重症患者への高用量タンパク質投与は死亡リスクを高くする [栄養の話題]

国際的な救命救急栄養ガイドラインでは、タンパク質用量は幅広いレンジを推奨しています。重篤な疾患において、高用量のタンパク質を投与することの効果は不明です。この研究では、重症患者に提供される高用量のタンパク質が臨床転帰を改善するという仮説を検証したところ、逆に、死亡率の相対リスクが高くなりました。

研究デザインは、国際的、多施設、実用的、レジストリベースの単盲検ランダム化試験。

人工呼吸を受けている栄養的にリスクの高い成人 (18 歳以上) を登録し、高用量のタンパク質 (1 日あたり 2.2 g/kg 以上) を処方した群と、通常用量(1 日あたり 1.2 g/kg 以下)のタンパク質を処方した群を比較。

2018 年 1 月 17 日から 2021 年 12 月 3 日までの間に、1329 人の患者中、1301 人 (97.9%)を分析 (高用量タンパク質群で 645 人、通常用量群で 656 人)。

60 日までの生存退院の累積発生率は、高用量タンパク質群で46·1% (95 CI 42·0%–50·1%) 、通常量タンパク質群では50·2% (46·0%–54·3%)であり、通常群におけるハザード比は0.91(hazard ratio 0·91, 95% CI 0·77—1·07; p=0·27)。統計的な有意差はなし。

60 日死亡率は、高用量タンパク質群は34·6% (222 of 642)、通常群では32·1% (208 of 648)で、相対リスクは1.08(relative risk 1·08, 95% CI 0·92–1·26)。

サブグループの評価から、急性腎障害とベースラインにおける臓器不全スコアが高い患者では、より高いタンパク質供給が特に有害となる傾向が見られた。

アミノ酸の組成は疾患や臓器によって異なっており、それぞれの組成に応じてアミノ酸を制御することが治療に繋がる可能性がある。例えば、癌も治療できることが明らかになっている。重篤な疾患だから高用量のタンパク質を投与するという発想が、いかに非科学的かということを医師は認識すべきだ。

出典文献
The effect of higher protein dosing in critically ill patients with high nutritional risk (EFFORT Protein): an international, multicentre, pragmatic, registry-based randomised trial
Daren K Heyland, Jayshil Patel, Charlene Compher, et al.
The Lancet, Published:January 25, 2023DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(22)02469-2