタ分析では、IL-3、IL-6、IL-12、IL-18、および TNF-α血中濃度がうつ病患者で高いことが報告されている。また、うつ病の段階の影響を調査したメタアナリシスでは、血液中の IL-6 レベルが疾患の急性期および慢性うつ病患者でのみ増加することが報告されている。

しかし、血液で測定された末梢サイトカインレベルとは対照的に、CSFで測定されたバイオマーカーは神経炎症をより直接的に反映するが、これまでは広く調査されていなかった。

IL-4(interleukin-4)は、活性化されたTh2細胞から産生される抗炎症性サイトカインであり、液性免疫や抗原提示に重要で、B細胞の抗体産生細胞へのクラスチェンジを誘導する。マクロファージからのTNF-α,IL-1,IL-6,IL-8などの炎症性サイトカインの産生を抑制する強力な抗炎症性作用を有する。

IL-4 は分子量約 20KDa の糖蛋白質で、主に活性化T 細胞、肥満細胞によって産生される。B細胞、T細胞、胸腺細胞、肥満細胞、マクロファ-ジなど、種々の免疫細胞や造血系細胞に作用する。また、IgEの産生促進やCD23の誘導、好酸球の成熟などの作用から即時型アレルギ-の発症と密接に関係しているなど、その機能は複雑。

MCP-1は、単球/マクロファージ浸潤の調節に関与する重要なケモカインであり、倦怠感に潜在的な役割を果たす。MIP-1βはCCケモカインリガンド4(CCL4)とも呼ばれ、T細胞走化性を含む炎症の調節に不可欠。

主要な炎症誘発性サイトカインであるIL-6のレベルに有意差が見られず、以前のメタアナリシスとは対照的な結果となった。今後は、うつ病の後期段階に関連する神経炎症反応、経時的な変化、およびうつ病患者の他のサブグループでより顕著な反応が見られるかどうかを調べることを検討すろと述べている。

果たして、うつ病の病態に炎症が寄与するのか疑問が沸いてきた。それにしても、サイトカインの作用は複雑過ぎて理解できないことが多い。

出典文献
Comparisons of 25 cerebrospinal fluid cytokines in a case–control study of 106 patients with recent-onset depression and 106 individually matched healthy subjects
Nina Vindegaard Sørensen, Nis Borbye-Lorenzen, et al.
Journal of Neuroinflammation volume 20, Article number: 90 (2023)