椎体終板変性分類のModic typeと腰痛との関連について [腰痛関連]

椎体終板変性の分類であるModic typeⅠ~Ⅲの中で、typeⅠは臨床的にactiveな変化と言われており、腰痛との関連が指摘されているが信頼性は不明。

変形性脊椎症の病態として、椎間板変性(髄核変性), 終板変性(椎間骨軟骨症), 骨棘形成が見られ、終板変性はModic typeⅠ~Ⅲに分類されている。typeⅠは骨髄浮腫(線維血管増生)の状態であり、MRIでは、T1強調画像で低信号、T2強調画像では高信号となる。最近の椎間板変性や炎症を示唆しているとされ、症候性との意見が多い。

TypeⅡは脂肪変性(T1強調像高信号, T2等-高信号)、TypeⅢは骨硬化(終末像, T1強調像低信号, T2強調像低信号)で、何れも安定しており症状発現には関与しないと言われている。

固定術によって、脊椎の不安定性が改善されると信号強度が正常化したり、typeⅠからTypeⅡへ変化する。しかし、自然な経過でも、TypeⅠおよびⅢからTypeⅡへ変化したり、逆にⅡからⅠに変化する場合もあるなど、変化が可逆的であることから、症状の原因や手術結果の指標として使用することへの疑問が提起されている(1)。

ModicⅠの変化を有する25名と、正常23名を含む腰椎椎間板ヘルニア患者45名を対象とした、ヘルニア摘出後の腰痛を比較した研究がある。術後12、24ヶ月において、視覚アナログ尺度 (VAS) スコア、日本整形外科学会スコア (JOAS)、ウェスト障害指数 (ODI)によって評価したところ、何れも両群に差は認められなかった(2)。

したがって、腰椎椎間板ヘルニアの症状に終板の変化は直接的には関与しないようだ。

さらに言えば、腰椎椎間板ヘルニア患者において、対象者の半数をmodic変化無しのグループに設定できたことから、ヘルニア患者の中には終板に異常が無い者が少なからず存在することを意味する。したがって、終板骨折が生ずることで髄核が免疫細胞に曝されて自己免疫反応が生じ、この炎症によって髄核が劣化して椎間板ヘルニアが生じるとする発症機序は疑わしくなる。

終板の異常の成因としては、Modic TypeⅠまたはⅡの変化を持つ患者の終板の調査では、正常者と比較して、PGP 9.5-immunoreactive nerve fibers、およびTNF-immunoreactive cellsが有意に多く(P < 0.01)、細胞数はType ⅠがTypeⅡよりも多かった (p < 0.05)ことから、TNFによって誘発された炎症と軸索の成長に関連していることが示唆されている(3)。

私の結論としては、終板に見られるMRI画像の変化と症状を結びつけるための確かな証拠がないため、何とも言えない。

引用文献
(1)
Modic Vertebral Body Changes: The Natural History as Assessed by Consecutive Magnetic Resonance Imaging
Hutton, Michael J., Bayer, Jens H, D, Powell, John M.,
Spine: 15 December 2011 - Volume 36 - Issue 26 - p 2304–2307
doi: 10.1097/BRS.0b013e31821604b6

(2)
Low Back Pain After Lumbar Discectomy in Patients Showing Endplate Modic Type 1 Change
Ohtori. Seiji, Yamashita. Masaomi, Yamauchi. Kazuyo, Inoue. Gen, et. al.,
Spine: 1 June 2010 - Volume 35 - Issue 13 - pp E596-E600
doi: 10.1097/BRS.0b013e3181cd2cb8

(3)
Tumor Necrosis Factor-Immunoreactive Cells and PGP 9.5-Immunoreactive Nerve Fibers in Vertebral Endplates of Patients With Discogenic Low Back Pain and Modic Type 1 or Type 2 Changes on MRI
Ohtori. Seiji, Inoue. Gen, Ito. Toshinori; Koshi. Takana; Ozawa. Tomoyuki, et. al.,
Spine: 20 April 2006 - Volume 31 - Issue 9 - pp 1026-1031
doi: 10.1097/01.brs.0000215027.87102.7c

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