血清ヒアルロン酸濃度は膝OA進行の予測因子となる [ヒアルロン酸]

血清ヒアルロン酸(sHA)は、変形性膝関節症(OA)の血清バイオマーカーであり、患者ではsHA濃度は上昇する。さらに、sHA濃度と病態の進行には正の相関が認められ、膝OA進行の有用な予測因子になる可能性があると報告されている(Eiji Sasakiら, 2015年)。

膝OAは、伝統的に臨床的および放射線学的所見に基づいて診断されている。しかし、臨床的な診断が行われる頃には関節組織の変性が進行しているため、治療によって治癒することはほぼ無いと言える。従って、早期に診断するためのバイオマーカーが求められている。

444人を登録し、ベースライン時のsHA濃度を測定して前向きに調査。膝OAの変化はKellgren-Lawrence(KL)グレードに従って分類し、関節腔狭窄(JSN)は変形性関節症コンピュータ診断支援(KOACAD)システムを用いて測定。 sHA濃度、KLグレードの進行、およびJSNとの相関は潜在的交絡因子を考慮して回帰モデルを用いて評価。

放射線学的評価では、KLグレード0または1が323人、グレード2は91人、グレード3は28人、およびグレード4は2人。 5年後のエンドポイントでは、ベースライン時にKLグレード0,1,2または3の443人の参加者中、190人(42.1%)が進行し、膝OA は14膝で発症。

より高いsHA濃度はKL等級進行に相関し(p = 0.004)、JSNの進行と正の相関を示した。SpearmanのsHA濃度とJSNの相関係数は0.404(p <0.001)。本研究によって、sHAカットオフ値は51.9ng / mlと推定され、JSNリスクは約5倍増加した(KL grades 2 or 3からのodds ratio は4.89)。

調整ロジスティック回帰分析によって、より高いsHA濃度がKLグレード2または3からの進行と相関(p = 0.004)したが、0または1からの進行とは相関しなかった(p = 0.196)。女性とKLグレード0または1のOA発症とは正に相関し、老化とより高いBMIはOAの発症および進行と相関した。

従来の縦断研究でも、ベースライン時のsHA濃度がKL等級の進行と正に相関することが示されていた(1.2.)。さらに、ベースラインのsHA濃度は正常および重度の膝OAの両方においてJSNと相関し、重症度だけでなく進行の可能性も反映しており、JSNを予測するための予後マーカーとして有用であり得る。

OAは長期的な慢性疾患であるため、5年間の観察ではsHAとOAの発生率との関係を完全に証明することは困難だが、sHA51.9ng / mlのカットオフ値がROC分析に基づくOA進行を予測できることを示す、最初の報告である。

OAは、耐荷重領域を中心とした関節軟骨の局所的損傷、関節縁における骨棘形成、軟骨下骨変化、および滑膜炎を特徴とする。滑膜炎はOAの発症時に存在し、ヒアルロン酸(HA)および炎症性サイトカインの産生をもたらす。

さらに、滑膜炎は線維芽細胞を活性化し、腫瘍壊死因子-αおよびインターロイキン-1βなどの他の炎症性サイトカインの産生を促進する。また、これらのサイトカインは、関節軟骨基質を分解する線維芽細胞によるマトリックスメタロプロテイナーゼ産生を促進する。従って、滑膜炎の存在は、膝OAの進行に寄与すると考えられている。

sHAは膝OAのバイオマーカーの中でも特に有望であり、以前のいくつかの横断的研究では、診断だけでなく、病気の持続時間、重症度、OA関連膝痛の程度を特定するためにも有用であることが報告されていた(3.4.)。sHA濃度は、OA発症時に存在する滑膜炎の程度を反映すると考えられ、プロテアーゼおよびサイトカインを産生することによって疾患の進行を促進する。したがって、sHAは進行性膝OAの予後指標となる可能性があるが、これまでは、膝OAとの関係はいくつかの縦断研究のみであった(5.6.)。

出典文献
Serum hyaluronic acid concentration predicts the progression of joint space narrowing in normal knees and established knee osteoarthritis – a five-year prospective cohort study
Eiji Sasaki, Eiichi Tsuda, Yuji Yamamoto, Shugo Maeda, Ryo Inoue, Daisuke Chiba, et al.,
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Published online 2015 Oct 10. doi: 10.1186/s13075-015-0793-0

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