腹圧性尿失禁への電気鍼の効果 [鍼灸関連研究報告から]

腹圧性尿失禁(stress urinary incontinence ;SUI)に対する、電気鍼と偽鍼治療の効果を比較した、中国の12病院で実施された多施設無作為化臨床試験の結果、尿失禁は正鍼群で改善したと報告されている。

参加者は504名の女性(平均年齢55.3歳 [SD8.4] 、調査完了は482名)。 要約中には経穴名は記されていないが、図で見ると、介入群(n = 252)はBL33 (中髎)、BL35(会陽)、偽鍼群 (n = 252)はその20mm外側で皮膚刺激のみ。18セッション (6 週以上)。

主要転帰は、1時間パッドテストによる尿漏れ量。ベースラインから6週後で測定。二次転帰は、72時間膀胱日誌 (72 時間失禁エピソード)で評価 。

ベースラインの平均尿漏れは、正鍼群18.4g、偽鍼群19.1g。平均72時間の尿失禁エピソードは、正鍼群7.9、偽鍼群7.7。

6週後、正鍼群の平均尿漏れは− 9.9 g、偽鍼群は− 2.6 gで、差は7.4 g(95% CI, 4.8 to 10.0; P < .001)。

平均72時間の失禁エピソードは正鍼群でより減少し、その差は1.0エピソードで1~6 (95% CI, 0.2-1.7; P = .01)、2.0エピソードは15 ~18 (95% CI, 1.3-2.7; P < .001)。

ベースラインにおける尿失禁は、パッドテストによる評価では「高度の尿失禁(10.1~50.0g)」。治療後では、正鍼群は8.5gで中等度尿失禁(5.1~10.0g)。一方の偽鍼群では16.5gで高度尿失禁のまま。

両群の効果に差は認められたが、高度尿失禁が中等度に改善したことに生活上の意味があるかは疑問。また、長期的な効果と作用メカニズムの研究が必要。

「腹圧性尿失禁」の場合、主な原因は骨盤底筋の筋力低下。軽度の尿失禁では、骨盤底筋の体操によって外尿道括約筋や骨盤底筋群を強くすることで改善が期待できる。骨盤底筋訓練などの保存的療法で改善しない場合は、ポリプロピレンメッシュのテープを尿道の下に通してサポートする「TVT手術」または「TOT手術」が適応となる。

私の記憶では、「過活動性膀胱」による尿失禁(切迫尿意)に対しては鍼治療は有効だが、鍼刺激で骨盤底筋を強化することはできないはずであり、「腹圧性尿失禁」に効果があるとは考えにくい。本当に有効であるならば、他の原因や別の作用機序を考慮する必要がある。

padテスト:
水分摂取(500ml)後に、60分間決められた動作や運動を実施し、検査前後のパッド重量を計測して尿失禁の重症度を判定する。

出典文献
Effect of Electroacupuncture on Urinary Leakage Among Women With Stress Urinary Incontinence. A Randomized Clinical Trial
Zhishun Liu, Yan Liu, Huanfang Xu, et al.,
JAMA. 2017;317(24):2493-2501. doi:10.1001/jama.2017.7220

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