経穴領域コラーゲン線維の抗炎症における鍼治療の堤・插操作の役割 [鍼灸関連研究報告から]

“Lifting and Thrusting Manipulation堤插操作”を伴う鍼治療は操作無しの治療と比べ、エンドトキシンの注射によって誘発された血清IL-1β、TNF-αおよびIL-6のレベル増加を有意に阻害し、抗炎症性サイトカインであるIL-4を上昇させた。また、ウサギ耳静脈に注射した細菌エンドトキシンによる発熱を低下させた。

堤插操作群および操作無し鍼群の直腸温度上昇率は、モデル化後2時間、4時間および6時間でグループ鍼治療無し群よりも有意に低く(P <0.01)、堤插操作群は操作無し鍼群よりも低率であった(P <0.05)。 鍼治療がエンドトキシンによる発熱を有意に明白かつ迅速に抑制することが示唆され、その効果は鍼治療後4時間でも有意であった。

経穴領域におけるコラーゲン線維の形態学的特徴として、光顕微鏡下では、コラーゲン線維が規則的な方向に束状に配列されて線維が巻き付いていることが見出された。 堤插操作によって、コラーゲン線維の表面はわずかに荒く捻れ、部分的に折れていた。経穴(Quchi:曲池)部位へのコラゲナーゼ前処理後、筋の組織構造が乱され、破壊されたコラーゲン線維と混合し、赤血球が間質腔に放出されて血管も損傷した。

経穴部位へのコラゲナーゼの注射によって局所コラーゲン線維を破壊すると、血清IL-4レベルは鍼治療無し群と比較して有意差はなく(P> 0.05)、操作無し鍼群との比較でも有意差はなかった(P> 0.05)。したがって、鍼治療部位のコラーゲン線維が鍼治療の機械的刺激の受容において重要である可能性が示唆された。

介入は、6種類のグループに分けられている。

偽手術グループ(N)
両側の「曲池:Quchi」にの生理食塩水(50μL)を注射し、30分後にエンドトキシン注射または鍼治療を施さずにウサギの耳静脈に1mL / kgの用量で生理食塩水を注射した。

モデルグループ(M)
両側の曲池に生理食塩水(50μL)を注射し、30分後に細菌内毒素3μg/mLを1mL / kgの用量でウサギの耳の静脈に注射して、治療無しの発熱モデルとした。

操作群なしの鍼(W)
モデル群と同様のプロトコールに従い、モデリングの1.5時間後に両手の曲池に操作無しの鍼治療を施した。

鍼治療グループ(A)
モデル群と同じプロトコールに従い、モデリングの1.5時間後に両側の曲池に堤插操作を伴う鍼治療を適用した。

コラゲナーゼ前処理グループ(JM)
両側の曲池50μLの2mg / mLのI型コラゲナーゼを注射してコラーゲン線維を破壊し、30分後に細菌内毒素3μg/ mLを1mL / kgの用量で注射して、鍼治療はせずに発熱モデルを確立した。

コラゲナーゼ前処理+鍼治療グループ(JA)
JMグループと同じプロトコールに従い、モデリングの1.5時間後に両側曲池に堤插操作を伴う鍼治療を施した。

NZWウサギを使用し、曲池穴に対して、直径0.25mm×25mmの細針を約10mmの深さに刺し、30分間で抜去した。

堤插操作は、振幅約2mm、周波数60サイクル/分で、挿入後10分および20分後に30秒間持続した。

鍼治療は、一人の熟練した鍼灸師が行った。 鍼治療の操作は自作チューブを使用して振幅を制御し、メトロノームを使用して周波数を制御した。

本研究は、鍼治療手技の機械的操作による効果の違いと、経穴領域におけるコラーゲン線維の関与を調べたもので、「Evid Based Complement Alternat Med.2017.4」に掲載されている。

この雑誌は鍼灸師も読んでおり、1年以上前の報告であることから、既に知っている方も多いと思われる。私は「代替医療」というこの雑誌のタイトルが嫌いでほとんど読まないため、最近まで知らなかった。検索中に偶然見つけ、その中に、私が考案した刺法の作用機序を考える上で参考になる部分があったので、今更と言われそうだが書き留めることにした。実験結果の詳しいデータは、全文が読めるので原著を参照されたい。

出典文献
Role of Acupoint Area Collagen Fibers in Anti-Inflammation of Acupuncture Lifting and Thrusting Manipulation
Fan Wang, Guang-wei Cui, Le Kuai, Jian-min Xu, Ting-ting Zhang, et al.,
Evid Based Complement Alternat Med.2017.4
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