高度膝 OAの痛みには滑膜マクロファージが関与する [膝OA]

クロドロネートリポソームの静脈内注射は滑膜マクロファージを枯渇させ、インターロイキン(IL)1βの炎症誘発性メディエーターおよび膝関節における神経成長因子 (NGF)レベルも低下させ、高度変形性膝関節症(膝OA) モデルラットにおける疼痛を抑制した。

高度膝OA 患者は、シクロオキシゲナーゼ (COX) 阻害剤に耐性の慢性疼痛を有しているが、この疼痛に関与する細胞および分子メカニズムは不明。

本研究は、monoiodoacetate(モノヨード酢酸)誘発性 OA疼痛モデルの改変による高度な膝 OAのラットモデル(下記参照)を開発し、滑膜マクロファージの関与を検討したもの。

組織学的解析では、高度OA患者と同様に、重度の骨髄損傷、滑膜炎、軟骨損傷を生じ、IL-1β、NGF、一酸化窒素合成酵素 (NOS) 1、NOS2、および COX-2 の高発現を伴うマクロファージの増加を示した。

セレコキシブ、ナプロキセン、ステロイドなどのシクロオキシゲナーゼ阻害薬は効果がなかったが、オピオイドおよび抗NGF抗体は、高度OAモデルにおける疼痛管理に有効であった。

また、クロドロネートリポソームの静脈内注射によって滑膜マクロファージを枯渇させ、インターロイキン-キン1βの炎症誘発性メディエーターおよび、膝関節における NGF のレベルも低下させて疼痛を抑制した。

これらのデータは、COX 阻害剤に耐性のある高度膝 OA 疼痛に滑膜マクロファージが関与することを示唆しており、滑膜マクロファージを標的とする薬剤が有効な鎮痛薬となる可能性がある。

クロドロネートリポソームは、クロドロン酸をリポソーム化(Clodronate liposome)した製品で、クロドロン酸をリポソーム化することで細胞透過性を向上させている。脾臓マクロファージに取り込ませることで、マクロファージを除去できる。但し、これは治療薬ではなく、マクロファージの枯渇実験(Macrophage Depletion)に使用されている。

モノヨード酢酸誘発関節炎モデル:MIAは、細胞の解糖系のエネルギー代謝 glycolytic energy metabolismと軟骨細胞の合成 synthetic processes in articular chondrocytes(cartilage)を阻害する。解糖系の酵素であるグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の阻害剤。MIAの関節内投与によって軟骨細胞の代謝と産生が阻害され、軟骨の破壊および変性が生じ、その組織病変はヒトOAに類似している。

1970年代に単関節炎モデルとして登場し、1987年にDieter Abbo Kalbhenらが骨関節炎モデル(OAモデル)として報告している(J Rheumatol. 1987 May;14 Spec No:130-1., Chemical model of osteoarthritis--a pharmacological evaluation.)。

尚、本文献は要約のみ公開されているため、実験データなどの詳細は不明。

出典文献
Contribution of synovial macrophages to rat advanced osteoarthritis pain resistant to cyclooxygenase inhibitors
Sakurai, Yusukea; Fujita, Masahidea; Kawasaki, Shioria; et al.,
PAIN: April 2019 - Volume 160 - Issue 4 - p 895–907
doi: 10.1097/j.pain.0000000000001466

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