飲酒は少量でも認知症リスクを増加させる [酒は百毒の長]

WhitehallII研究の参加者を対象とした30年関の前向き観察研究の結果、アルコール摂取量が多いほど海馬萎縮のリスクが上昇し、脳梁微細構造の違いや言語流暢性の急激な低下とも関連していた(オックスフォード大学;Anya Topiwala氏ら報告)。

アルコール摂取を1単位8gとして摂取なし群(週1未満)と比較すると、週30単位以上のアルコール摂取群が最もリスクが高く、オッズ比[OR]:5.8(95%信頼区間[CI]:1.8~18.6、p≦0.001)で、6倍近い。適度なアルコール摂取群(週14~21単位)でも、右側海馬萎縮のリスクは(OR)3.4(95%CI:1.4~8.1、p=0.007)と、3倍以上上昇した。

また、少量摂取群(週1~7未満単位)の認知機能低下への予防的効果は認められなかった。

大量飲酒は、コルサコフ症候群、認知症、広範囲の脳萎縮と関連する。一方、少量のアルコール摂取は認知機能障害の予防と関連があるとする研究報告もあるが、証拠は不十分で、この研究結果によって否定された。

対象者は、英国の一般公務員を対象としたWhitehall II研究(1985~2015年)に登録され、第11期(2011~12年)の調査に参加した6,306例の中から1,380例を無作為に抽出。この中で、imaging substudyへの参加に同意し、脳MRI検査を実施できる550名(CAGEスクリーニング質問票2点未満の非アルコール依存者、Whitehall II研究開始時の平均年齢43.0±5.4歳)。

試験終了時(2012~15年)に脳MRI検査を実施し、30年にわたって前向きに収集されたアルコール消費に関するデータを用いて1週間のアルコール摂取量と認知機能について解析。

今回の結果は、イギリスにおける最近のアルコール摂取制限を支持しており、アメリカの推奨量に対して異議を唱えるものである。しかし一方、MRI検査時点の認知能力や、意味流暢性または語想起の経年的な変化との関連は確認されていないことや、観察研究であること、アルコール摂取量が自己申告であるなどに研究の限界がある。しかし、アルコールが基本的に毒物である事実に変わりは無く、過剰摂取による社会的損失は世界的な問題であり、WHOはアルコール摂取の削減を喫緊の課題としている。

厚生労働省研究班の推計によれば、日本における、アルコールの過剰摂取による経済的損失は年間4兆1483億円(2008年)に達するとのこと。その内訳は、肝臓病、脳卒中、癌、および外傷の治療費に1兆226億円。 病気や死亡による労働損失と、生産性の低下などの雇用損失の合計は3兆947億円。 自動車事故や犯罪などの社会保障に約283億円。しかし実際は、未推計の間接的影響を考慮すればこの金額よりもさらに高くなる。

出典文献
Moderate alcohol consumption as risk factor for adverse brain outcomes and cognitive decline: longitudinal cohort study.
Anya Topiwala, Charlotte L Allan, Vyara Valkanova, Enikő Zsoldos, et. al.,
BMJ (Clinical research ed.). 2017 Jun 06;357;j2353. doi: 10.1136/bmj.j2353.

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