尿酸は抗酸化作用によってニューロンを保護する [善玉・悪玉概念の否定]

細胞内尿酸値を上昇させることにより、LPS誘発パーキンソン病(PD)モデルにおいて、活性化ミクログリアによって誘導される炎症から保護したと報告されている。

尿酸は、炎症促進性サイトカイン産生、誘導性シクロオキシゲナーゼ2および酸化窒素シンターゼ発現を抑制して、活性化ミクログリアの毒性作用からドーパミン作動性ニューロンを保護した。

また、尿酸の神経保護効果は、インターロイキン10およびトランスフォーミング成長因子β1などの、抗炎症因子の刺激と関連している可能性がある。

神経保護効果は、腎臓において尿酸を再吸収する、グルコーストランスポーター9および尿酸トランスポーター1(URAT1)の両方の阻害剤であるプロベネシド(PBN)の前処理によって無効となった。PBNはまた、尿酸の抗炎症作用を消滅させた。

尿酸投与によって、リポ多糖(LPS)誘発PDモデルラットにおける運動協調の損失が逆転した。さらに、血漿尿酸値の上昇は、URAT1発現の減少、インターロイキン-1βの発現増加、およびイオン化カルシウム結合アダプター分子1-陽性ミクログリア数をそれらの形態変化と共に削減した。

高尿酸血症が心血管疾患や腎障害を悪化させる可能性があると考えられている。

一方、痛風がパーキンソン病やアルツハイマー型認知症、および血管性・非血管性認知症の減少に関連するとの報告が増えている(Lancet 2016; 388: 2039-2052)。

高尿酸値とPD発症リスクが低いこには相関があり、疾患の進行速度の低下も報告されている(Arch Neurol. 2008;65:716–23.Schwarzschild MA, Constantinescu R, Drugs Today. 2011;47:369–80. )

尿酸は通風の原因として、とかく悪玉とみられているが、単なる老廃物ではない。糸球体で濾過された尿酸は、尿細管上皮細胞の管腔側に発現するURAT1/SLC22A12と、血管側に発現するGLUT9/SLC2A9(URATv1)の2つのトランスポーターによって90%が再吸収され、尿中に排泄されるのは残りの10%に過ぎない。つまり、必要性があるからこそ、腎臓は一所懸命尿酸を再吸収しているのである。

尿酸の生理学的役割として抗酸化作用が重要である。その認識は、1970年のNatureの論文(Nature 1970; 228: 868)が発端となった。活性酸素やフリーラジカルによる過剰な酸化作用は、細胞膜の脂質の酸化といった様々な組織障害を引き起こす。その主なものとして、例えば、海馬の神経細胞の酸化による障害によってアルツハイマー型認知症、黒質ではパーキンソン病などの、炎症反応に関与する。

日本における「高尿酸血症・痛風診療ガイドライン」では、無症候性高尿酸血症への薬物治療の導入は血清尿酸値8.0mg/dL以上を一応の目安としている。しかし、米国リウマチ学会の痛風ガイドラインでは、無症候性高尿酸血症の治療を推奨していない(Arthritis Care Res2012; 64: 1431-1446)。適応はより慎重にすべきである。


痛風は周知のように、尿酸が過剰になることで尿酸ナトリウム塩が関節などに蓄積して発症します。尿酸はプリン体の代謝産物ですが、ヒトには尿酸分解酵素の遺伝子活性がないことがその要因です。ほとんどの生物は尿酸を尿素やアンモニアに分解して排泄しますが、ヒトとゴリラ、およびチンパンジーなどは進化の過程で尿酸分解酵素を失いました。しかし、それは単に喪失したのではなく、前述した、尿酸の抗酸化作用が生存に有利だったことが大きな要因として考えられています。

出典文献
Urate inhibits microglia activation to protect neurons in an LPS-induced model of Parkinson’s disease
Li-Hui Bao, Ya-Nan Zhang, Jian-Nan Zhang, et al.,
Journal of Neuroinflammation201815:131
https://doi.org/10.1186/s12974-018-1175-8

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