ヒスタミンは星状細胞の神経保護効果を増加させる [医学一般の話題]

ヒスタミンと言えば、花粉症のこの季節において大敵であり、アレルギー性の皮膚疾患では抗ヒスタミン剤が欠かせない。ヒスタミンは炎症の強力なメディエーターであり、自然免疫および後天性免疫のレギュレーターである。

現在、4つのヒスタミン受容体が同定されており(H1-H4)、そのうちの3つ(H1-H3)が脳で顕著に発現する。ヒスタミンは、主要なアミノ作動性脳神経伝達物質であり、イオン恒常性、エネルギー代謝、および神経伝達物質クリアランスなど、星状細胞の活動に重要な影響を及ぼす。

この星状細胞(Astrocytesアストロサイト)は、中枢神経系(CNS)において最も豊富に存在する非神経細胞集団であるが、不活性な足場またはハウスキーピング細胞として概念化されてきた。しかし最近では、この細胞集団がCNSにおける免疫応答を能動的に調節することが示唆されている。

星状細胞の軽度の活性化は、通常、神経保護効果を発揮して神経変性の初期症状を改善する。例えば、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)およびニューロトロフィン-3(NT-3)などの神経栄養因子を放出してニューロンの生存を促進し、シナプスの恒常性を維持する。また、最近の研究では、GDNFは小膠細胞の活性化を阻害して神経炎症を緩和することが示唆されている。

しかし、星状細胞の活性化や、脳の炎症におけるヒスタミンの役割については未解明。この研究では、星状細胞がH1、H2、およびH3を発現するが、H4受容体を発現しないことを明らかにした。また、ヒスタミンは、これらの3つのヒスタミン受容体の発現を選択的にアップレギュレートして星状細胞の活性化を誘導した。さらに、H1、H2、およびH3受容体を誘発することによってTNF-αおよびIL-1βの産生を抑制し、アストロサイトによるGDNFの合成を刺激した。したがって、ヒスタミンは、GDNF合成のアップレギュレーションに伴う星状細胞TNF-αおよびIL-1β産生を抑制することで、星状細胞の神経保護効果を誘発すると考えられる。

しかし一方、星状細胞の強力な活性化は、大量のサイトカイン、ケモカイン、活性酸素種、および炎症促進性メディエーターを分泌させ、ミクログリア、ニューロン、および周囲の細胞状態に影響を与え、興奮毒性、神経変性およびアポトーシスを促進する。

本研究では、ヒスタミン(0.001,0.01,0.1,1μg/ml)が星状細胞に神経保護作用および抗炎症作用を及ぼす傾向があることを確認している。しかしながら、高濃度でのヒスタミンの影響は知られていない。マスト細胞の主要な分泌タンパク質であるトリプターゼは、低濃度では細胞内ROS産生を適度に減少させるが、星状細胞では高濃度でTNF-αおよびIL-6分泌を有意に増加させることが判明している。したがって、傷害を受けたCNSにおいて、星状細胞が多面的な役割を果たすことを示しており、CNS傷害の性質および重症度によって、異なる様々なシグナル伝達事象を通じて状況依存的に決定されると推測される。

出典文献
Histamine upregulates the expression of histamine receptors and increases the neuroprotective effect of astrocytes
Jiawen Xu, Xiang Zhang, Qingqing Qian, Yiwei Wang, Hongquan Dong, Nana Li, et al.
Journal of Neuroinflammation201815:41
https://doi.org/10.1186/s12974-018-1068-x
コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。