1 型糖尿病に対する集中的血糖コントロールは膵臓ベータ細胞機能を改善しない [医学一般の話題]

新たに 1型糖尿病と診断された若者を対象とした多施設ランダム化試験の結果、自動インスリン投与を含む集中的な糖尿病管理によって達成された血糖コントロールは、52週における膵臓 C ペプチド分泌低下を改善しなかった。

げっ歯類モデルにおける研究によって、1型糖尿病の診断直後に始まるグルコースレベルの正常化は糖毒性を減少させてベータ細胞機能を維持するのに役立つと仮定されている。しかし、これまでの研究は厳格な血糖目標を達成できないため効果の確認が妨げられてきた。

技術の進歩にもかかわらず、1 型糖尿病の若者は、ヘモグロビン A1c (HbA1c) レベルを 7% 未満にするという米国糖尿病協会による血糖値の目標を30% 未満しか達成できていない。

本研究の目的は、新たに 1型糖尿病と診断された若年者のグルコースレベルの正常化を達成するために集中的な糖尿病管理を行い、膵臓ベータ細胞機能の維持に対する有効性を判断することにあった(効果は無いと思うのですが)。

新たにステージ 3 (臨床的に明らかな) 1 型糖尿病と診断された、7 歳から 17 歳の若者を対象とした無作為化試験。自動インスリン送達システムの使用を含む、集中的な糖尿病管理を行い、52 週間後のベータ細胞機能の保存に対する効果を評価。

参加者は113 人 (平均年齢 [SD]11.8歳 [2.8]、女性 49 人 [43%]。診断から無作為化までの平均期間24日 [SD][5日]のうち、108人 (96%) が試験を完了。

曲線下の平均 C ペプチド面積(C-peptide area under the curve:AUC)の平均は、集中管理群でベースラインの 0.57 pmol/mLから診断後52週で 0.45 pmol/mLに減少し、標準治療群では0.60pmol/mLから0.50 pmol/mL に減少 (調整済み)。 52 週での差は-0.01 [95% CI、-0.11 ~ 0.10]; P = 0.89; どちらのグループも、ベースラインから 13 週まで平均 C ペプチド AUC が僅かに増加し、その後減少。

継続的なグルコースモニタリングで測定された70 ~ 180 mg/dLの目標範囲内の平均時間は、52 週で集中管理グループで78% であったのに対し、標準治療グループでは 64% (調整差、16% [95% CI 、10%~22%])。 各グループで重度の低血糖イベントが 1 件、糖尿病性ケトアシドーシス イベントが 1 件発生。

プロトコルごとの感度分析により一次分析と一致する結果が得られ、サブグループでも一貫していた。

この研究は、診断直後に始まる血糖値の正常化がベータ細胞機能を維持できるという仮説を検証するために、現在可能な限り正常な血糖値に近づけようとする試みでした。しかし、新たに1型糖尿病と診断された若者では、自動インスリン投与を含む集中的な糖尿病管理によって優れた血糖コントロールが達成されましたが、52 週での膵臓 C ペプチド分泌の低下は阻止できませんでした。

しかし、私には「今更か?」という疑問が残ります。すでに、数十年前の内科系の雑誌において、1型糖尿病患者では、血糖値をコントロールしている間にも膵臓のβ細胞の破壊は進行すると、記載されていたように記憶しています(文献のコピーを探すのは面倒なので確認はしていませんが)。

1型糖尿病は自己免疫疾患であり、糖毒性の軽減はともかくとして、血糖値を下げることで疾患自体の進行を止めることは不可能と思われますが。

出典文献
Effect of Tight Glycemic Control on Pancreatic Beta Cell Function in Newly Diagnosed Pediatric Type 1 Diabetes
A Randomized Clinical Trial.
Jennifer McVean, Gregory P. Forlenza, Roy W. Beck, et al.
JAMA. 2023;329(12):980-989. doi:10.1001/jama.2023.2063