赤肉による死亡リスク増加はヘム鉄・硝酸/亜硝酸塩が関与する [栄養の話題]

赤肉の摂取による健康上のリスク増加は、ヘム鉄・硝酸/亜硝酸塩が関与している。一方、家禽や魚などの白肉はリスクを低減する。

アメリカの6つの州と2大都市圏における、人口ベースのコホート研究(“dietary data of the NIH-AARP Diet and Health Study食餌のデータと健康調査” )
(しつこいようだが、「diet;ダイエット」とは食餌のことで、痩せるための行為ではない。)

参加者はAARPメンバーの536, 969名(ベースラインで50-71歳)。

赤肉 (牛肉、子羊、豚肉) および白肉 (家禽・魚)、ヘム鉄、硝酸塩/亜硝酸塩の全ての摂取量をアンケートに基づいて処理し、カロリー調整摂取量の最低5番目を使用してcox 比例ハザード回帰モデルで推計。主要評価は、フォローアップ期間の全原因死亡率の測定。

赤肉の最高摂取量対最低5番目とのハザード比1.26(95% confidence interval 1.23 to 1.29)。死亡率の増加は、アルツハイマー病による死亡を除く、9種類の原因による死亡率で観察されたが、慢性肝疾患は特に高かった (hazard ratio 2.30, 1.78 to 2.99)。

白肉の摂取量の最も高いカテゴリーの人々は最低レベルと比較して、全原因死亡率リスクが25% 減少し、慢性肝疾患ではハザード比0.32(hazard ratio 0.32, 0.24 to 0.42)で、68%減少した。この傾向は未処理の白肉で特に強かった。

全体的な死亡率リスクは、ヘム鉄の高摂取量で増加し (最高対最低第五のハザード比 1.15;1.13 to 1.17)、原因では、癌およびその他の未知の原因10%、腎臓病34%。

加工肉の硝酸摂取量に関連するリスク増加は、糖尿病のハザード比1.39(hazard ratio 1.39, 1.24 to 1.55)、呼吸器疾患 1.38(1.29 to 1.48)、腎臓病 1.35(1.16 to 1.58)。

加工赤肉によるヘム鉄と硝酸/亜硝酸塩の摂取量は、ほぼ全ての原因による(アルツハイマー病による死亡を除く)死亡率と独立した関連付けが示唆された。

従来の研究でも、加工肉は、特に冠状動脈性心臓病、脳卒中、および糖尿病のリスクを高めることが示されている。これは、ナトリウム、硝酸塩、および処理された肉の亜硝酸塩の高い含有量に起因している。

ヘム鉄と硝酸/亜硝酸はプロオキシダントであり、酸化ストレスバイオマーカーと脂質過酸化を誘発するため、臓器の酸化的損傷や炎症を促進し、糖尿病、心血管疾患、および癌などに関与する。

また、硝酸塩/亜硝酸塩の代謝はn-ニトロソ化合物の形成に密接に関連している。n-ニトロソ化合物は、発癌、冠状動脈性心臓病やインスリン抵抗性のリスクを高めることが示されている, n-nitrosohemaoglobin と n-nitrosomyoglobin は、ヘモグロビンとミオグロビンと亜硝酸塩の反応の結果として形成される、また、一酸化窒素は、これらのヘムタンパク質と直接反応して n-ニトロソ化合物を形成する。

因みに、野菜には亜硝酸および硝酸塩が多く含まれており、口腔内のバクテリアや胃酸と還元酵素が反応して亜硝酸になり、肉や魚の第2級アミン(ジメチルアミン)と反応して強力な発癌物質であるニトロソアミン類に変化する。このジメチルアミンは加熱によって含有量が増加し、焼きサンマでは17倍にも増加する。ビタミンCはこの反応を抑制するため新鮮な野菜では安全であるが、古ずけの漬け物と焼き魚などを組み合わせて食べると強力な発癌物質が作られることになる。昔、東北地方で胃癌が多かったのは、漬け物の塩分が原因ではなく、ニトロソアミンであると言われている。 

補足
栄養学や疫学において、赤肉(red meat)とは、牛、豚、羊、馬、やぎ、熊、うさぎなどの哺乳動物全般の肉を意味し、鶏肉は白肉と呼ばれる。一般的に呼ばれている、脂肪が少ない「赤身肉」のことではない。因みに、米国農務省による分類では、ミオグロビンのレベルが 65% 以上含まれるものを赤身肉としている。

出典文献
Mortality from different causes associated with meat, heme iron, nitrates, and nitrites in the NIH-AARP Diet and Health Study: population based cohort study
Arash Etemadi, Rashmi Sinha, Mary H Ward, et al.,
BMJ 2017; 357 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.j1957 (Published 09 May 2017)
Cite this as: BMJ 2017;357:j1957

コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。