高レベルHDLコレステロールは心疾患による死亡リスクを増加させる [善玉・悪玉概念の否定]

一般的に善玉と言われている、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-C)が原因特異的心疾患(CVD)死亡率に及ぼす影響を調べた研究(日本)によって、高レベルでは、冠動脈疾患および脳梗塞リスクの増加と有意に関連したと報告されている。

研究は、40-89歳の43,407人の参加者を対象とする、9つの日本人コホートの分析。参加者をHDL-Cレベルで5群に分類。最高レベルをHDL-C≥2.33mmol/ L以上(≧ 90mg / dL)とし、コホート層別Cox比例ハザードモデルによって、全死因死亡および原因別死亡を1.04~1.55mmol/L(40~59mg/dL)の群と比較して、各群の調整ハザード比を推定。

アテローム性CVDによる死亡リスクのハザード比は2.37(hazard ratio = 2.37, 95% confidence interval: 1.37-4.09 for total)。

12.1年の追跡期間中に、全死因死亡が4,995人、CVDによる死亡が1,280人確認されている。

Association of extremely high levels of high-density lipoprotein cholesterol with cardiovascular mortality in a pooled analysis of 9 cohort studies including 43,407 individuals: The EPOCH-JAPAN study.
Aya Hirata, Daisuke Sugiyama, Makoto Watanabe, Akiko Tamakoshi, et al.,
Journal of clinical lipidology. 2018 Feb 08; pii: S1933-2874(18)30034-5.

最近のいくつかの研究でも、CVD事象に対する高レベルのHDL-Cによる有害作用が報告されている。

実験的および観察的研究によって、HDL-Cが特定の状態においてアテローム保護機能を失い、炎症性の性質をもつことが示されている。

ホルモンの変化、特にエストラジオールの減少は、更年期移行(MT)中のHDLの質を潜在的に損なう可能性のある危険因子の蓄積に影響する。女性が閉経期に移行するにつれて、HDL-Cレベルの上昇は独立してより大きな頸動脈内膜厚(cIMT)進行と関連することが報告されており、期待される心臓保護効果を示さない可能性がある。

ncrease HDL-C Level over The Menopausal Transition is Associated with Greater Atherosclerotic Progression
Samar R. El Khoudary, Lin Wang, Ms,a Maria M. Brooks, Rebecca C. Thurston, et al.,
J Clin Lipidol. 2016 Jul-Aug; 10(4): 962–969.
Published online 2016 Apr 26. doi: 10.1016/j.jacl.2016.04.008

また、高HDL-Cレベルが、進行性腎機能障害を有するループス腎炎(Lupus nephritis、LN)患者において、末期腎疾患(ESRD)リスクの増加と関連していることも報告されている。同時に、低HDL-CレベルもLN患者の全死因死亡のリスク増加と関連していた。

Effect of low and high HDL-C levels on the prognosis of lupus nephritis patients: a prospective cohort study
Peiran Yin, Ying Zhou, Bin Li, Lingyao Hong, et al.,
Lipids Health Dis. 2017; 16: 232.
Published online 2017 Dec 6. doi: 10.1186/s12944-017-0622-3

この他にも、老年性痴呆症の人はHDLコレステロールが高く、乳癌のリスクも高い。「悪玉・善玉コレステロール」という、単純な分類には意味がない。


コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。