体温の不明な増加は死亡率の予測因子となる [医学一般の話題]

個人のベースライン温度は測定誤差または環境要因のみに起因するものではなく、有意義な変動を示して患者要因と相関することが報告されている。

デザインは、観察コホート研究。大規模研究病院の電子記録のデータセットから、2010~12年に病院の救急部および外来を受診した患者を同定し、これらの患者の2009~14年の体温測定を含む外来受診データを収集37万4,306件)。これらの患者より、感染症の診断を受けていないか抗菌薬を処方されておらず、体温が正常範囲内と予測される患者3万5,488例(体温測定:24万3,506件)を解析の対象とした。

平均温度は36.6℃(95% range 35.7-37.3℃, 99% range 35.3-37.7℃)。

原因不明の温度変動はその後の死亡率の重要な予測因子であった。具体的には、0.149℃の増加は、年間8.4% の死亡率上昇に関連した(P=0.014)。

体温は加齢とともに低下し、年齢が10歳高くなるごとに0.021度低くなった(p<0.001)。白人男性と比較して最も体温が高かったのはアフリカ系米国人女性で、0.052度の差が認められた(p<0.001)。

疾患別では、甲状腺機能低下症は-0.013℃(P = 0.01)、癌では0.020高くなる(P <0.001)。

従来、深部体温の研究は、主に平均体温の確立に重点が置かれてきた。しかし、体温は多様な因子の影響を受けており、個々の患者のベースラインの体温には系統的な差がある可能性がある。

最も注目すべきことは、気温と死亡率の関係。 これは、ショウジョウバエおよびCaenorhabditis elegansをはじめとする一連の(恒温性)実験モデル、およびより低い体温に設計されたトランスジェニック(恒温動物)マウスにおいて、体温の低下が寿命を延ばして老化を遅延させることを示す研究結果に適合する。

個々の温度は、患者の特徴、特に代謝および肥満に関連するものと高度に相関していた。これらの違いは、明らかな熱力学的要因による可能性がある。この研究結果は、個人のベースライン温度の生物学的根拠は何かという、一連の質問を提起している。

また、この研究から得られた知見は、「ビッグデータ」が新しい医療知識を生み出すために役立つことをを示している。

因みに、余談になるが、病院勤務当時に私が担当した患者でも、不明な発熱が続いていた場合、退院をせかす医師の判断を裏切り、ほぼ全てが死亡した。尚、私は独断で、これらの患者のリハビリは無意味と判断し中止していた。

出典文献
Individual differences in normal body temperature: longitudinal big data analysis of patient records
Ziad Obermeyer, Jasmeet K Samra, Sendhil Mullainathan,
BMJ 2017; 359 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.j5468 (Published 13 December 2017)
Cite this as: BMJ 2017;359:j5468

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